冬のお風呂は危険がいっぱい-注意するべき4つのポイント

寒い浴室に熱いお湯。特に中高年や血圧が高い人は注意して

最大の危険は温度差、寒暖の大きな差で血圧が変動。浴室を暖め、適温のお湯で半身浴、水分補給も忘れずに

年間1万4000人が入浴中に事故死

 日本人はお風呂好きといわれます。半面、入浴中の事故で亡くなる人は年間1万4000人を超えると推定され、とくに11月から3月の寒い季節の事故が多くなっています。年間1万4000人は交通事故による死亡者数を上回っています。このように日本で入浴中の事故死が多い理由は、熱いお湯に肩までつかる日本の入浴スタイルにあると指摘されています。

 冬の入浴シーンを考えると、短い時間に皮膚が次々と大きな温度変化にさらされることがわかります。まず、暖かい部屋から暖房の効いていない脱衣室に入ったとしましょう。ここで裸になれば、寒くて鳥肌が立つでしょう。さらに、暖まっていない浴室に入れば震えてしまいます。体温を逃すまいと血管は収縮し、この時点で血圧は上昇。そして熱いお湯の中に歯を食いしばるようにしてつかると、さらに血圧は上昇します。やっとお湯の中に落ち着いて体が温まり出すと、血圧は今度は急激に下がり始めます。このように、裸の体を見舞う大きな温度変化は心臓や血管に強い影響を与えます。

熱いお湯では脳や心臓への血流が減る危険も

 お風呂のお湯の温度は38~41℃が適温とされ、血液循環が改善されてさまざまな健康効果をもたらします。一方、42℃以上の熱いお湯は、血圧変動や心臓への負担が大きく、脱水から血栓を発生しやすいなど、体にさまざまな悪影響を与えます。

 熱いお湯につかると皮膚表面の血流量が大幅に増えるため、脳や心臓などへ回るべき血流量が急激に少なくなり、高齢で動脈硬化が進んでいる人には大変に危険な状態と言わざるを得ません。脳への血流が少なくなってめまいやふらつき、意識がなくなるといった意識障害が起こると、浴槽内で溺れたり洗い場で転倒するなど事故の危険が高まります。
 また、熱いお湯に長い時間つかっていると、発汗が進んで血液の水分が減るため血液が粘っこくなったり、血流を妨げる血の塊(血栓)ができやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞などを起こす危険があります。
 日本人には「熱いお湯でないと入った気がしない」という人も多いようですが、特に中高年や生活習慣病のある人は、熱いお湯は避けるべきでしょう。

 高齢者の入浴中の事故死は寒冷地ほど多くなるといえますが、例外的に青森県と北海道は死亡率が低く、その理由は暖房設備が整っていて室内が暖かく維持されているからではないかという指摘もあります。

 さらに、高齢者の入浴で意外な盲点になりそうなことを一つ挙げておきましょう。それは、かつて東京消防庁が調べたところ、入浴中の急死者の多くが自宅で一人で入浴していた健康で元気な高齢者だったということです。支援や介護の必要な人なら家族や介護者が注意しているので事故は起きにくいでしょうから、暖房の問題とともに注意が必要なことだといえるでしょう。

暖房・適温・水分補給…安全な入浴のための心得

 以上いろいろご紹介したように、冬の入浴は特に高齢者にとっては危険と背中合わせであることを、本人も周囲の人もよく認識しておくことが重要です。そして安全・安心な冬の入浴を楽しむために以下のようなことに気を配ってください。

●脱衣室、浴室を暖めておく
 脱衣室には暖房、浴室も暖房するか、またはお湯を張るとき高い位置からシャワーで入れる(湯気で温まる)、浴槽のふたを開けておくなどあらかじめ浴室内を暖めておきましょう。また、高齢者は最初に入浴するより、浴室が暖まった2番目に入るということもよいでしょう。

●熱いお湯にいきなり入らない
 湯温は41℃以下が適温。それでも入るときは、お湯を手足からかけ始めて肩、背中へとかけてお湯の熱さに体をなじませてから、湯船にゆっくりとつかっていくようにしましょう。さらに肩までどっぷりつかるより、みぞおちくらいまでの半身浴にしておくと、水圧による心臓への負担を軽くすることができます。

●入浴前後に水分補給
 発汗すると血液は水分が減って粘っこくなりますから、入浴の前と後にコップ1杯ほどの水を飲んで水分補給をしておくと安心です。

●飲酒後や、食事・運動の直後には入浴しない
 アルコールによる血管拡張や利尿作用で、血圧の下がり過ぎや脱水症状が起こりやすくなります。食事や運動の後の入浴は、胃腸や筋肉に回るはずの血液が、温熱によって体表の血流が活発になったために全身に回ってしまうため、食物の消化や筋肉の疲労回復の妨げになります。

 最後に、これから温泉旅行を計画している人に一つご注意。朝風呂は温泉旅行の楽しみの一つかもしれませんが、朝の8時くらいまでは体が睡眠から覚醒へ変わっていく時間帯で、血圧や脈拍の調節が万全ではありません。睡眠中の発汗で血液も粘っこくなっていますから、そんな状態での入浴は大変に危険です。目覚めて1時間くらいのんびりしてから入浴するようにしてください。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
倉林 均先生


埼玉医科大学 リハビリテーション医学 教授
1983年旭川医科大学卒業後、群馬大学第三内科研修医、同大学草津分院リハビリ部助手。フランス国立医学衛生研究所血液分子遺伝学部門留学を経て、2000年群馬大学草津分院リハビリ部講師。04年埼玉医科大学リハビリ医学助教授、11年より現職。所属学会・役職は、日本温泉気候物理医学会理事、日本温泉協会理事、日本温泉療法医会幹事、国際温泉気候連合会監事、日本血液学会代議員、日本老年医学会代議員など。

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