よい歯医者さんを見分ける4つのポイント-かかりつけ医の探し方

歯の健康のため、かかりつけの歯科医を持ち長くつき合おう

自分に合った、信頼できる歯科医を見分けるには、患者さんの人間力も必要

かかりつけの歯医者さんで定期健診を受けよう

 「次に歯医者さんに行くのはいつ?」と尋ねると日本では怪訝な顔をされる方が少なくありません。欧米では「次の歯科のチェックアップは……。」と手帳を見てくれる、日本でもそれが当たり前になればいいと思います。日本では、かかりつけの歯医者さんで定期健診を受けている方は、地域や経済・社会階層などにより差がありますが、平均で3割に満たない程度です。

 歯科受診が欧米スタイルにならないのは理由があります。現在の保険医療システムでは、主訴があっての受診が基本、病気があっての医療保険。医療保険は健康では使えないのです。本当は、歯が健康であれば何の処置もしなくてすみ、それが一番です。歯の健康を保つために、あるいは現状からの悪化を防ぐために、定期的に歯科医に通ってチェックを受けることが大切なのです。行くたびにごく小さなむし歯を見つけてくれる歯科医院もあります。
 定期的なチェックを受けに行く価値のある歯医者さんを見つけるのは大変です。将来の歯のトラブルを回避する診断力を身につけるには、実は大変なスキルと経験が必要で、手遅れになってから見つけて治療するほうが、楽で儲かるシステムになっているのです。

 成人なら多かれ少なかれ歯周病がありますから、歯石除去やクリーニング、ブラッシング指導が定期健診のメインになります。しかし、予防指導だけでは歯科医院の経営は難しく、多くの歯科医院は治療で経営が成り立っています。

玉石混交の中で自分に合った歯科医院を選ぶ

 自分の歯を大切にするためは、良い歯科医院と長くつき合っていくことが大切です。お口の中は患者さんごとに千差万別です。治療を受けるなら、その患者さんに必要な治療を上手に行ってくれる歯科医を選ぶことが大切です。しかし「良い歯医者さん」の定義は腕か人間性か……、それはそれぞれの患者さんの価値観で異なることも多く、他人には良い歯医者さんでも自分にとって良い歯医者さんとは限りません。

 また、初めから悪意のある歯科医はいません。誰もが自信とプライドを持って、患者さんのために最善を尽くしたいと思って開業します。しかし、どんな業界でも質の差はありますが、特に歯科医師の場合、数が増えるとともに、質の差も広がっており、患者さんの選択眼が問われます。同業者として情けなくなるような歯科医もいますが、街にひっそりと開業している名医もいます。巡り合えるまで根気よく探してください。

主治医以外の歯科医を知っておく

 日本人の多くは複数の歯科医院を訪れていて、別の歯科医院にかかって初めて前医が良かったことを知る人も少なくありません。歯科医院は密室性が高く、治療を受けてみないとわかりません。しかし、患者という弱い立場で歯科医院を訪れるのは勇気がいります。そこで「草の根歯科研究会」では、「良い歯医者さん」を訪ねる活動を行っています。

 「草の根歯科研究会」は、成熟した市民社会における歯科保健文化の創造と受け手の側からの歯科医療改革を目指し、健康な歯と口の大切さを患者学の視点から広めていくことを目的に発足しました。「草の根歯科勉強会」や「歯科患者塾」、「歯医者さん探検隊」などの活動を実践しており、このうちの「歯医者さん探検隊」で、賢い歯科医療消費者になるために、上記の歯科医院を訪ねる活動を重ねています。
 その前のリサーチとして、私たちメンバーが保険証を持ち、患者として訪ねることもあります。むし歯への対応も歯科医院により実にさまざまで、歯科医の診断技術や考え方により治療方針には差があると感じています。一般の方も歯科職とともに探検隊として訪れていて、毎回いろいろな発見があるようです。

