急性アルコール中毒を予防する-周囲が気をつける9つのポイント

急性アルコール中毒にならない、させないために

酔ってきたと感じたらそれ以上飲まない、人に無理強いしない。呼びかけても反応がないときは救急車を!

宴会シーズンは急性アルコール中毒に気をつけて

 早いもので、今年も残すところあとわずか。忘年会に新年会と、宴会シーズンがやってきます。程よく飲む分には百薬の長となりえる酒が、実は、かなりのトラブルメーカーであることはご承知のとおりです。毎年この時期、急性アルコール中毒での救急搬送が多くなっています。
 このシリーズでは主に病院のかかり方や医師とのつき合い方について解説していますが、今回はお酒の季節ということで趣を変え、お酒で病院に担ぎ込まれないために注意していただきたいことをお伝えします。

 体重約70kgの成人男性がビール500mlを飲んだ場合、アルコールは約2~2.9時間(平均2.5時間)体内にとどまる計算になりますが、アルコールの代謝能力には個人差があります。女性は男性に比べて肝臓が小さく、また体脂肪が多いので、脂肪に溶けにくいアルコールの血中濃度が高くなりがちです。アルコールには、人それぞれの適量があるということです。

 一般的に酔いの状態は、アルコール血中濃度を基準に爽快期、ほろ酔い期、酩酊(めいてい)初期、酩酊期、泥酔期、昏睡期に分けられます。あくまで個人差がありますが、酒量の目安は、ビールでは次のとおりとされています。
 爽快期:ビール中びん1本
 ほろ酔い期:ビール中びん1~2本
 酩酊初期:ビール中びん3本
 酩酊期:ビール中びん4~6本
 泥酔期:ビール中びん7~10本
 昏睡期:ビール中びん10本以上

 ほろ酔い程度までは脳の外側、大脳皮質の活動が低下するにとどまりますが、酩酊期では小脳まで麻痺(まひ)が広がり、同じことを何度も言ったり千鳥足になったりします。泥酔状態では記憶の中枢海馬まで麻痺するので、記憶を失う「ブラックアウト」が起きてきます。昏睡状態ではいよいよ麻痺が脳全体に及び、呼吸中枢も麻痺して最終的には死に至ります。
 例えば、イッキ飲みのように短時間に大量の酒を飲むと、血中のアルコール濃度が急激に上昇し、一足飛びに「泥酔」「昏睡」の状態に。これが急性アルコール中毒です。「昏睡」に陥ると、その約半数が1~2時間で死に至るという恐ろしい病気です。

救急搬送される人は12月に圧倒的に多い。酔いつぶれた人を一人にしない!

 東京消防庁のデータによると、平成21年度に急性アルコール中毒で救急搬送された人は9,435人でした。搬送数は忘年会のある12月が圧倒的に多く、次いで歓送迎会のある3月、夏休みの8月などが多くなっています。年齢層は圧倒的に20歳代に多く、次に30歳代となっています。男女別では、男性が女性の約2倍です。
 若い人に急性アルコール中毒が多いのは、アルコールを分解する仕組みが未熟であること、飲み慣れていない人は周囲の雰囲気に左右されて許容範囲を超える飲酒(イッキ飲み,飲み過ぎなど)になってしまうことなどが原因です。

 酔ってきたなと自他ともに感じるのは、ろれつが回らない、足元がおぼつかない、感情失禁(笑い上戸や泣き上戸)、眠気などです。これらの症状は、急性アルコール中毒の一歩手前「酩酊期」のものです。個人差も大きく、そのときの環境にも左右されますが、このあたりが運命の分かれ道です。
 さらに血中アルコール濃度が上昇すると、いよいよ急性アルコール中毒となり、意識混濁、強度の運動失調、昏睡、血圧低下、体温低下、呼吸不全をきたします。
 酔ってきたと感じたら、それ以上飲まないことです。また、一緒に飲んでいた人の様子がおかしいと気づいたら、次のポイントに注意しながら慎重に介護しましょう。

●周囲が気をつけるポイント
・その人を一人にせず、必ず誰かが付き添う。
・吐いてものどに詰まらせないように、横向きに寝かせる。
・体温が下がらないよう、毛布や上着をかける。
・ベルトやネクタイ、下着など体を締めつけているものは緩める。
・無理に吐かせない。
・吐いたものをのどに詰まらせないよう、タオルなどでよく拭き取る。
・可能であれば水やお茶、スポーツドリンクを補給する。
・息をしているか、脈があるかなど、全身状態を観察する。
・呼びかけても反応がない場合(昏睡状態、意識混濁)は、救急車を手配する。

 楽しく盛り上がるのは大いに結構ですが、他人へのアルコールの無理強いは、くれぐれもなさらないことです。イッキ飲みを強要し急性アルコール中毒を起こさせた場合、強要した人は刑法上の罪を問われる場合もあります。

お酒を飲んだら入浴やスポーツはダメ!

 泥酔するほどではなくても、お酒を飲んだら気をつけたいことがあります。
 まずは、入浴とスポーツ。お酒を飲んだら汗をかいて、早く体からアルコールを出したほうがよいと考える人もいらっしゃるかも知れません。飲んだ帰りはスポーツやお風呂、サウナで汗をかいて……という行動は、とんでもない! これはNGです。

 アルコールのほとんどは、肝臓で分解されます。残りの10%が汗や尿とともに排出されますが、この割合はたくさん汗をかいたとしても変わりません。かえって、血液を筋肉や皮膚へ分散させてしまい、肝臓への血流量を減少させ、アルコールの分解を遅らせます。そのうえ、心拍数や脈拍も上がり、心臓に大きな負担がかかります。お酒を飲んだ後は、安静に横になることが一番です。

 次は、薬です。薬とお酒は絶対に一緒に飲んではいけません。アルコールと薬が同時に体内に入ると、アルコールの分解が優先され、薬の分解が遅れてしまいます。その結果、薬が長時間体内に残り、薬の作用が通常より強くなる恐れがあるからです。

 以上のようなことに気をつけて、どうぞ、病院の世話にならない楽しい年末年始をお過ごしください。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
川上 憂子先生


医療コーディネーター、看護師
専修大学法学部法律学科卒業。法律事務の仕事に従事していたが、思い立って看護師を志願。国立東京病院付属看護学校卒業。国立病院で臨床経験を重ねたのち、看護教員として教壇に立ち看護師育成にも携わった。現在、国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科在学中。乳がんと女性をテーマに、乳房の異常に気づいた女性が医療機関を受診するまでの経過期間に影響する因子などを研究中。看護師、介護支援専門員、心理相談員、医療コーディネーター、「学校でのがん教育を考える会~Cancer Education @ School」代表。

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