放射能から身を守る-暮らしの中で注意すること、食事の調理方法

すぐできる安全対策。外出、外遊び、食べ物を安全にとる方法

放射能から身を守る方法とは? 今できることを積み重ねて、子どもの健康を守りましょう

被ばく量はできるだけゼロに近づけるのがよい

 福島第一原子力発電所の事故によって、大量の放射性物質が大気中や海へと放出され、発電所の周辺に住む人たちが避難させられたり、福島県とその近県、および関東地方を中心に、野菜や水、牛乳、肉、魚などから規制値を超える放射性物質が検出されたことはご存じのとおりです。
 自分や家族の健康を考えると、今後どうしたらよいのか悩んでしまうという人は少なくないでしょう。まして、放射能の影響を強く受ける子どもをもつお母さんや妊娠中の女性の不安はどんなに大きいことでしょう。

 ここでは、そんなママたちの不安を少しでも和らげるために、毎日の生活の中でどんなことに気をつけたらよいのかを、放射線防護学の専門家である日本大学の野口邦和先生の著書『放射能からママと子どもを守る本』から紹介します。

 放射線が体に与える影響はさまざまですが、最も気になるのは発がんの可能性でしょう。広島・長崎の原爆やチェリノブイリ原発事故の調査データなどから、「年間100ミリシーベルト以下なら浴びても安全」とする研究者もいます。しかし放射線防護学では、どんなに放射線量が低くても発がんの可能性はゼロではなく、被ばく量はできるだけ低くすべきであると考えます。

外遊びのとき、外出から帰ったとき、暮らしの中で気をつけること

 現時点(2011年9月)では大気中への放射性物質の放出はほとんどないとみられ、今後新たな爆発などが起こらない限りは、さらに汚染レベルが深刻化することはないと考えられます。今計測されている放射線量は、事故直後の3月から4月初めに放出された放射性物質が地面に落ちたり、植物に付着したりして、そこから出ている放射線に起因するものと考えられ、それも一部の地域を除いてかなり低い数値になってきています。

 ですから現在は、マスクをしたり、暑いのに長袖を着たり窓を閉め切ったりする必要はありません。ただし、風の強い日は放射性物質が舞い上がる可能性があるので、窓を閉めて洗濯物は室内に干し、ていねいに拭き掃除をしましょう。そんな日は、外出時はマスクをして、帰ってきたら玄関の外で衣類のホコリを軽く払う、靴についた泥を落とす、家に入ったら手洗い・うがいをする(シャワーで体と髪を洗えばなおよい)などの注意が必要です。泥はねが付着しやすい雨の日も放射性物質が体につきやすいので同様にします。

 また、芝生や草むら、落ち葉だまり、側溝、水たまりなどは、放射線量が高いところがあるので、近づかないなどの注意が必要です。
 放射線量の高い地域では、学校や公園の表面を5cmほど削ったり、砂場の砂は全部入れ替えるなどの方法で放射線量を低くすることができますから、自治体などに相談するとよいでしょう。

食べ物や飲み物はどうすればいいのか

 一部の地域を除いて大気中の放射線量は低くなってきているとはいえ、土壌や海の汚染による影響はこれからといえます。半減期(量が半分になるまでの時間)の長い放射性物質が大量に放出されてしまったからです。これから土壌では特にセシウム134(半減期2.1年)とセシウム137(同30年)、海では放射性セシウムとストロンチウム90(同28.8年)に対し、今後長期間にわたって警戒していかなくてはなりません。ヨウ素131は半減期が8日と短いため、現在ではほぼ心配のない状態になっています。

 現在食べ物については暫定規制値が定められています。暫定規制値とは、原発事故などが起こって放射性物質で汚染された食べ物をまったく食べないわけにはいかないとき、どれくらいまでの量なら健康に影響がないかという上限値を食品ごとに定めたもの。本来放射性物質にこれ以下なら食べても安全という基準はなく、あくまで緊急時の「我慢基準」と思ってください。放射性セシウムの場合、飲料水・牛乳は1kgあたり200ベクレル、野菜・肉・魚・穀類などは1kgあたり500ベクレルとなっており、きちんと検査が行われている限り暫定規制値を超える食べ物が市場に出回ることはないはずですが、気になるママは少なくないでしょう。

 そこで食べ物からの内部被ばくの影響をできるだけ減らすために、いくつかの研究が参考になります。チェルノブイリの事故後に行われた予防医学栄養研究では、「できるだけ放射性物質の少ない食品を食べ、その上で、食品に含まれている放射性物質の量を調理や加工の仕方で減らしながら、吸収を少なく、排泄を多くする」という考え方に基づく簡単な方法を紹介しています。

 放射性物質を減らす調理法には、以下のようなものがあります。
(1)玄米や胚芽米より、精米された白米のほうが安心。水を何度も変えながらしっかりとぐ
(2)野菜や果物は外側の葉や皮を取り除き、水洗いをていねいに。ゆでたり煮て、ゆで汁、煮汁は捨てる。
(3)魚は煮魚や照り焼きにして煮汁や漬け汁は捨てる。放射性物質がたまりやすい骨や頭、内臓は食べない。
(4)肉も煮たりつけ焼きにして煮汁や漬け汁は捨てる。内臓や骨をだしに使うのは避ける
(5)塩漬け、酢漬け、マリネは食材を細かく切って漬け、漬け汁を捨てる


 また、摂取する栄養素に注意し、放射性物質に影響されにくい体をつくる方法として、次のようなことがわかっています。

●カリウムとカルシウムを多くとることで、放射性物質の吸収を抑えることができる
 放射性セシウムはカリウムと、ストロンチウム90はカルシウムと、化学的によく似た性質をもっており、これらの栄養素をしっかりとると放射性物質の吸収が妨げられます。
 カリウムが多く含まれる食品に、ほうれん草、じゃがいも、昆布、わかめ、ひじき、レーズン、干しあんずなど。カルシウムが多く含まれる食品には、牛乳、チーズ、ヨーグルト、昆布、いんげん豆、えんどう豆などがあります。

●リンゴに含まれる食物繊維のアップルペクチンは、体内の放射性セシウムの排泄を促し、海藻に多く含まれる食物繊維のアルギン酸は、ストロンチウムの排泄を促す

●ビタミンCなどの抗酸化ビタミン類は、放射線障害の原因となるフリーラジカルの働きを抑える
 ビタミンCが多く含まれる食品には、ピーマン、芽キャベツ、アセロラ、ゆず、レモンなどがあります。

 わたしたちはこれから長い間、半減期の長い放射性物質と向き合って生活していかざるを得ません。放射線に対して正しい知識を身につけ、原発事故の推移に注意を払いながら、今できることを積み重ね、子どもや家族の健康を守っていきましょう。

『放射能からママと子どもを守る本』(法研)より
(編集・制作 (株)法研)

【監修】
野口 邦和先生


日本大学歯学部専任講師(放射線防護学)
1952年千葉県生まれ。東京教育大学大学院理学研究科修士課程修了。専門は放射化学・放射線防護学・環境放射線学。理学博士。日本科学者会議エネルギー・原子力問題研究委員長。原子力問題情報センター常任理事。日本登山医学会評議員。主な研究テーマに「広島・長崎の被爆者の原爆被害に関する調査・研究」「食品中の放射能」「核実験場周辺の放射能」など。近著に『放射能からママと子どもを守る本』(法研)、『原発・放射能図解デ-タ(監修)』(大月書店)などがある。

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