気になる口臭の原因と対処法-口臭の8割はお口の健康トラブル

歯周病やむし歯などの治療と口腔ケアで口臭予防

誰にでもある生理的口臭。治療が必要な口臭の原因は8割が口の中、全身疾患が原因になることも

口臭が気になり、お口の健康に自信がもてない日本人

 お口の健康が全身の健康に関係があることは、よく耳にすると思います。そして、お口の健康はQOL(生活の質)の向上にも関係があります。
 我々の研究では、80歳でほとんどの歯が残っている方は、93%が「何でもおいしく食べられる」、67%が「食事が楽しい」と、食生活が充実していました。また、人とのおしゃべりが楽しいと感じている方が60%もいました。100歳以上の方々の食事の状況を調査した報告では、「家族と同じものを食べている」方の割合は、男性57.2%、女性40.9%と多く、流動食が男性4.8%、女性10.5%と非常に少ないことが示されています。
 やはり、健康で楽しく長生きするには、お口の健康は大切なのです。

 ニューヨークではほとんどの方が歯の健康に自信をもっており、自信がない方はわずか6%。それに対し、歯科に関する予防管理があまりできていない東京では、42%もの方が自信をもっていない――というデータが報告されています。そして、自信をもてない最も大きな理由が「口臭」だというのです。インターネットでキーワード検索をしても、“口臭”のヒット数は “歯周病”や“むし歯”に比べてはるかに多く、口臭への関心が非常に高いことがわかります。
 お口の健康が低下すると、他人との食事を嫌ったり、食事の楽しみが減少する傾向がみられることも研究報告されていますが、口臭もその大きな要因なのでしょう。

 口臭で困ることの一つは、自分ではあまりわからないことです。臭いは、鼻の中にある臭いを感じる嗅細胞が臭いをキャッチし、その情報が脳に伝わることで認識されますが、この嗅覚は主観的なもので、同じ人が同じ臭いを嗅いでも体調や心の状態などによって受け止め方が変わります。そして、嗅覚には同じ臭いを長時間嗅いでいると、その臭いに慣れてしまうという順応反応があるので、自分で自分の臭いを把握するのは難しいのです。

口臭の8割はお口の健康トラブルが原因

 口臭のある方の8割は、口の中の清掃不良や歯周病、ドライマウス(口腔乾燥)などお口の健康トラブルが口臭の原因になっているといわれています。
 実際に、歯周病など口の健康を損ねたことによる口臭は、特に強く感じます。口腔内の嫌気性菌数が増加し、これらの嫌気性菌は、新陳代謝ではがれた粘膜上皮、血球成分、死んだ細菌などのタンパク質成分を分解して、硫化水素やメチルメルカプタン、ジメチルサルファイドのような揮発性硫黄化合物を作ります。これらは生ゴミ臭、卵や魚、野菜が腐ったような臭いを特徴としています。口臭のある8割の方がこの物質を産生しており、まわりに不快感を与えています。

 ほかにも、耳鼻咽喉の疾患や、呼吸器疾患、糖尿病、腎疾患などの全身疾患からくる口臭もあり、たとえば腎不全ではアンモニア臭が口臭の主体であったり、トリメチルアミン尿症ではトリメチルアミン臭(魚が腐ったような臭い)がしたりと各疾患に特徴があります。
 我々の研究からも、口臭成分は揮発性硫黄化合物だけではないことがわかっており、今後は、口の健康や全身の健康を口臭でスクリーニングできるようになるかもしれません。

 もちろん、口臭は病気からくるものだけではありません。誰もが、起床時には口の中がネバネバして不快に感じるでしょう。夜間は唾液の量が減少し、細菌が増殖して口の中の汚れ成分を分解し、口臭成分である揮発性硫黄化合物を産出するからです。食事や歯磨き、舌を磨くことで細菌は減少し、これらの刺激によって唾液が増加すると口臭は弱くなります。一方、空腹時や緊張したときには、唾液の減少などによって口臭が強くなります。
 これらを生理的口臭といいます。生理的口臭は下図のように一日の中で変化がありますが、口臭がゼロになることは原則としてありません。私たちは生きている限り、口の中ではさまざまな代謝が行われているからです。
 ニンニクやネギなどを食べた後は、口の中に残った食べかすから直接臭う場合と、体内で消化吸収された臭い物質が血液によって運ばれ、やがて肺から呼気として排出されて臭う場合がありますが、これらも一時的な口臭であり、誰もが経験することですので気にする必要はありません。

口臭の治療と予防で息さわやかに

 口臭外来に来院されて口臭が異常値を示す方の8割は、口臭の原因が口の中にあり、歯周病やむし歯、入れ歯の清掃不良、唾液分泌量の低下、多量の舌苔(ぜったい)が疑われます。
 舌苔とは舌に付着する白い苔のようなもので、特に口臭に影響します。舌苔の予防には舌ブラシが有効で、これについては後で詳しく述べます。歯周病やむし歯の場合は、それらを治療することで口臭も軽減・改善します。まずはかかりつけの歯医者を受診してください。

 口の中以外に原因がある場合、副鼻腔炎や呼吸器系疾患、腎疾患、糖尿病、肝臓疾患、食道がんなどがあげられます。口の中の清掃や歯周病・むし歯治療などの処置をした後でも口臭が減少しない場合は、これらの疾患が疑われます。これも口臭の専門外来に受診することによって把握できます。

 口臭予防のためには、日頃からの口腔ケアが大切です。特に舌苔の清掃は口臭予防効果が高いので、積極的に取り組んでください。舌苔は、図のように舌の根本の分界溝からたまります。分界溝の位置を確認してから、この分界溝に舌ブラシを当て、前方へ清掃することがポイントです。ブラシを前後させると、採取した舌苔が誤嚥につながりますので、あくまでも前へかき出してください。また、あまり激しくかき出すと舌を傷つけるので、力を入れすぎないよう注意しましょう。約100g未満の圧力で、ソフトタッチでやるのがコツです。

 このほか、定期的に歯のクリーニングを受けることや、生活習慣に気をつけて全身疾患の予防を心がけることも重要です。息をさわやかにして、豊かな生活を送ってください。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
有川 量崇(かずむね)先生


日本大学松戸歯学部公衆予防歯科学講座 専任講師
日本大学松戸歯学部付属病院歯科人間ドック外来担当
日本大学卒業後、予防歯科学を専門に研究、臨床を行う。米国コロンビア大学客員研究員を経て、日本大学松戸歯学部にて予防歯科サービスの研究、臨床を続ける。現在は主に機能性食品を含む抗酸化物質による口腔の健康への影響をはじめとし、口臭、抗加齢医学関連の研究を行っており、外来は日本大学松戸歯学部付属病院歯科人間ドック外来にて口臭検査も担当している。著書に『保健医療におけるコミュニケーション・行動科学』、『口腔から実践するアンチエイジング医学』(ともに共著、医歯薬出版)ほか。

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