妊娠中、夫のサポートが必要なとき-その7 ワクチン接種計画

イクメンのための予防接種の基礎知識 2

赤ちゃんのワクチンは常識! パパもママもジジもババも、ワクチン打って、病気から赤ちゃんを守ろう

同時接種を行ってできるだけ早く、多くの病気に備えたい

 前回に引き続き「イクメンのための予防接種の基礎知識」をお届けします。今回は、個別のワクチンについての知識です。前回は、(1)なぜ予防接種をしなくてはいけないのか、(2)予防接種には定期と任意がある、(3)順番を考えて受ける、などについて解説しています。まだの方はぜひこちらを先にご覧ください。

 予防接種は、お母さんからもらった免疫の効力が切れる前に、どれだけ早く多くの病気に対して備えができるかが大事です。同時接種を行って、早めにワクチン接種を済ませましょう。「来週打とうと思っていたHibにかかって、後遺症が残ってしまった」という例もありました。複数のワクチンを一緒に接種する同時接種に危険なイメージを持っている人もいますが、根拠はありません。同時接種をしないと、予定期間内に接種が終わりませんよー。
 赤ちゃんの病気は診断が難しい上に進行が早く、重症になるまでは診断ができない場合があります。予防に勝るものはありません。病気にかかってから、たくさん検査をして、大量の抗生剤などを使うより、ワクチンを打っておいたほうがいいですよね。

 また、アレルギー体質の子どもや、ワクチンを接種したところが腫れやすい子どもなど、スケジュール通りに予防接種ができない子どももいます。そのような子どもを守るためには、周囲の友達や大人がワクチンを打って、病気を持ち込まないようにして、ワクチンを打てない子どもへのバリアとなる必要があります。
 特にイクメンを目指すパパは、まず自分のワクチン接種を済ませましょう。0歳児にうつすのは保護者というパターンが結構あります。子どもの頃にかかった病気でも、体はすでに忘れています。最低でも風しん、麻しん、おたふくかぜ、水痘くらいは、妊娠中または妊娠前にパパもワクチンを打っておき、小さな赤ちゃんを守りましょう。

ワクチンのことをよく知って、接種スケジュールをつくろう

 赤ちゃんが生まれたら、すぐにも受けたほうがよいワクチンもあります。受けられる順に種類と内容を書いていきます。

<生後すぐから>
■B型肝炎ワクチン(任意):不活化ワクチン
 B型肝炎は主に血液を介して感染します。唾液や汗にも含まれており、擦り傷や肌荒れ、アトピーなどにより皮膚のバリアが弱くなったところから感染します。日本の保育園での集団感染の事例もありますから、集団生活を始める前に接種しておいたほうがいいと思います。擦り傷も多いでしょうからね(^_^;)。
 日本では、生後2カ月のときにHibワクチン、肺炎球菌ワクチンと同時接種する人が多いです。

<生後2カ月から>
■Hib(インフルエンザ菌)ワクチン(任意):不活化ワクチン
 インフルエンザ菌は、中耳炎や肺炎を起こすだけでなく、髄膜炎(脳の病気)の原因になります。米国ではワクチンにより、髄膜炎を起こす人は100分の1に減りました。日本では毎年600人が重症となり、その死亡率は10%、30%が後遺症を残します。薬の効かない耐性菌が増えていて、予防がさらに大事になっています。

■肺炎球菌ワクチン(任意):不活化ワクチン
 肺炎球菌は、Hibに次いで多い髄膜炎の原因菌です。このワクチンで、肺炎球菌による髄膜炎の80%を防いでくれます。

■ポリオ(小児麻痺)
 (定期):生ワクチン、経口接種
 (任意):不活化ワクチン、筋肉注射

 生ポリオワクチンは春と秋の2回、市区町村による定期接種が行われます。この生ワクチンによって、100万人に1人程度が逆にポリオを発症します。ポリオが流行していた時代には、副作用としての100万人に1人のポリオ発症は無視できるものでした。しかし、ポリオが自然には存在しなくなった国では、この副作用は無視できないものとなったために、ポリオになる危険のない不活化ポリオワクチンへの切り替えが行われています。
 この30年ほどの間は、日本には自然にポリオにかかる子どもは1人もいません。にもかかわらず、日本は未だに生ワクチンを採用している、先進国では唯一の国です。日本では不活化ポリオワクチンはまだ認可されていないため、一部の医療機関により個人輸入が行われ、自費で接種されています。

