どうしていびきをかくの?いびきの8つの原因と対処法

空気が上気道を通るときの空気抵抗と振動による騒音

騒音になるほど上気道を狭める原因はさまざま。肥満や疲労、アルコールなど自分でコントロール可能なものも

いびきの発生源は自らの騒音を自覚できない

 社員旅行などで同室になった人がひどいいびきかきで、睡眠不足になってしまったというような経験をお持ちの人はいませんか。あるいは家族旅行で旅館に泊まり、大いびきの被害を受けた家族から翌朝一斉ブーイングの嵐にさらされたとか……。
 いびき発生のご当人はいい気持ちで眠っているので、人の迷惑になるような騒音を振りまいていたなどとは全く自覚していません。それだけに、面と向かって糾弾されたりすると、案外落ち込んでしまったりして……。若い女性の場合など、人に相談できずに悩んだ末、耳鼻咽喉科を訪れる人は珍しくないようです。

 そもそもいびきとは、どうして発生するのでしょう。
 鼻の入り口から声を出す声帯までの間の、空気が通過していくルートを上気道といいます。このルートの中で睡眠中に発生する異常な騒音が、いびきです。
 上気道の狭い部分を空気が通過するときに空気抵抗があります。このために発生する「抵抗音」と、空気の通過によって粘膜が震えて出る「振動音」、この2つが騒音の正体とされています。とはいっても、人間の呼吸くらいで周囲の人を眠らせないほどの騒音になるのは、なぜなのでしょうか。

狭い通り道を1回に500ミリリットルの空気が行き来する

 呼吸くらいで、と前述しましたが、成人が1回の呼吸で出し入れする空気の量は約500ミリリットルといわれます。お茶などのペットボトルの長めのやつ、あるいは缶ビールのロング缶、あれが500ミリリットルですね。あれだけの量の空気が4秒前後に1回の間隔で、さほど広くもない人間の上気道を出入りすることを想像してみてください。しかも上気道の広さは一定ではありません。狭くなったり出っ張りがあったりと結構複雑な構造です。ですから、ここを空気が通過するときには多少の音は出るのが普通なのです。それが、はた迷惑な騒音にまで増幅するのは、上気道が何らかの原因で異常に狭まり、そのために空気抵抗が大きくなるからです。

睡眠中は気道は狭くなるもの

 眠っているときは、のどの筋肉の緊張が緩んで上気道の一部が狭くなったり、振動しやすくなります。それをよりいっそう進めてしまう原因は、以下のように実にいろいろあります。

●肥満
 のどに脂肪がつき、舌も厚くなって上気道が狭まります。標準体重であっても、皮下脂肪が比較的多く、首の周りに脂肪がついているとのどが狭くなります。
●アルコール
 全身をリラックスさせる作用がありますが、就寝前に飲むと、上気道の筋肉がいっそう緩んで狭くなります。
●疲労
 上気道の筋肉の緩みを進め、舌がのどのほうに落ち込みやすくなり、上気道が狭まります。
●口呼吸
 鼻呼吸より上気道が狭くなります。鼻の病気やかぜなどで鼻が詰まりぎみだと、自分では気づかないうちに口呼吸になっていることがあります。また、疲労やストレスがたまっていると、普段より多くの酸素をとり込もうとして口呼吸になりやすいものです。
●あお向けで寝る
 上向きの姿勢では舌がのどに落ち込みやすくなります。
●老化
 のどの筋肉の緊張が緩んで、表面を覆う粘膜が振動しやすくなります。
●下あごが小さい
 いわゆる「小顔」だと、舌がのどへ落ち込みやすくなります。
●薬の常用
 精神安定薬や睡眠薬の常用は、のどの緊張を弱くします。

怖いのは睡眠時無呼吸症、命にかかわることもある

 以上のようにいびきをもたらす原因はさまざまあり、これらによるいびきは、「単純いびき症」といいます。単純いびき症とはいえ、常習的になると病的ないびきに移行しかねません。例えば、のどの奥に垂れ下がっている口蓋垂(こうがいすい=のどちんこ)。ここは、空気の通過でいちばん振動しやすい“いびき頻発地帯”です。ここがいつも振動しているうちに肥大して病的ないびきにつながる危険があります。この口蓋垂や扁桃腺などが生まれつき大きくて、気道が狭くなっている人もいます。

 病的ないびきとして心配しなければいけないのは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。上気道が異常に狭くなると、必要な酸素をとり込むために強く息を吸い込みます。すると吸い込まれる空気の流れは加速され、流れの速い部分は圧力が低くなるために気道がせり出してくるのです。それで呼吸が苦しくなりますから、さらに強く息を吸い込むうち、ついには気道は閉じてしまいます。つまり無呼吸状態です。10秒以上呼吸が止まっていることを「無呼吸」といい、これが睡眠中に頻繁に起こるのがSASです。そのためいびきの特徴は、大きないびきをかいていたと思ったら突然静かになり、その後一気に空気を吸い込むとき「ゴワッ」というような大きな音をたてるというものです。

 SASだと、血液中に酸素が足りなくなることなどから心筋梗塞や脳梗塞などを起こしやすくなり、高血圧や糖尿病などの合併症も発症することがあるなど、たかがいびきとあなどってはいられない怖さがあります。いびきのほかにも、昼間いつも眠い、朝すっきり起きられない、よく居眠りをする、夜何度か目を覚ます……、などに思い当たる人は、SASを疑って受診するほうがよいでしょう。

 いびきの予防は、まず原因を確かめ、それらの解消のために生活習慣を見直したり、原因となる病気があれば治療します。必要な場合は、レーザー手術や高周波電気凝固法、ラジオ波凝固法などで気道を広げる治療が行われることもあります。
 自分ではわからないいびき。人のヒンシュクを買っていることがわかったら、ひとまず耳鼻咽喉科などに相談されてみてはいかがでしょう。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
笠井 創(はじむ)先生


笠井耳鼻咽喉科クリニック院長
昭和52年千葉大学医学部卒業後、同耳鼻咽喉科学教室入局、同大学病院手術部麻酔科研修、千葉労災病院耳鼻咽喉科研修。昭和58年千葉大学医学部大学院卒(医学博士)、国保君津中央病院耳鼻咽喉科医長。昭和60年国立がんセンター病院頭頸部外科医員、昭和63年 国家公務員等共済組合連合会/横須賀共済病院耳鼻咽喉科医長、千葉大学医学部耳鼻咽喉科非常勤講師兼任、平成11年笠井耳鼻咽喉科クリニック・自由が丘診療室開設。

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