がん患者が提言力をつけて、医療を動かす「がん政策サミット」

立場を超えて集い学び合った「がん政策サミット2011」

「がん対策基本法」施行から5年。患者関係者が情報を得、知識を得、仲間を得、医療政策に参加する基盤作り

がん対策は、国民一人ひとりのテーマ

 わが国ではいまや、国民の2人に1人はがんにかかり、3人に1人はがんで亡くなる時代を迎えています。誰ががんになってもおかしくないといっても過言ではありません。ですから、がんは、国の対策として、また国民一人ひとりのテーマとして、取り組む重要課題となっています。

 2006年6月、国では「がん対策基本法」が成立し、翌2007年4月に施行され、同年に「がん対策推進協議会」の設置および「がん対策推進基本計画」の策定が行われました。これを受けて、各都道府県では、「都道府県がん対策推進協議会」の設置、「都道府県がん対策推進計画」「都道府県がん対策の推進に関する主な取り組み(アクション・プラン)」の策定などが行われました。また、それぞれの地域で独自に「がん条例」を制定する動きも活発化しています。
 国のがん計画は2011年度までを第1期とする5カ年計画とされ、現在、2012年4月にスタートする「第2期がん対策推進基本計画」の準備が進められているところです。

 多くの場合、医療関係の協議会といえば、委員は医療関係者や学識経験者で構成されることが一般的でした。しかし、「がん対策基本法」によって「がん対策推進協議会」にはこれらのメンバーに加え、「がん患者およびその家族または遺族を代表する者」(以下、患者関係者)の参加も明示されたことが特徴です。
 医療政策の決定過程で患者関係者が発言していくことは、政策に患者(当事者)視点を盛り込むことを可能にし、患者関係者ひいては、国民のニーズを反映した政策が実現されることにつながります。このためには患者関係者が、アドボカシー(政策提言)の主体となり得るよう、提言力をつけていくことが大切です。

患者の政策決定プロセスへの参加を支援する「がん政策サミット」

 患者関係者たちが、情報を得、知識を得、仲間を得て学び合う場を提供することにより、患者の政策決定プロセスへの参加を支援してきた、特定非営利活動法人日本医療政策機構の市民医療協議会は、2011年7月16日、17日、18日の3日間、東京都千代田区で「がん政策サミット2011」を開催しました。
 がん政策サミットは、2009年から春と秋の2回開催されており、5回目を迎える今年は夏に1回の開催となりました。これまでは患者関係者を中心に参加を募り、患者主体のがん対策の実現を目指し、学び合いやディスカッションを重ねてきました。

 今年は、市民医療協議会が実施するがん対策プロジェクトである「がん政策情報センター」にとっても、第1期プロジェクト集大成の年。「がん政策サミット2011」では「四位(よんみ)一体」を合言葉に、患者関係者に加え、議員、行政担当者、医療提供者の参加を呼びかけました。
 具体的には、患者関係者73人(31都道府県)、国会議員および秘書(8人)、都道府県議会議員25人(15都道府県)、市議会議員3人(3市)、都道府県庁のがん対策担当者21人(18道府県)、がん診療連携拠点病院の医師10人(10都県)など、4つの立場(ステークホルダー)から、総勢172人の参加がありました。

 今回のサミットの狙いは、立場の異なる人たちが協働して、患者・現場・地域の声から課題を明らかにする方法や、課題解決のために互いに協力し合い、実行性のある医療政策を作り上げたり、戦略を考えるためのポイントを学んだりすることにより、地域でがん対策を動かし続けるために必要かつ具体的なノウハウを習得し、ディスカッションする場を提供することです。
 また今回のテーマに、東日本大震災の被災者支援に携った人や被災当事者を招いた「復興シンポジウム」や、国のがん対策推進協議会の患者関係委員の協力を得て、「第2期がん対策推進基本計画」の策定について検討する「特別プログラム」を取り上げることで、直面する事態に今、「四位(よんみ)一体」となって何に取り組むべきかを考え、都道府県(地域)の垣根を越えたがん医療のすがたを考える機会でもありました。