望ましい歯科医院、避けたほうが良い歯科医院の見分け方

 歯科治療の善し悪しは、お口の中を見るだけである程度わかりますが、歯は鈍感で反応が遅く、悪い治療の結果が何年も先までわからないこともあります。未熟な歯科医ほど難しさ・怖さを知らずに自分の腕を過信しがちです。一方、職人気質で無愛想だけど腕が良い歯科医も少なくありません。実際に会って話してみれば、人間として信頼できるかどうか、大体の見当はつきます。よい歯科医かどうか見分けるために、以下のことが目安になるでしょう。

・誘導的な説明をする、治療を急がせる歯科医はNG!
 治療法は複数あり即座に意思決定が必要なことは多くありません。それなのに自費治療を熱心にすすめられたら要注意です。インプラント義歯治療の苦情が急増していますが、早くやったほうが良いと選択を迫られ、信頼関係がないのに治療を急ぎ、期待が恨みに変わったものが多いと思われます。
 「ほかの歯科医の意見を聞いて決めたい」と言って、不快な表情をする歯科医なら逃げましょう。快く応じてくれたら、むしろ戻る価値があるかもしれません。経営優先の医院かどうかを見抜くのは大変ですが、患者さんに考える余裕を与えるかどうかが一つの見極め点です。

・ラバーダム(ゴムのシート)を使っていたらGood!
 ラバーダムとは治療する歯以外をおおう薄いゴムのシートで、むし歯菌が唾液などを介して、治療する歯に感染するのを防ぐために用います。根管(神経)治療や小児の虫歯治療では必須ですが、使っている歯科医院は多くありません。歯科大学では必要と教えているのに使わない歯科医院が主流という日本の歯科の現状は悲しいものですが、きちんと使っていたら間違いなく良い歯科医院です。

・スタッフの意識・雰囲気がよく、院内コミュニケーションがとれていたらGood!
 スタッフが気持よく向上心を持って働く医院、意思疎通が緊密な歯科医院は雰囲気でわかります。良い歯科医院では、院内研修や院外でも積極的に学ぶ機会を提供してモチベーションを維持しており、スタッフも自分の医院は最高だと思って働き、さらに良くする工夫を重ねています。

・歯科医が学び続ける姿勢が見られたらGood!
 歯科医はいつも歯のこと患者さんのことを考えているものですが、考えなくてもやっていける、漫然と惰性で診療を続けている歯科医もいます。目の前の患者さんに最善を尽くそうとすれば、最新の知識・技術を習得するためにアンテナを高く張って研ぎ澄ませていることが必要です。そういう向上心のある歯科医は、新しい技術にチャレンジしたり、付加価値のある資格を取得したりしています。

信頼関係は患者の人間力で築いていく。お任せではダメ

 簡単に歯科医院の見分け方を紹介しましたが、最後は患者さんの人間力しかありません。他人に選んでもらうことはできないこと、多少の選択ミスでは命に別条はないこと、良い相手に巡り合えれば、よりハッピーになれることなどで、歯医者選びは医者選びよりも配偶者選びに似ていると思います。
 あるインプラント専門医は「配偶者は選び直しができるが、インプラント医は選び直しできないので、より慎重に選ぶべきだ」と言っています。慎重に真剣に選んで、良い相手に巡り合ったら信頼関係を大切に育ててほしいものです。初めから名医はいません。名医は患者さんが育てるのです。

 また、どんな名医が誠実に治療しても、むし歯や歯周病の歯を元通りに戻すことはできません。今の自分の歯をより良い状態で維持するために、日々のお手入れと歯科医院でのチェックが大切です。過大な夢を抱かずに地道に自分に合った歯の健康づくりのパートナー、信頼できる歯医者さんを見つけましょう。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
岡田 弥生先生


歯科医、草の根歯科研究会代表
1973年愛知県立岡崎高等学校卒、1979年東京医科歯科大学歯学部卒、1983年名古屋大学大学院(医学部口腔外科学専攻)修了。歯科医師、医学博士。東京医科歯科大学障害者歯科治療部を経て東京都杉並区に勤務、現在に至る。1997年より勉強会を主宰、2003年より草の根歯科研究会と改称し代表を務める。著書に『むし歯ってみがけばとまるんだヨ』(梨の木舎)、『高齢期の口腔ケア』(一橋出版)ほか。

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