外反拇趾、内反小指の原因とは? マッサージや筋トレで予防

筋力・骨格の弱い女性に多く、前足部アーチが壊れた結果進行

踵の高い靴などのリスクを考え、履き替えや履いた後のケアなど、ちょっとした心がけで予防できる

外反拇趾や内反小指は、筋力や骨格など身体的問題が強く影響している

 外反拇趾や内反小指は中学生から高齢者まで幅広い年齢層に発生しています。一般的に女性に多い症状ですが、男性にも見られます。外反拇趾と内反小指は同じメカニズムで発生します。大きく分けて外的要因と内的要因があり、外的要因は靴などの環境からの影響、内的要因は身体的問題が考えられます。

 外反拇趾や内反小指というと、ハイヒールが原因と思われるかもしれませんが、そういった環境因子よりもむしろ身体的因子、なかでも筋力と骨格が大きく影響しています。一例として、外反拇趾の人の足型と足の甲を計測した結果を見てみましょう。
 足圧分布図を見ると、ただ立っているだけで(静止立位姿勢)、足第3趾の付け根に強い荷重が見られます。

 写真を見ると、足の甲は厚みが薄く、足の甲の骨(中足骨)が浮き出ているのがわかります。外反拇趾が重度になると、写真左のように足拇趾が足第2趾の上に乗ってしまうことがあります。

 この結果を参考に、外反拇趾や内反小指のリスクを推定するための1つの方法を考えます。素足になって、足の裏の足第3趾の付け根(足圧分布図の赤く荷重がある部分)にたこや皮膚が硬くなる皮膚硬結があったら、リスク群だと思ってよいでしょう。足第3趾の付け根の皮膚が硬くなっているのは“前足部アーチの低下”が原因です。

 下の図のように人間は踵、拇指球(足拇趾の付け根)、足第5中足骨頭(足第5趾の付け根)の3点で体を支えており、荷重は3:2:1の割合で加わっています。その結果、踵と拇指球で支えるので土踏まず(縦アーチ)ができ、踵と足第5中足骨頭で支えるので外アーチ(足第5趾と踵を結ぶ線のくびれ)ができ、拇指球と足第5中足骨頭で支えるので前足部アーチができます。

 前足部アーチの中点である足第3趾の付け根は本来、大きな荷重が加わらない構造になっています。そこにたこや皮膚硬結があるということは、その部分に強い荷重が加わっていることを意味します。つまり、前足部アーチが壊れていると言えます。
 前足部アーチを作っているのは、足の甲の中足骨をつなげる筋肉と骨の構造です。特に骨のアーチ構造を支えている筋肉の機能が低下すると、前足部アーチは低下します。
 その結果、足の甲にある中足骨が横に広がる開張足という状態になり、上の写真のように、前足部が下がった状態になった結果、靴などが当たり外反拇趾や内反小指が進行するというのがメカニズムの1つです。

踵の高い靴を履くことで前足部に荷重が集中し、前足部アーチが壊れる

 では、なぜ前足部アーチが壊れてしまうのでしょうか? その理由は、A:成長の過程から前足部アーチが構成されなかった、B:前足部アーチが支えきれないくらいの荷重が繰り返し加わり、それを放っておいた結果壊れてしまった、の2つが考えられます。

 Aの理由は次回以降にご説明します。今回はBに着目しましょう。
 前足部アーチが支えきれないくらいの荷重が加わる代表的な場面として、“踵の高い靴を履く”が挙げられます。当然ですが、踵が高い靴を履くと、立位中や歩行中の重心が前に置かれ、ちょうど前足部アーチの中点(足第3趾の付け根)に荷重が加わります。その荷重に打ち勝てるくらいの筋力や骨格を持っていればよいのですが、特に女性や足が細長い人は荷重に負けてしまいます。これを繰り返すことで、前足部や踵に痛みが生じ、前足部アーチが壊れていくことになります。

 考えてみれば当たり前の結果なのです。長机の真ん中に重いものを置いたり、座ったり、飛び跳ねたりすれば机自体がしなってきます。机のアーチ構造を保てないくらいの荷重を長期間定期的に加えれば、何も置かなくてもしなったままとなり、それを補修しなければ当然壊れてしまいます。足のアーチ構造も同じです。踵の高い靴や圧分散ができないような硬い靴を日常的に長い時間履いて歩くことは、長机で飛び跳ねるのと同じような衝撃を加えることを意味します。

 “ハイヒールを履くな!”とは言いません。そのリスクを考え、必要ない状況のときには履き替え、履いた後に適切なケアをすれば、リスクは最小限に抑えられます。靴文化が進んでいる欧米ではこのような考え方が一般的なようです。

足のマッサージやストレッチ、筋トレで外反拇趾や内反小指を予防

 外反拇趾や内反小指の予防のためのケアについて考えましょう。簡単にいうと(1)前足部と中足部に加えられた荷重のストレスを緩和する、(2)繰り返し加えられる荷重に負けないアーチ構造を維持できる筋力をつけることです。

 (1)の対応として、足裏や足の甲のマッサージ、特に土踏まずや前足部アーチ周辺、足の甲の5本ある中足骨の骨と骨の間のマッサージが効果的です。そして、写真のように足指を起こすなどの足裏とアキレス腱の柔軟運動がよいでしょう。

 (2)の対応として、簡単にできる運動の代表が足指じゃんけんです。足指でじゃんけんのグーを作った状態を観察してみると、足裏のアーチが高くなっているのがわかります。
 つまりグーを作る筋肉は足裏のアーチを高めるよう機能します。したがってこの筋機能が柔軟性と強さをしっかり保てば、繰り返し加えられる荷重に対抗してくれます。このようなケアはお風呂で実施すると効果的ですし、ちょっとした休憩時間にも行えます。
 グーだけではなく、足指でチョキやパーを作り、広げる方向の筋力も同時に鍛えるとよいと思います。

 足の3つのアーチは、人間が2足歩行を始めたことで発達しました。つまり、体重を支えるクッションの役割と、地面のでこぼこ(不整地)の衝撃を吸収し、安定した歩行ができるように機能しているわけです。このアーチが壊れてしまうということは、外反拇趾などの骨格の変化、足・膝・腰へ過度の衝撃が加わることによる痛みの発生、踵の骨格形成の変化などを引き起こし、さまざまな障害の原因となります。ちょっとしたことで予防ができることを知って、日々のフットケアを心がけましょう。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
山下 和彦先生


東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科准教授 
2003年東京電機大学大学院工学研究科情報通信工学専攻博士課程修了(工学博士)。03年(財)豊田理化学研究所奨励研究員、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員(11年3月まで)を経て、05年東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科講師に就任、07年から現職。専門分野は医用生体工学、高齢者福祉工学。特に身体機能計測を用いた高齢者の転倒予防指導やメディカルフットケアおよび子どもの身体発達支援、リハビリテーション支援の技術開発など。日本生体医工学会、日本生活支援工学会、日本医療機器学会などに所属。

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