「四位一体」から「六位一体」型の医療改革モデル形成をめざして

●全国から仲間が集まり、知識・経験・事例を交換した第1日目
 1日目の前半は「大震災から学ぶこと」と題して、復興シンポジウムが開かれました。特定非営利活動法人グループ・ネクサスの武田智枝さん、東北大学加齢医学研究所臨床腫瘍学分野教授・石岡千加史さん、奈良県医療政策部部長・武末文男さん、フリージャーナリストの藍原寛子さん、構想日本・政策スタッフで河北総合病院理事長政策室室長の田口空一郎さんがそれぞれ発表したあと、この5人をパネラーとしたパネルディスカッションとなりました。パネラーは、被災地で震災を経験した当事者であったり、東北の現場に赴き、復興支援活動や取材などを続けていたりする人たちで、直接に生の声を届けてくれました。
 後半は、「全国の仲間から~がん対策活動の成果と好事例を共有~」と題して、参加者全員の自己紹介、有志によるがん対策好事例の発表、がん対策をリードしている人たちとの意見交換、がん関係者による米国研修ツアー報告など盛りだくさんのメニューが用意され、1日の締めくくりは、「初めてでもわかる!政策提言入門」と題し、日本医療政策機構・がん政策情報センター作成の『アドボカシーワークブック』の活用術を学びました。

●「がん対策基本法」をさらに学び、地域がん対策のスキルを磨く2日目
 2日目の午前中は、「もっと知りたい がん対策基本法:がん対策推進計画について」と題した特別プログラムの開催。厚生労働省健康局がん対策推進室室長鈴木健彦さん(当時)および、同省がん対策推進協議会会長で大阪大学副学長の門田守人さんの講演のあと、厚生労働省がん対策推進協議会委員(患者関係委員)を交えたパネルディスカッションが行われました。
 続いて「がん対策を動かす仕組みを学び合う~『四位一体』型の議論と意見集約の手法」という大テーマのもと、基礎編として「政策決定プロセスについて」と題した日本経済新聞社編集局社会部記者の前村聡さんの講演、実践編として「現状を把握しよう~がん患者意識調査2010年~患者さん1400人回答結果報告」の発表がありました。
 午後は、地域でがん対策を動かし続けるために、必要な仕組みを学ぶワークショップ。「患者の悩みを解決する体制」について、第1ステップ「各ステークホルダーの課題を共有し、連携を強化しよう」(グループ討議)、第2ステップ「あるべき姿と現状の課題を分析して、対策を導こう」(参加型講習)、第3ステップ「戦略・活動計画を作成し、具体的な施策にまとめよう」(グループ討議)を実践しました。

●地域活動へつなげ、新しい市民社会のかたちをめざす3日目
 3日目は、「振り返りとまとめ~地域の活動につなげよう~」が大テーマ。「地域で実際に抱えている問題の解決策について、全員で話し合おう」の時間では、患者会活動の資金繰りの知恵を出し合ったり、地域行政といかに協力体制を築いていくかなどのディスカッションが行われました。
 総括として「がん政策サミットを振り返る」というテーマで講演した、がん政策情報センター長の埴岡健一さんは、この3日間のサミットおよび2009年からの全5回のサミットを振り返りました。
 「このサミットでの出会いによって、人的ネットワークが広がり、そのネットワークを通じて好事例が各地に広がっていくという効果が生じています。患者関係者だけの活動でなく、立法府(国会議員、県会議員など)、行政府(厚生労働省や都道府県の担当者など)、医療提供者、民間、メディアなども巻き込んで“六位一体(ろくみいったい)”型の医療改革モデルが形成されつつあります。自助・公助・共助から生まれる“新しい市民社会のかたち”となって結実し、がん対策の向上ひいてはよりよい日本社会の実現につながっていくことを確信します」と述べました。
 最後に、出席者全員から一言ずつ感想が述べられ、立場の異なる者同士が互いに協力し、確実に一歩ずつ医療を動かす力となっていることを確認し、次のステップへ向かうことを誓い合い、3日間のサミットは終了。皆、満足した顔でそれぞれの地域に戻って行きました。

(取材協力:特定非営利活動法人 日本医療政策機構 市民医療協議会)
(編集・制作 (株)法研)

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