病院の診察はなぜ待ち時間が長いのか? 緊急のときの対処の仕方

「忘れられているかも」と不安なときは自分から順番を尋ねて

喘息や不整脈など、すぐに診てもらわなければいけない状態もあることを、患者も知っておく必要がある。

なぜ病・医院の待ち時間は長いのか?

 病・医院から足が遠のく理由の一つは待ち時間です。なぜ1時間も2時間も待つのでしょう。法律では外来患者40名に対し医師一人を配置するように考えられています。医師の労働時間を1日8時間労働とすると、患者さん一人に割り当てられる時間は12分。その間に、医師は診察をして、カルテを書き、薬を処方し、スタッフへ指示を出さなければなりません。

 40人でさえ、患者さんに会って話を聴ける時間は数分。実際には診察は数分ではすみません。そのうえ、患者さんは40人より多いことが普通で、診察以外にも患者・家族からの電話相談、薬局やほかの医師からの照会に対応することもたびたび。もちろん、具合の悪い患者さんがいると処置や検査で時間がかかります。医師はこれらすべてに対応しながら患者さんの診察をしています。その結果、待ち時間はどんどん長くなっていくのです。

待ち時間のイライラを最小にするためにできることは?

 なかなか減りそうにない待ち時間。私の勤務するクリニックでも、診察室のドアを開けるたびに、患者さんは期待感とあきらめの混ざった視線を看護師に注ぎます。そして自分の順番でないとあきらめて視線をずらしていきます。だんだんと待ちきれなくなる方は視線をずらさなくなるので、私はそういう方には声をかけるようにしています。「お待たせしているのを承知しています」というメッセージを伝えるために。

 どこのクリニックでも多くの患者さんは我慢して待ってくれますが、待ち時間のイライラを最小にするために患者さんにできることは以下の2点です。
 一つ目は待ち時間に対する自分の許容度を知ること。待ち時間に対する耐性は患者さんによって異なります。待つことがどうしても苦手な方は、予約制のクリニックを選択したり、順番がきたら電話で呼び出してもらえるようにお願いしてみることです。ときに「自分だけは早く診てほしい」と、無理な要求をしてくる患者さんがいます。仕事を抜けてきた、次の予定があるという事情は誰も同じ。「言った者勝ち」ではないのです。

 二つ目は、そうはいっても「忘れられているのかもしれない」と不安になるときは、看護師や受付に自分の順番を尋ねてみていいのです。イライラする前に、自分からイライラを鎮めることができるように行動してもらうことが医療者にはありがたいのです。医療者は待たせていることを知っていますが、患者さんがイライラする前に、一人ひとりに順番を伝えて歩くことは無理だからです。

待たせてはいけない、待ってはいけない状態とは?

 また、これはクリニック側に求められる対応ですが、症状によっては待たせてはいけない患者さんがいます。「トリアージ」といって緊急度、重症度を見分けて対応することがクリニックにおいても必要です。以前こんなことがありました。内科の初診の患者さんで「問診票」には風邪の症状が書き込んでありました。実際に患者さんの状態は確認しておらず、順番が来て呼び入れたときには、患者さんは汗をかき、呼吸がゼイゼイして非常につらそうでした。その方はぜんそくだったのです。

 本来は、ぜんそくの発作を起こしている方は、順番に関係なくなるべく早く処置をして楽にしてあげたほうがいいのです。医療者側は患者さんの症状に合わせて、医療的な観点で「待てるのか」「今すぐ診たほういいのか」を判断して対応することが大切だと改めて感じました。そして待っているほかの患者さんに、順番を超えて対処しなければいけない状態があるということを知っていただくこと、そのために説明することも大切だと思いました。

 もう一つ、患者さんが待ってはいけない状態として覚えていただきたいものは、不整脈(ふせいみゃく)です。これは心臓がドキドキして動悸(どうき)感があるような状態です。不整脈かどうかは心電図で確認しますが、心電図はそのとき心臓に起こっていることを記録する器械。つまり動悸があるときに心電図をとらなくてはいけません。動悸がおさまってからでは判別ができないのです。心臓がドキドキしているような場合は順番を待たずに、「今すぐ心電図をとってください」と看護師に伝えることが必要です。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
嵯峨崎 泰子先生


日本医療コーディネーター協会理事長
看護専門学校、日本女子大学卒業。各科臨床看護師を経て医療専門商社勤務。その間、米国の医療センターで研修を受ける。1995年自身のがん治療をきっかけに、医療コーディネーターとして活動を始める。2003年に中間法人日本医療コーディネーター協会を設立。現在、副理事を務めるコーディネーションクリニックを中心に活動を展開している。主な著書に『生命と医療にかける橋』(生活ジャーナル)、『あなたのがん治療本当に大丈夫?(共著)』(三省堂)などがある。

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