妊娠中、夫のサポートが必要なとき-その2 旅行計画は慎重に

夫をイクメンにするための7カ条 2

妊娠中のリスクをあらかじめ知って、妊婦のつらさをサポートしよう!

流産の確率が少なくなる時期まで、妊娠は二人の秘密に!

 前回は、妊娠がわかったときに夫に知っておいてもらいたいことを7カ条にまとめて紹介しました。(「二人のための「イクメン」大作戦 1」)。今回は、その中の1~4カ条について、少し詳しく説明します。
 そのときにならないと、なかなか実感できない部分もあると思いますが、妊婦さんと一緒に外来に来たパートナーに話すつもりで書いていきます。お二人で読んでみてください。

1.妊娠したことを周りに言うのはちょっと待って
 妊娠がわかると、うれしいものですよね。うれしくて周囲の人に妊娠のことをつい言いたくなります。しかし、ぐっと我慢して、もう少し待ってからにしましょう。
 妊娠しても、無事に出産となる確率は、7~8割程度といわれています。意外と低いと思いませんか? 5人に1人くらいは、残念ながら流産になります。
 外来に来た妊婦の方が流産になったとき、ただでさえ妊婦本人が悲しい思いをしているのに、姑や実母などから「あなたが無理をしたせいで流産した」と責められたと涙する場面が何回もありました。また、風邪薬を飲んだから、自転車に乗ったから、などなど、根拠のない「助言」に何年も苦しんでいた人もいます。

 流産の原因は、受精卵の染色体異常による自然淘汰が主とされており、有効な治療はほとんどありません。誰の責任でもありません。また、早目に病院を受診したとしても、できることはほとんどないのです。
 妊婦さんに余計な負担をかけないためにも、しばらくの間、妊娠は二人だけの秘密にしておきましょう。周囲の人に言うのは、12週を過ぎて流産する確率がほとんどなくなる時期まで待ちましょう。
 妊娠して最初の受診では、このような流産も含めたさまざまな可能性について説明されることがありますから、できるだけパートナーも一緒に病院へ行って、医師の話を聞くといいですね。

妊娠中のリスクを知って、対応できる余裕を!

2.妊娠にはトラブルがつきもの。仕事や旅行の計画は余裕をもって
 妊娠中にはさまざまなトラブルが起こります。とくに初期の12週くらいまでと、後半の25週以降には、急な予定の変更に対応できるようにしましょう。また、旅行を計画するなら、状態の安定している13週頃から24週頃までにしましょう。

(1)12週頃まで
 一般に5人に1人程度の人が流産になります。前述のように、病院ができることは、ほとんどないので、自由に旅行をしてもよいと思うかもしれません。しかし、相談する病院もないところで流産が始まるととても不安になりますよね。いくら優秀な医師でも、旅先からの電話で状態を判断することはできません。12週頃までは、病院に2時間以内で行けるところで楽しみましょう。

(2)25週以降
 25週以降は、赤ちゃんも大きくなり、出血や早発陣痛などの出産に関連したイベントが起こりやすくなります。また、何か起こった時に適切な医療が受けられれば、赤ちゃんを無事に育てられる時期でもあります。後悔しないためにも、病院から1時間以上の距離まで離れるのは、なるべく避けましょう。
 また、この時期の海外旅行はおすすめできません。以前に、ニューヨークの妹さんのところに遊びに行っていて32週で早産になった人がいました。無事に赤ちゃんはNICU(集中治療室)で育ったそうですが、その医療費が2,000万円ほどかかったと言っていました。赤ちゃんの命を助けるためには、もちろん全額負担しなくてはいけません。なお海外旅行保険ではカバーされませんので、念のため。

つわりのつらさや気持ちの浮き沈みをわかって、受けとめて!

3.つわりのつらさをわかってあげましょう
 つわりは病気ではないといわれますが、ひどい場合は水も飲めないほどに吐き続ける人もいます。いつまでも続く二日酔いと思えば、そのつらさが少しは理解できますよね。精神的にも不安定なこの時期には、夫の優しいサポートが必要です。妻の希望があったら、すぐにかなえてあげましょう。わがままを言っているのではないのです。また、話を聞いてもらって、心が落ち着くだけでも、ずいぶん違います。ここで、「つわりは病気じゃないんだから」なんて言ったりすると、一生責め続けられるかもしれませんよ。

 また、仕事を持つ妊婦さんの場合、勤務時間の短縮、欠勤、時差通勤などが必要と思った場合には、「母性健康管理指導事項連絡カード」を勤務先に提出すると、配慮してもらえます。産院で相談してみてください。16週くらいまでには、つわりはおさまります。いろいろな工夫で乗り切りましょう。ひどいときには、病院で相談してください。点滴や吐き気止めで少しは楽になります。

「母性健康管理指導事項連絡カード」

4.気持ちの浮き沈みを、そばにいて受け止めてあげましょう
 妊娠による急激な体の変化は、心にも大きな変化をもたらします。気持ちが不安定な妻に対しては、夫は聞き役に徹することが大事です。夫の意見を求めているのではありません。共感して、一緒に考えようとする態度が大事です。一日一回の優しい言葉、「ありがとう」「大丈夫だよ」「お疲れさま」「助かったよ」を習慣にしましょう。そばにいてあげることが、とても大事です。

 初めてのことで、戸惑っている妻を、優しくサポートできるのは、一番そばにいる夫です。出産前から、奥さんのサポートをして、育児に備えましょう。次回は、残りの3カ条について解説します。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
太田 寛先生


産婦人科専門医、北里大学医学部 衛生学公衆衛生学 助教
1989年京都大学工学部電気工学科卒業後、日本航空株式会社羽田整備工場に勤務。2000年東京医科歯科大学卒業。茅ヶ崎徳洲会総合病院産婦人科、日本赤十字社医療センター産婦人科勤務を経て、現在は北里大学医学部に勤務。平成21年度厚労科研費補助金「新型インフルエンザ対策(A/H1N1)妊娠中や授乳中の人へ」パンフレット作成委員。日本医師会認定産業医、日本産科婦人科学会専門医。

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