高額な医療費を支払ったとき-高額療養費の計算の仕方など

一定の額を超える場合に、超えた分を給付する高額療養費制度

公的医療保険では、所得などにより自己負担額の上限が決まっている。高額療養費制度でお金が戻ってくるかも

高額な医療費負担を軽減する制度がある

 「高額の医療費はあとで戻ってくる」という話を、お聞きになったことがあると思います。公的な医療保険には、病気やケガで入院したり治療が長引くなどして医療費が高額になったときに、負担を軽減する「高額療養費制度」があります。
 「高額療養費制度」とは、医療機関や薬局の窓口で支払った1カ月の医療費が、一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合に、申請により、その超えた分が「高額療養費」としてあとから払い戻される制度です。

 計算式は次のようになります。

【(窓口で支払った医療費)-(自己負担限度額)=支給される高額療養費】

 ただし計算に含まれるのは、保険診療の対象となる医療費に限られ、入院したときの食事代や差額ベッド代、保険外診療の費用は対象外になります。
 それでは「自己負担限度額」と計算要件について、具体的にみていきましょう。

<自己負担限度額>
 自己負担限度額は、年齢や所得によって異なります。

<高額療養費の計算要件>
(1)歴月ごとに計算します
 歴月とは、月の初日から末日までの1カ月のことです。たとえば、1月15日に入院し、月をまたいで1カ月間入院した入院費のトータルが、自己負担限度額を超えたとします。高額療養費の計算は、1月15日から末日までの分、2月1日から退院までの分と分割され、それぞれの額に対して自己負担限度額を超えたかどうかで該当の有無が決められます。

(2)同じ医療機関ごとに計算します
 同月内に複数の病院または診療所を利用した場合には、それぞれ別に計算します。ただし、それぞれの病院・診療所での自己負担額が21,000円以上であれば、合算できます。
 総合病院の場合、以前はそれぞれの診療科ごとに別に計算していましたが、平成22年4月から同一の病院内であれば合算できることになりました。ただし歯科は別扱いとなり、他の科と合算することはできません。
 最近増えている院外処方での薬代は、どうなるのでしょう。処方せんによる調剤で薬を出してもらい薬局で支払った額は、処方せんを交付した病院・診療所の医療費に合算することができます。

【例1】同一月に、A病院外来受診料3万円、B病院外来受診料1万円、C病院外来受診料7万円支払った場合⇒A病院とC病院の受診料は合算できますが、B病院の受診料は21,000円に満たないため、合算できません。
【例2】同一月に、A病院外来受診料3万円、B病院外来受診料3万円、C病院外来受診料5万円支払った場合⇒すべて合算できます。
【例3】同一月に、A総合病院で、外来受診料として、内科1万円、整形外科3万円、耳鼻科5千円、泌尿器科6万円支払った場合⇒すべて合算できます。

(3)同じ医療機関でも、入院と外来は別々に計算します
 同一の病院・診療所でも、入院と通院は別に計算します。ただし、総合病院に入院中に、他の診療科で治療を受けた場合には合算することができます。

(4)同一世帯ごとに計算します
 同一世帯(被保険者本人とその被扶養者)で、同一月に自己負担金を21,000円以上支払ったケースが複数あった場合、それらの額を合算することができます。

【例1】同一月に、夫がA病院で外来受診料6万円、同じくA病院で妻が外来受診料2万円を支払った場合⇒妻の受診料は21,000円に満たないため、合算できません。
【例2】同一月に、夫がA病院で外来受診料6万円、妻がB病院で外来受診料3万円を支払った場合⇒合算できます。

手続きは加入する健康保険で確認を。申請もれがないかチェックしよう!

 このほかにも、入院にかかった医療費を窓口で支払う金額を自己負担限度額まで軽減する制度や、同じ健康保険に加入する家族の間で1年に4回以上高額療養費の該当があった場合、4回目から自己負担額が下がる措置などがあります(多数該当の特例)。
 また、1年間にかかった公的医療保険と介護保険の自己負担額の合計が一定額を超える場合に、その超えた金額を支給する高額介護合算療養費の制度もあります。

 これらは基本的には自己申請です。申請に必要なものは、病院などの領収書、印鑑、保険証などですが、加入している健康保険(保険者)によって異なるため、確認のうえで申請してください。健康保険組合や、国民健康保険の地域によっては、高額の診療を受けた月の約3カ月後に、自動的に「高額療養費支給申請書」が郵送されてくる場合もあります。加入する健康保険(国民健康保険の場合は住民票のある市区町村)が、どのような仕組みをとっているか確認しておく必要があります。
 注意事項として、高額療養費の支給申請には時効があり、診療月の翌月の1日から2年を経過すると無効となってしまいます。また、病院への支払いが済んでいない場合には申請できません。

 以上、高額療養費制度は複雑な要件などが多く、特例措置などによって自己負担限度額などが変わる可能性もあるなど、ここですべてを詳しく紹介することはできません。また、健康保険によって独自の制度をもつ場合もあります。詳しくは加入する健康保険の担当窓口に相談することをおすすめします。

【参考】厚生労働省:高額療養費制度を利用される皆さまへ
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/100714.html

 自己申請が基本の制度です。申請もれはありませんか? 2年前までさかのぼることができますから、もう一度チェックし直しましょう。思わぬ臨時収入があるかもしれません。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
川上 憂子先生


医療コーディネーター、看護師
専修大学法学部法律学科卒業。法律事務の仕事に従事していたが、思い立って看護師を志願。国立東京病院付属看護学校卒業。国立病院で臨床経験を重ねたのち、看護教員として教壇に立ち看護師育成にも携わった。現在、国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科在学中。乳がんと女性をテーマに、乳房の異常に気づいた女性が医療機関を受診するまでの経過期間に影響する因子などを研究中。看護師、介護支援専門員、心理相談員、医療コーディネーター、「学校でのがん教育を考える会~Cancer Education @ School」代表。

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