有料老人ホームを選ぶとき-10のポイントと過去のトラブル例

見学のポイントやトラブル、実際に入居したケースを紹介

介護が必要になったときや将来の介護に備えたいとき利用できる有料老人ホーム

要介護期に有料老人ホームでの暮らしを選択したら

 「介護が必要になった」、「将来の介護に備えたい」、そんなときに役立つのがケアの視点を持った有料老人ホーム。実際にはどんな暮らしができるのでしょうか。人員配置、設備などは一定の基準を満たしています。居住スペースは、生活の中心となる専用居室があり、それ以外に共同で利用する食堂、浴室、娯楽スペースなどがあります。毎日を快適に過ごすために、生活支援、食事、介護、健康管理など、各種サービスが提供されます。医療機関ではないため医療行為には限度がありますが、医療機関と連携し健康管理や緊急時の対応を行っています。ホームごとにさまざまな特徴がありますが、プライバシーや生活の質に配慮したタイプが増えています。

 自分や家族のニーズを確認し、条件に合いそうなホームを絞ったら、次は見学です。一定の基準は満たしていても、提供するサービスはホームによりさまざまですから、サービスの質を見ることが重要になります。特に介護サービスやケア体制に関しては、ご自身の状況に合わせて入居前によく確認しましょう。
 住環境は、安全への配慮はもちろんですが、居心地の良い生活の場としての空間が備えられているのかも大切です。また、経営者や施設長の理念やスタッフの意識によって、居心地の良さ、介護や終末期への対応も大きく変わります。生活するご本人の目線になって五感を生かしながらホームを見学し、実際に話を聞いてみましょう。

知っておきたい有料老人ホームのトラブル

 有料老人ホームでよくあるトラブルについて知っておくことで、入居前のホームのチェックポイントが理解でき、後悔しない選択ができます。

●契約内容に関するトラブル
 入居後に契約書に明記されたサービスが提供されなかったり、質が低下したり、事前の説明以上に経費を請求されたりすることがあります。利用者として疑問や不満を伝えることが大切ですが、入居前の段階で納得いくまで説明を受け、サービス内容を「重要事項説明書」で確認しておきましょう。
●要介護になったときや、入居中の病気・事故に関するトラブル
 重介護になったらホームを退去か移動しなければならない、または家族がたびたび呼び出されるようなホームもあります。介護が必要になったとき、事故・病気などのとき、誰が、どこで、どう対応してくれるのか、医療機関とのかかわりはどの程度あるのか、などを確認しておきましょう。
●退去に関するトラブル
 入居中の長期入院や、認知症の進行、入居者とのトラブルがあった場合などは退去を求められることもあります。退去の際の返還金が約束と異なっていたというトラブルもあります。退去要件、移り住みの支援の有無、返還金はいくらかなども事前に確認しましょう。
●倒産のリスク
 最近3年間で60あまりのホームが閉鎖、342カ所でホームの経営者が交替しています。運営会社が倒産すればサービスが受けられなくなり、金銭的な損失が大きいだけでなく、生活のプランにも大きく影響します。財務諸表などの情報公開を請求することで、運営会社の経営の安定性や健全度を把握することができます。

事例紹介 自宅を処分し介護付き有料老人ホームに入居した春子さんのケ-ス

相談者: 冬子さん(52歳女性、長女)
本人: 春子さん80歳、一人暮らし 要介護2

 春子さんは3年前にご主人を亡くしてから一人暮らし。ある日自宅の玄関で転倒し、大腿骨を骨折。歩行が不安定となり、物忘れの症状も頻繁にみられるようになりました。病院から退院を告げられても、一人暮らしの生活に戻るのは難しそうです。長期的に介護のある暮らしを整える必要が生じました。
 地域の特別養護老人ホームを調べると、重度の人が優先され入所は困難。遠くに住む冬子さんが自宅に引き取ったとしても、常にサポートできる状態にはなく、お母様にとっても慣れない土地への転居という環境変化が心配です。

 親子でよく話し合ったところ、親族や友人が多くいる長年住み慣れた地域を離れずに、安心できる住まいを希望されていることがわかりました。早速冬子さんは市役所で地域の有料老人ホームリストを入手。すでに要介護状態にあるため、介護専用型の介護付き有料老人ホームがいくつか候補に上がりました。それらを見学して、実際のホームの空気感やにおい、働くスタッフ、入居者の表情などを観察しました。
 そのうちのBホームは、24時間介護サービスが受けられ、食事も3食提供されます。医師や看護師は常駐していませんが、日中は看護師の健康管理を受けられます。居室は狭いものの、シンプルで圧迫感がなく、安全で清潔です。複数のホームからBホームを選択した決め手となったのは、女性施設長やスタッフの温かな人柄と経験、安心できる企業実績でした。

 体験入居を行い、“重要事項説明書”をじっくり確認した後、まずは入居金なし、月額利用料約30万円で1年間の短期契約をしました。ホームでの生活に慣れた1年後に無理なく自宅を処分し、入居一時金650万円、月額利用料20万円の長期契約を結びました。「介護施設にお世話になることは覚悟していましたよ。ここには自分より介護が必要な先輩もいて、自分のできることをしています。親切なサービスと毎日の食事がありがたいです」と春子さん。入居から6年たった現在もお元気です。冬子さんは時折ホームでコーラスボランティアを行っています。介護が必要となったときに、前向きに介護付き有料老人ホームでの暮らしを選択されたケースです。

 要介護の期間は人によってさまざまですが、平均的に1~3年程度はあるといわれています。皆さんはどう備えますか? 元気なうちに地域の介護付き有料老人ホームのリストを作成し、サービス内容や費用を明確にしておくと、在宅での介護との費用比較などのイメージもでき、将来への前向きな準備につながります。

≪有料老人ホームを探すときに参考になる情報≫
 お住まいの地域の市区町村の窓口や地域包括支援センターで相談できます。

介護サービス情報公表支援センター
WAMNET 福祉サービス第三者評価情報(全国)

≪契約関連のトラブルに関する相談窓口≫
・独立行政法人 国民生活センター
・東京都消費生活総合センター

≪おすすめのWeb情報≫
財団法人 高齢者住宅財団「高齢者の住まい ガイドブック」

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
川上 由里子先生


介護コンサルタント
ケアマネジャー、看護師、福祉住環境コーディネーター2級、産業カウンセラー。1984年より13年、大学病院、高齢者住宅(聖路加レジデンス)などで看護師として勤め、現在は三井不動産(株)ケアデザインプラザなどで、シニアライフ提案のコンサルティングや講演を行う。著書に『介護生活これで安心』(小学館)。08年5月より、ニッポン放送「ラジオケア・ノート」(奇数月第4週の月~金)にレギュラー出演中。08年春より自身も父親の遠距離介護を体験中。

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