■ジフテリア、百日咳、破傷風の三種混合(DPT)(定期):不活化ワクチン
 百日咳は、免疫の弱い0歳児では重症化することがあり、昨年はカリフォルニア州だけで10名死亡しています。大人でも、ワクチンによる免疫が減っている人が増えていて、日本でも流行しています。保護者や兄姉から赤ちゃんに感染することも多いので、咳の出る人は0歳児のそばに行かないように注意しましょう。また、小児科でうつる人もいますから、不用意に病院に行かないようにしましょう。ジフテリアや破傷風については、ワクチンの効果もあり激減していますが、かかると怖い病気です。

■日本脳炎ワクチン(定期):不活化ワクチン
 昔は致死率が20%もある怖い病気でしたが、ワクチンの効果や衛生状態の改善により激減しました。しかし、蚊を通してうつるため、温暖化の影響などで分布地域が広がっています。ワクチンは副作用の問題で一時中止されていましたが、安全なワクチンが開発されて再開されました。

<生後6カ月から>
■インフルエンザワクチン(任意):不活化ワクチン
 効果が出るまでに2週間程度かかるため、流行期の前に接種します。6カ月程度は効果が持続します。また、妊婦はインフルエンザにかかると重症化しやすいため、特に接種が勧められています。妊娠中のワクチン接種は、胎児への免疫の効果もあると言われています。

<生後12カ月から>
■麻しん・風しん混合ワクチン(MR)(定期):生ワクチン
 麻しん(はしか)は、昔は多くの子どもが命を奪われるため「命定め」といわれた感染症です。今でも、はしかにかかると10人に1人の割合で入院し、1000人に1人程度の割合で重症化・死亡のリスクがあるので、ワクチンの中でも最も重要です。入院しても、特効薬はなく、自分の力で治るのを待つだけですから、予防がとても大事です。現在でも発展途上国では多くの子どもが亡くなっています。1歳の誕生日のプレゼントにしましょう。

■水痘(みずぼうそう)ワクチン(任意):生ワクチン
 感染力が非常に強く、治っても水疱の痕(あと)が残ります。特にアトピーの子どもは皮膚のダメージが大きく、ひどい目にあうことが多いため、より危険です。現在、保育園などで流行中です。

■おたふくかぜワクチン(任意): 生ワクチン
 合併症として脳にウイルスが回ってしまう髄膜炎が多いです。また、後遺症として2000人に1人程度が難聴になります。難聴に対しての治療法は特になく、早めに気づいてあげて、音が聞こえにくくても生活できるように訓練を受けたりします。おたふくかぜも現在流行中です。

 これらのワクチンや病気についてもっと詳しく知るには、以下のページが役立ちます。
「KNOW VPD! VPDを知って、子どもを守ろう。」(VPD:ワクチンで予防できる病気)
このページには予防接種の推奨スケジュールもありますし、スケジュールの立て方も解説しています(http://www.know-vpd.jp/children/children_schedule.htm)。

 日本小児科学会では、「日本小児科学会が推奨する予防接種のスケジュール」を公表しています。

 イクメンとして、子どもの未来を守ることはとても大事なことです。ワクチンを受ける日は、お休みを取って受診を手伝ってはどうでしょうか? パパ自身のワクチンも忘れずに。外を一番動きまわるのは、パパですからね。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
太田 寛先生


産婦人科専門医、北里大学医学部公衆衛生学 助教
1989年京都大学工学部電気工学科卒業後、日本航空株式会社羽田整備工場に勤務。2000年東京医科歯科大学卒業。茅ヶ崎徳洲会総合病院産婦人科、日本赤十字社医療センター産婦人科勤務を経て、現在は北里大学医学部に勤務。平成21年度厚労科研費補助金「新型インフルエンザ対策(A/H1N1)妊娠中や授乳中の人へ」パンフレット作成委員。日本医師会認定産業医、日本産科婦人科学会専門医。

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