高齢者とのコミュニケーションが上手くいかない-大切なポイント

自立を促すケアの理念を理解し、思いやりと敬意をもって

笑顔と聴く力、美しい言葉。誰もが持っている宝物を活かし、温かな心配りでコミュニケーションを

高齢者への接し方の基本を理解しましょう

 皆さんは毎日の暮らしの中で、高齢の方にどう接してよいか困った経験はありませんか? まもなく人口の4人に1人が高齢者という時代が到来し、高齢者への対応や配慮がますます重要な時代がやってきます。今回は高齢者とのコミュニケーションのポイントをお伝えします。

 高齢者と一口にいっても、まだまだお元気な方から介護を必要とする方まで、心身の状態はさまざまです。ただ個人差は大きいものの、誰もが老化により視力や聴力、足腰の機能が低下したり、物忘れが多くなるなど心身の機能は低下していきます。周囲の人は、特別扱いではなくさりげないコミュニケーションを心がけることが大切です。良いコミュニケーションに必要なのは意識と知識。まずは高齢者と接する上で最も大切な原則を理解しましょう。理念を理解したうえで高齢者と良いコミュニケーションがとれると、双方に安心感や信頼感が生まれます。

 デンマークで生まれた「高齢者ケアの3原則」は、高齢者の自立を促すケアの基本となるものです。

 これらを実現するために、高齢者と接するときには次の5つを心がけましょう。

(1)高齢者の体や心の変化を理解しましょう
(2)思いやりや愛情を持って誠実な対応をしましょう
(3)高齢者のペースに合わせましょう
(4)よく聴きよく観察し、コミュニケーションを持ちましょう
(5)一人の人間として尊重しましょう


高齢者とのコミュニケーションのポイント

 高齢者の特性を理解することで、具体的にどのように接したらよいのかわかるようになります。加齢による変化を正しく理解し、こちらからペースを合わせていくことが大切です。一般的な高齢者の特徴とその対応を、以下に挙げます。

●動作や反応が鈍くなりペースが遅くなる ⇒ ペースを合わせましょう
 自分のペースではなく高齢者のペースに合わせ、せかさないで“待つ”ことが大切です。本人ができることは手を出さないで見守りましょう。自立支援が高齢者とのコミュニケーションの基本です。

●不安感や疎外感を感じ閉じこもりがちになる ⇒ 聴き上手になりましょう
 高齢者は、仕事からの引退、家族関係の変化、身近な人との死別など数々の喪失体験を重ねています。自分の価値観に固執し疎外感を感じたり、身体、経済、社会の変化により将来への不安を感じ閉じこもりがちになるのも特徴です。
 高齢者の話をよく聴きましょう。聴き上手とは心を傾けて聴くこと。お年寄りだからと先入観をもたないで、目の前の人をよく観察し、よく聴き、ありのままを受け入れる気持ちが大切です。こうした会話の中から楽しみを引き出し、今できる楽しみを一緒に考えてみましょう。

●話が聴き取りにくい ⇒ 話は簡潔に、わかりやすい言葉で伝えましょう
 高齢者は聴力が低下して言葉が聴き取りにくくなったり、早い会話についていけなくなったりするため、話の伝え方に工夫が必要です。相手の能力に合わせ必要なことだけを短く、わかりやすく話しましょう。特に高音部は聴き取りにくくなるため、低めの声で、わかりやすい言葉を使ってゆっくり話し、周囲の騒音にも気を配ります。言葉だけでなく、言葉を補う表情、身振り、姿勢、まなざしなども大切にしましょう。

●自分の価値観に固執しがち ⇒ プライドを大切にしましょう
 高齢者は長年培われた本人なりのプライドを持っています。言葉が間違っていたり、話題についていけなくても、否定したり怒ったりせずに、ありのままを受容し傾聴することが大切です。子ども扱いしない、人生の先輩として敬う姿勢は、コミュニケーションを円滑にすることにつながります。

●転倒しやすくなる ⇒ 安全に配慮しましょう
 足腰の機能の低下などさまざまな要因で歩行時のバランスがとりにくい状態になっています。歩行など移動の際にはさりげなく見守り、日常生活の中で転倒のきっかけになりそうなものはあらかじめ除去しておくように配慮しましょう。転倒の主な危険因子には、内的因子として身体的疾患、薬物、加齢変化などが、外的因子として段差や履物、照明などの物的環境があります。身体状況をよく理解して生活環境を整え、移動の際などは寄り添うように立って、いつでも体を支えられるよう対応することが大切です。

高齢者の心と体を理解し、温かい心を持って接することが大切

 介助が必要な高齢者ほど心に不安や遠慮を抱えていますから、温かい心を持って接することが大切です。相手を思う心は言葉や表情、動作となって表れます。親しみをこめた表現や気さくな態度を好む高齢者もいれば、丁寧な言葉づかい、敬意をもった話し方、礼儀正しい挨拶などを重視する高齢者もいます。相手に応じた臨機応変な対応も必要です。介助することに誇りを持ちながら、楽しんで行う気持ちや笑顔は周囲の人に伝染し、場の空気を明るくします。

【真の心づかいのために、高齢者疑似体験のすすめ】
 高齢者疑似体験というプログラムでは、手足のおもりや耳栓、特殊眼鏡などを装着して高齢者の身体機能の低下や心理的変化を疑似的に体験することができ、高齢者の心や体を理解し介助者の役割を推察するのに役立ちます。私も実際に体験しましたが、高齢者の不便さを理解するのに大変役立ちました。
<参考>
長寿社会文化協会WAC「うらしま太郎」
日本ウエルエージング協会「インスタント・シニア」

【不便を補う便利な用具の活用】
 加齢による視力や聴力の低下によるコミュニケーションを補う便利な用具が開発されています。
 音声拡大器や聴音器、拡大鏡や携帯用老眼鏡など、福祉用具相談員と相談しながら上手に活用してください。

 年々高齢化が進み、高齢社会に対応できるサービスの開発とともに、高齢者一人ひとりのニーズに沿うことのできる人材が求められていますが、介護や介助という言葉が日常的に使われるようになった現在でも、不適切な接し方をしている場面をまだまだ多く見かけます。
 相手を理解しようとするコミュニケーションは、信頼し合い、理解し合い、通じ合い、伝え合う関係を作り出します。高齢者の知恵や体験は社会の宝物です。また、私たちも人に安心感を与える笑顔、人に好かれる聴く力、心に響く美しい言葉という宝物を持っています。お互いの宝物を活かしながら、温かな心配りでコミュニケーションを心がけましょう。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
川上 由里子先生


介護コンサルタント
ケアマネジャー、看護師、福祉住環境コーディネーター2級、産業カウンセラー。1984年より13年、大学病院、高齢者住宅(聖路加レジデンス)などで看護師として勤め、現在は三井不動産(株)ケアデザインプラザなどで、シニアライフ提案のコンサルティングや講演を行う。著書に『介護生活これで安心』(小学館)。08年5月より、ニッポン放送「ラジオケア・ノート」(奇数月第4週の月~金)にレギュラー出演中。08年春より自身も父親の遠距離介護を体験中。

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