もしも病気になったら… 患者に気持ちを理解する医者を探すには

病気のとき自分の望みをかなえてくれる医師を見つけるために

どのような生き方をしたいのか、病気になったらどのような医療を受けたいのか、健康なときから考えておく

健康なときこそ、どのような医療を受けたいのか考えておきたい

 保険診療であれば、医療機関はどの患者も平等に受け入れなければいけないことになっています。また、どの病院に行っても、どの医師に診てもらっても、質を問わず同じ種類の医療行為は同じ値段で提供されます。最近では、「標準治療」といって科学的根拠の観点から、患者にとって現在利用できる最良の治療を行うことが推奨されています。

 しかし、実際の医療現場では医師と患者の間にはズレが出てくることが少なくありません。つまり、患者がどのような医療を受けたいと考えているのか、医師がどのような医療を提供したいと思っているのかで、ズレが生じるのです。たとえば、心と体の両方、病気の生活への影響など全体を診てもらいたいと希望している患者が、スペシャリストで得意な分野の医療を提供したいと考えている医師にかかれば、当然ズレが生じます。

 こういったことは、国民の2人に1人がかかるという、がんの治療の場面で多くみられます。治療が長期間にわたり、大きな決断が必要な場面があるときに医師とのズレをそのままにしておくのは、お互いにとってよい関係とはいえません。

 では、病気のときに自分の望みをかなえてくれる医師を見つけるためにはどうしたらいいのでしょうか。診察のときに自分の人生観を医師に理解してもらうことでしょうか? 手紙やメールで医師に自分のことをわかってもらうことでしょうか? そうではありません。
 それには二つのことが必要です。一つは、ふだんから自分がどのような生き方をしたいのか、もし病気になったらどのような医療を受けたいのか、それを考えておくことです。病気になってからでは冷静な判断はできません。健康なときにこそ、考えておかなければいけないことです。

自分で決めた生き方に協力してくれる医師かを見極める

 もう一つは、医師が、自分の提示した生き方に協力してくれる人なのかを見抜くことです。特に完治が望めない病気で、その経過に大きな決断が必要な段階になると、この視点は大切です。次にあげるのは、私が相談を受けた患者さんの例です。

 その方はがんが全身に転移している状態でしたが、最期まで治療をしたいと考えていました。しかし、主治医は「死」を前提に「最期まで診るから」とか「ちゃんと看取るから」というような話をするようになり、患者さんの「どうしても治療したい」という気持ちとのズレがありました。緩和ケアの対象となるような状態であることは、当人もわかっていたのですが、それでも治療を望み「できる限りの治療をやってくれるところはないか」と考えていました。

 この患者さんの場合、何か治療を続けることが生きる力を支えていたのです。もちろん、患者さんの体のことを考えれば、無理に治療しないほうがよいケースがあります。医師としては、患者さんの全身状態を診た上で、客観的な判断をするべきでしょう。しかし、それでは満足しない患者さんもいます。このケースでは、患者さんと主治医の「生」に対する価値観が合わなかったのです。

 患者が自分で決めた生き方を伝えたとき、医師がそれに協力してくれるかどうか、そこにズレを感じたら、それは相性が合わないということになります。患者の覚悟に、覚悟をもって応える医師かどうか、患者が自分で決めた生き方に協力してくれる医師かどうか、目の前の医師の出方で見極めるのです。

病気になったことを受け止め、どのように生きたいのか答えを出すのは自分

 しかし、注意しなければいけないことは、それが本当のズレなのかどうかということです。なぜなら、患者やその家族は病気のときは冷静に判断できないことが多いからです。病気になったことやその病気の経過がよくないことは、決して医師のせいではありません。自分で受け止めていかなければならないことです。自分がどのように生きたいのか、何を大切にしていくのか、それは自分自身が答えを出さないといけないことなのです。

 この医師とは相性が合わないと思ったとき、自分で病気を受け止められない状態、あるいは自分で答えを出せない状態のまま医師に不満をぶつけていないか、相性が悪いと決めつけていないか、冷静になって確認する必要があるかもしれません。見極めのポイントは、自分で出した答えに、協力してくれる姿勢がその医師にあるかどうかなのです。

 多くの医師は患者の希望に寄り添った医療をしたいと考えています。しかしその中でも、患者の希望に寄り添う医療を提供しようと実行する人、実行してもそれが患者とズレている人、実行しない人に分かれてきます。最後はその医師の医療(治療)に対する考え方によって決まるからです。そこはもはや医師の美学の世界。目の前の医師が自分の決めた生き方に協力をしてくれそうにもなかったら、そのときは別の医師を探してみましょう。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
嵯峨崎 泰子先生


日本医療コーディネーター協会理事長
看護専門学校、日本女子大学卒業。各科臨床看護師を経て医療専門商社勤務。その間、米国の医療センターで研修を受ける。1995年自身のがん治療をきっかけに、医療コーディネーターとして活動を始める。2003年に中間法人日本医療コーディネーター協会を設立。現在、副理事を務めるコーディネーションクリニックを中心に活動を展開している。主な著書に『生命と医療にかける橋』(生活ジャーナル)、『あなたのがん治療本当に大丈夫?(共著)』(三省堂)などがある。

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