妊娠中、夫のサポートが必要なとき-その8 万が一の備えとは

子どもの不慮の事故を防ぐため、家の中や周囲の環境を安全に

大事なのは「一緒に子どもを育てていこう」という気持ち。忙しくてもできることはたくさんある

家族を増やして仲良く生活することは、有効な災害対策でもある

 3.11からもうすぐ1年が経とうとしています。震災後1カ月の時に、被災地に医療支援に入りました。そこで見たものは無残に破壊された街並みでした。そこここに生活の跡が残っていました。人の生活のあった場所なのに、商店街のシャッターは壊れ、ヘドロの臭いがして、あちこちに車が転がっている。
 津波が来る前までは、その場所で日常の生活が送られていたであろう。朝起きて、顔を洗って、みんなで揃ってご飯を食べて、仕事に行き、自分の家に帰る。そしてその日に起こったことをみんなと話して、暖かい布団で眠る、そんな生活がそこにあったはずの場所なのに。その日常が、いきなり奪われていました。

 そして、その場所に立っていると、毎日ごく普通の生活を送ることがいかに素晴らしいことだったのかと思いました。前の日とはちょっとだけ違う日を過ごせることがいかに楽しいことなのかがわかりました。
 また、避難所で被災者同士や支援者がお互いに助け合う姿を見て、改めて、家族の絆、親子の絆、地域の絆、人と人との絆の大切さを感じました。私は以前から、子どもを増やすことは将来の危険を減らすことだと思っていましたが、この震災で、家族を増やして、仲良く生活することは、この混沌の時代には非常に有効な災害対策でもあると改めて思いました。家族で、そして地域全体で子どもを大事に育てていきましょう。

夫は子どもの周囲の環境を安全にすることに力を入れよう

 子どもを育てていくうえで、男にできることは何でしょうか? 夫のほうが時間に余裕のあるカップルなら、夫が主に家事や育児を担うこともいいでしょう。仕事のために時間の余裕がないという人は、仕事の合間でもできることをやってみたらどうでしょうか。例えば、予防接種のスケジュールを組んでみるとか、産休や育休に必要な書類を揃えるとか、自治体の育児支援システムを調べておくとか、直接子どもの世話をしなくてもできることがたくさんあります。

 私のおすすめは、家の中や周囲の危険を取り除いて安全な環境にしておくことです。現在でも、0~4歳までの乳幼児が不慮の事故により年間で300人ほど亡くなっています。避けようもない状況もあると思いますが、事前に予防できることもあります。

 たとえば、お風呂に残り湯をためないようにすることです。子どもの死亡原因として他国に比べて日本に特に多いものは溺水(おぼれること)なのです。水のたまった浴槽に転落すれば、乳幼児ならほんの5分であっても呼吸も心臓も止まってしまいます。以前の経験で、救急外来で運ばれながらも、助けられなかった子どもを思い出します。その子のことを考えると、あの時お風呂に水がたまっていなければなあと、いつも思ってしまいます。

 また、子どもが小さいうちはテーブルクロスは外しましょう。子どもが立ち上がるときにテーブルクロスを引っ張ってしまい、上にあったみそ汁を頭からかぶって大やけどということもあります。このような安全対策は、男性のほうが得意だと思います。子どもの安全を守ることは、とても大事です。

<参照ページ>
子どもの安全ネットワーク・ジャパン どう防ぐ 子どもの事故!
大阪府 子どもの不慮の事故防止について チェックリストと事故防止のポイント

相手の立場や気持ちに立って、一緒に子育てをすることが大事

 これまで約1年間にわたって連載してきたシリーズ『二人のための「イクメン」大作戦』も今回が最終回です(これまでのコラムは、本稿の一番下の「関連コラム」からご覧いただけます)。これまでの7回の連載で、妊娠がわかったら知っておきたいことや注意すること、家事のこと、育児休業や外遊び、予防接種のことなどを書いてきましたが、一番大事なことは、パートナーや子どもなど、自分の周囲の人たちの気持ちを考えて、行動することです。
 上手に料理を作るとか、てきぱきと洗濯ができるとか、具体的に何かができること、それはそれで大事なことです。しかし、本当の「イクメン」=「育児をする男性」とは、単に家事や育児をパートナーと同じようにするということではなく、相手の立場や気持ちに立って、自分のできること、得意なことで、一緒に子育てをすることだと思います。本当に女性が必要としているのは、一緒に子どもを育てていこうという、その気持ちなのです。

 絆が見直されたこの時代に、愛するパートナーとの間に授かった命には大きな意味があると思います。その命をこれから大切に育んでいただきたいと思います。子どもは家族の宝であり、社会の宝、そして未来の希望であると思っています。次世代につなげる命のバトンです。子どもは昔から地域の社会全体で育てていました。イクメンだけでなく、「イクジイ」、「イクババ」、という言葉も出てきています。うまく周りの助けを借りて、一緒に楽しく育てていきましょう。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
太田 寛先生


産婦人科専門医、北里大学医学部公衆衛生学 助教
1989年京都大学工学部電気工学科卒業後、日本航空株式会社羽田整備工場に勤務。2000年東京医科歯科大学卒業。茅ヶ崎徳洲会総合病院産婦人科、日本赤十字社医療センター産婦人科勤務を経て、現在は北里大学医学部に勤務。平成21年度厚労科研費補助金「新型インフルエンザ対策(A/H1N1)妊娠中や授乳中の人へ」パンフレット作成委員。日本医師会認定産業医、日本産科婦人科学会専門医。

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