職場で急病人が出たときの対処法-確認した4つのこと

職場で急病人発生! あなたは職場ですぐ救急車を呼べるか?

職場には意外なバリアがあります。他人ごとと思わず、救急車を呼ぶ具体的なプロセスを考え、備えましょう

救急車を呼ぶまでに、職場にはさまざまなバリアがある

 「職場」での急病人発生。本人は意識がなかったり、苦しんでいたりして、電話ができませんから、同僚、部下、上司、総務の方など、立場はどうあれ誰かが救急車を呼ぶべく119番に電話をしなければなりません。
 はたして、救急車はすぐに職場に来てくれるでしょうか?

 実は、「救急車を呼ぶ」という初期段階の極めて初歩的なことをするまでに、職場にはさまざまなバリアがあります。そうしたバリアが原因で、結果的に119番への連絡が遅れ、さらに病院への搬送が遅れ、場合によっては救える命が救えなかったり、後遺症が残ったりすることがあります。

 さまざまなバリアの中でも、多くみられるのが次の4つです。
1.気持ちのバリア
2.担当者が決まっていないバリア
3.職場の所在地を正しく説明できないバリア
4.電話回線のバリア

 もしかしたら明日、あなたが職場で倒れるかもしれません。あなたの職場に4つのバリアがないか、今すぐ確認してみましょう。

1.気持ちのバリア:「救急車を呼ばないで!」、「なんで救急車なんか呼んだんだ!」

 職場で救急車を呼ぶ状況としては、けが、てんかんによる発作のほかに、脳梗塞や心筋梗塞など命にかかわったり、後遺症を残すこともある病気があげられます。脳梗塞や心筋梗塞などは年代の高い方が発症する可能性が高いので、そうした場合には部下となる人が呼ぶことが多いです。
 しかし、症状のある本人には、「会社に救急車を呼ぶようなおおごとにはしたくない」といった思いがあることが多いようです。プライドもあったり、噂になりたくなかったり、遠慮したりといろいろとあるのでしょう。
 そのため、「救急車を呼ばないで!」、「しばらく様子をみたい」、「救急車は呼ばずにタクシーで行きたい」などと言う人も少なくないようですが、そんなときまわりは「聞こえないふり」をすることも大事です。

 また、救急車を呼んだものの実際には軽症であったとしても、絶対に「なんで救急車を呼んだんだ!」と怒ってはいけません。
 大事なことは、「職場で急病人が出た場合には救急車を呼ぶことを躊躇しない。救急車を呼んでたまたま軽症であったとしても、呼んだ職員を責めることはしない。むしろ救急車を呼ばないことのほうが許されない」といった価値観をマニュアルに記載したり、安全衛生委員会などで時々確認しておくことです。

2.担当者が決まっていないバリア:「え、俺が119番するの?」、「総務の人、もう帰っちゃったの?」

 あなたは「119番」に電話をしたことがありますか? なかったとしてもご安心を。多くの人がありません。職場では、規模が大きい場合は総務の方などが担当となるようですが、どうやら緊急事態は、金曜日の夕方、就業時間後、休日出勤のときのような、人が少ないときに起こることがしばしばです。

 そのため、迅速に救急車を呼ぶためにも、現場にいる人が119番に電話できるように決めておくことも大事です。もちろん、119番に電話した後に救急隊を会社の玄関から現場まで連れてくるといった連携が必要になりますので、総務や守衛さんにも電話をします。現場にいない人が119番に電話をすると、質問されても答えられないかもしれないですしね。
 119番に電話をすることについては、職場のだれもが担当者です!

3.職場の所在地を正しく説明できないバリア:「ここの番地ってなんだっけ?」

 ところが、職場に救急車を呼ぶことができない人も珍しくありません。つまり、119番に電話をすると、「火事ですか? 救急ですか?」と聞かれ、その後に職場の所在地を正しく伝えなければなりません。
 では、あなたは自分の職場の所在地を正しく言えるでしょうか? また、所在地が言えたとして、玄関からその場所までの経路を説明できるでしょうか? これは工場のような広い場所の場合には特に重要です。

 六本木ヒルズぐらい有名な建物でしたら所在地は不要かもしれませんが、何階の、どのあたりかを、まったく知らない人に伝えるのは容易ではありません。総務などの事務職の方などは、会社の所在地を書く習慣があるのでわかるかもしれませんが、現場の方などは知らないことのほうが多いくらいです。ましてや請負や派遣で来ている方はなおさら知りません。

 対策としては、電話のそばに「火事です・救急です。ここは、○○市○○町○-○、株式会社△△のX階です」という小さな紙を貼ってあればあわてません。コストはほとんどかかりませんから、検討してみてはいかがでしょうか。
 また、こういうこともあります。会社の所在地を言うと、裏玄関がカーナビなどで設定されるようなことです。必ずしも会社の所在地と表玄関の場所が一致しないことも、工場のようなところではあるようです。うそのような話かもしれませんが、そうしたことも平時から確認しておくことは大事です。

4.電話回線のバリア:「119番がずっと話し中?」「えっ? 隣の県の救急隊?!」

 「119番に何度も会社の電話からかけたんですが、ずっと話し中でした。でも、携帯から電話をしたらつながったんです。どうしてですか?」
 どうしてだと思いますか?

 最近、企業ではIP電話などに切り替えてコスト削減をする動きがありますが、緊急電話にかけられない設定になっていることがあるそうです(例:050で始まる番号)。ぜひそのようなことがないか確認してください。

 もう一つ、これは県境にある企業でのこと。携帯から119番にかけたら、隣の県の救急にかかったそうです。転送をしてもらったりしたようですが、つながるまで時間がかかったという話を聞いたことがあります。こうした電話回線のトラブルで連絡が遅れるのも惜しいことです。

 さあ、あなたがもし明日倒れたら、一刻も早く病院に連れて行ってもらえるように救急車が来ることができるでしょうか? どうやら他人ごとと思う人が多く、職場の安全衛生委員会などで議論すると効率的な方法に至らないことがあります。ぜひ「自分が急病になったら」という意識で具体的な救急車を呼ぶまでのプロセスを考えてください。
 実際には職場で救急車を呼ぶようなことはまれです。でも、まれだからこそ平時からの備えが必要なのです。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
和田 耕治先生


北里大学医学部公衆衛生学 准教授
2000年産業医科大学医学部卒業。臨床研修医、企業での専属産業医を経て、06年 McGill(マギル)大学産業保健修士、ポストドクトラルフェロー。 07年北里大学医学部衛生学公衆衛生学助教、09年講師、12年より現職。専門は公衆衛生、産業保健、健康危機管理、疫学。医学博士、労働衛生コンサルタント(保健衛生)、産業保健修士、日本産業衛生学会指導医、日本体育協会認定スポーツ医。著書に『保健・医療従事者のための自然災害において被災者や自分を守るためのポイント集』、『医療機関における暴力対策ハンドブック』(ともに中外医学社)など多数。

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