超高齢社会を迎えて-長寿が喜びになる社会、健康と生きがいが大切

「長寿を喜び合える社会に」をテーマに健康生きがい学会大会

誰もが願う、健康と安心そして生きがいのある人生。人生設計を100年で考える超高齢社会

現在の高齢化率23.1%。一人暮らしの高齢者も増加

 日本は現在、世界のどの国も経験したことのない高齢社会を迎えています。2011年版『高齢社会白書』によると、2010年10月1日時点で、65歳以上の高齢者人口は2,958万人で、総人口に占める割合を示す高齢化率は23.1%。このうち、75歳以上(後期高齢者)の人口は1,430万人で、総人口に占める割合は11.2%です。65歳以上、75歳以上のどちらも過去最高となりました。
 上昇傾向は今後も進み、いわゆる「団塊世代」(1947~1949年に生まれた人)が65歳以上となる2015年には、高齢者人口は3,000万人を超え、高齢化率は26.9%と推計されます。2042年以降では高齢者人口は減少に転じるものの高齢化率は上昇し続け、2055年には高齢化率40.5%に達し、2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上となると見込まれています。

 一方、男女ともに一人暮らしの高齢者が年々増えており、白書では高齢者の社会的孤立がもたらす問題として、「生きがいの低下」「高齢者の消費者被害」「高齢者による犯罪」「孤立死」を挙げ、社会として高齢者の「居場所づくり」や「活用」への取り組みが必要としています。

 高齢化率21%以上の社会を「超高齢社会」といい、すでに日本は超高齢社会を迎えています。こうした状況を背景に、2010年12月に「健康生きがい学会」が創設されました。
 創設趣旨は、高齢者が健康と安心そして生きがいのある人生を送れるよう、関係する専門家や実践家が一堂に会して学術交流を図りながら、今後のわが国の発展と向上に寄与したいというもの。先般その第2回大会が、「長寿を喜び合える社会」をメインテーマに東京大学にて開催されました。

超高齢社会は、多様な分野の支えと連携が大切

 開催のあいさつに立った学会会長を務める京極高宣氏(国立社会保障・人口問題研究所名誉会長、社会福祉法人浴風会理事長)は、「すべての高齢者を生活主体として、すこやかで生きがいのある生活を保障することが高齢者福祉の究極の目的であり、その確立のために医療・福祉・教育・心理・法律・経済・文化などあらゆる領域から学術的に議論を深めていくことが必要」と、学会の存在および大会開催の意義を述べました。

 続く基調講演では「医学、看護学、心理学の立場から健康生きがいを考える」をテーマに、3人が登壇しました。
 長谷川和夫氏(認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長)は、「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」の開発者として知られ、日本の認知症治療を拓いた先駆者です。「長生きすれば認知症は誰にとっても他人事ではなくなる。
 認知症になっても本人と家族を支える絆が地域社会に創られ、ありのままを受け入れ、寄り添うケアが求められる」と、やさしく語りかけました。

 この学会の母体となる(財)健康・生きがい開発財団の理事長を務める辻哲夫氏(東京大学高齢社会総合研究機構特任教授)は、安心して暮らせる活力ある長寿社会を目指したコミュニティーモデルを研究中。「高齢者が寝たきりになったり、日常生活動作に援助が必要になったりするきっかけは、病気や転倒骨折が多い。だから生活習慣病予防や介護予防が大切。元気な高齢者もいつかは虚弱になる。虚弱になったときにも生活の質を低下させず、安心して暮らしていける社会を構築することが大切。特にこれからは多職種が連携する在宅医療、在宅ケアの役目が重要となる」ことに加え、「元気な高齢者を地域の支え手になってもらう工夫も大切」と強調しました。

 秋山弘子氏(東京大学高齢社会総合研究機構特任教授)は心理学の立場から、「日本人の平均寿命は男性約80歳、女性約86歳。人生100年時代となり、個人も社会も急激な変化に対応することが求められている。高齢者の体力を通常歩行速度で見ると、現代の高齢者は10年前の高齢者に比べ、11歳も若返っている。元気で長生きできるようになった時代、個人の人生設計も、社会のインフラ整備も100年で考える必要がある。人々がもてる力を最大限に活用し、自分らしく生きる多様な人生設計を立てることができるためには、住宅、交通機関、教育制度、雇用制度などハードとソフトの両面から作り直すことが重要」と述べました。

100歳を迎えた日野原重明氏も特別記念講演

 午後のスタートは百寿講演「健康生きがいと私―百寿を迎えて」と題し、日野原重明氏(聖路加国際病院理事長、健康生きがい学会名誉会長)の特別記念講演がありました。
 1時間の講演の間じゅうステージを歩き回り、100歳を迎えたとは思えないほど元気です。若かりし頃ハイジャックされた「よど号」に乗り合わせた経験を持ち、「解放され、飛行機のタラップを降りて大地に一歩踏み込んだそのときに、これからの人生はいただいた命。世の中のために尽くす人生を生きようと決めた」と、今の活動の原点を回想しました。10年以上先までスケジュールが詰まっていて、忙しさはまだまだ続くそうです。

 参加者は多様な分野から700人を超え、安田講堂は大盛況。会場からの質疑応答も活発で、高齢者の健康と生きがいに関心の深いことがうかがえました。
 その後、複数の会場で下記のような5つの分科会に分かれて、ミニ講演およびパネルディスカッションが行われ、どの会場でも熱心なディスカッションがくり広げられました。

第1分科会「社会参加と健康生きがい」
(座長:古谷野亘氏 聖学院大学人間福祉学部教授)
第2分科会「健康生きがいと美容、自己表現」
(座長:野澤桂子氏 山野美容芸術短期大学美容福祉学科教授)
第3分科会「健康生きがいと住空間」
(座長:吉田隆幸氏 群馬医療福祉大学大学院教授)
第4分科会「生きがいと在宅医療」
(座長:大内尉義氏 東京大学大学院医学系研究科教授)
第5分科会「健康生きがいと食生活」
(座長:薬師寺道明氏 久留米大学学長)

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
辻 哲夫先生


東京大学高齢社会総合研究機構特任教授
(財)健康・生きがい開発財団理事長
1971年東京大学法学部卒業後、厚生省(当時)に入省。老人福祉課長、国民健康保険課長、大臣官房審議官(医療保険、健康政策担当)、大臣官房長、保険局長、厚生労働事務次官を経て2007年退官。08年田園調布学園大学教授、09年から現職。東京大学公共政策大学院医療政策担当教員等兼務。主な著書に『日本の医療制度改革がめざすもの』などがある。

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