毎日歯磨きしても歯周病になる-歯のケアはどこまですればいい?

むし歯や歯周病を予防するブラッシングやフロッシングのコツ

日々のセルフケアと定期的なプロフェッショナルケアで、一生自分の歯で食べよう

毎日歯磨きしているのに、歯周病の人が多いのは?

 頑張って歯磨きをしているはずなのに、ふと気がついたときに歯がしみたり、歯茎がはれたり、歯茎から血が出たりします。
 日本では、毎日2回以上歯磨きをしている人の割合が7割を超えています。しかしながら、歯周病に侵されている割合は、20歳台で10%超、30歳台で20%超、40歳から55歳にかけて徐々に増加し、55歳以上では40%以上が歯周病という現実があります。
 この原因の一つに、デンタルフロスや歯間ブラシなどの歯間部清掃具を使用している割合が39%と、米国の74%と比較してかなり低いことがあげられます。

 歯周病は、食べ物を噛めなくなったり口臭が発生したりと、口腔環境を悪化させるだけでなく、最近では、心疾患のリスクや低体重児出産のリスクが高まるなど、全身疾患にも影響を及ぼすことが報告されています。

歯周病を予防するセルフケア(プラークコントロール)のコツ

 むし歯や歯周病の予防には日頃からのセルフケアが大切。そのセルフケアとして大変重要な位置を占めているのがプラークコントロールです。プラークコントロールとは、歯や口腔の健康の保持・増進や、むし歯や歯周病などの発生予防のために、歯や口腔を清掃し清潔にすることです。特にむし歯と歯周病の共通した病原菌であるプラーク除去の有用性は、科学的に証明されています。
 プラークとは「歯肉縁の上下に群がる細菌の、無定形でネバネバした粘着性の塊」の総称です。プラークの中の細菌がむし歯の引き金となる酸や、歯周病を引き起こす毒素を生成します。
 このプラークを除去するブラッシングやフロッシングなど、毎日のセルフケアのコツをみていきましょう。

●ブラッシング(歯磨き)のコツ
(1)歯ブラシの選択
 手用歯ブラシの選択基準は年齢や口腔状態によって異なりますが、重要なポイントは歯ブラシのヘッド(頭部)部分の形態とサイズです。ヘッド部分がある程度小さく奥歯のすみずみまで清掃しやすいものがおすすめです。
 硬さについては、歯周病が重症だったり、薬物による歯肉増殖症などで歯肉に痛みがある場合は軟らかめをすすめますが、通常は「普通」か「やや硬め」をすすめます。握り方はペンを持つように握るのが基本で、高齢者には、把持部が太めのものが持ちやすく人気があります。

(2)ブラッシングの順序
 基本的には、歯を2本ずつ磨くつもりで、磨き終わったら次の2本というように順番にずらしながら、歯列をぐるりと一周するように磨くと、磨き残し部分がなくなります。また、磨きにくい部位や、いつも磨けていない部位から磨き始めるようにするのもよいでしょう。

(3)磨き方
 歯肉の状況や部位によって、異なる磨き方をすることが大切です。健康な歯に対しては、毛先を歯面に垂直に当て、弱く加圧し、小刻みに横に動かすスクラッビング法がおすすめです。また歯周病の場合は、毛先を歯軸に対して45度の角度で、歯と歯肉の間の溝に少し毛を挿入して、数ミリの範囲で小刻みに振動させるように動かすバス法がおすすめです。

(4)歯ブラシの保管
 歯ブラシの使用後は流水下でよく洗い、口腔細菌と食べかすをしっかり取り除きます。そして、頭部を上にして風通しのよいところに保管してください。1カ月に1度を目安に交換してください。

●デンタルフロスによるフロッシングのコツ
 デンタルフロスは、歯ブラシの毛先が届きにくい歯と歯の間のプラークを除去します。ブラッシングでは58%しか取り除けなかった歯と歯の間のプラークが、デンタルフロスを使用すると約86%まで取り除くことができます。
 デンタルフロスにはいくつかのタイプがあります。ワックスが塗ってあるワックスタイプと、塗られていないアンワックスタイプでは、アンワックスタイプのほうがプラーク除去効果が高いのですが、歯間部に挿入しにくい場合はワックスタイプがおすすめです。また、持ち手がついたホルダー型のフロスは使い方が簡単なので、初めて使う人や手指の動きがうまくいかない人などに効果的です。ただし、指に巻いて使用するデンタルフロスのほうがプラーク除去効果は高いです。

 フロッシングの注意点としては、指と指の間のフロスの間隔が広すぎると、フロスが歯間部に勢いよく入って歯間乳頭部(歯と歯の間の三角形の部分の歯肉)を傷めやすいので、2cm程度の間隔にし、ピンと張った状態でのこぎりを引くように前後させながら歯の接触点の下へ挿入し、うまく接触点を通過したら今度は歯面に沿わせて歯と歯肉の間の溝へ少しだけ挿入し、ピンと引っ張った状態で上下へ3~5回ストロークさせてください。

●歯間ブラシの選び方など
 歯間ブラシは、ある程度歯と歯の間に隙間がある人に適しています。歯と歯の間に優しく入れて2~3回往復させるだけなので簡単に使用することができます。歯の隙間の大きさはそれぞれ異なりますので、隙間に合った大きさの歯間ブラシを選択することが大切です。歯間ブラシは古くなると歯肉を傷つけてしまうので、まめに交換してください。

 初めて歯間ブラシを使用する場合は、歯と歯の間の歯肉に炎症があるため、たいてい出血しますが、数回使用しているうちに炎症が治まり出血しなくなります。フロッシングと異なり歯間ブラシでは歯肉のマッサージ効果があるので、重症の歯周病の人はなるべく頻回に、できるだけ毎食後使用してください。

●洗口液によるマウスウォッシング
 お口の中の細菌は歯の表面だけでなく、舌や粘膜、咽頭などにも付着しています。ブラッシングやフロッシング、歯間ブラシを使用した後、殺菌力のある洗口液でうがい(化学的プラークコントロール)することによって、むし歯や歯周病を効果的に予防することができます。また、口臭予防や感染症予防にもつながります。
 ブラッシングやフロッシング、歯間ブラシにマウスウォッシングを加えると、プラーク指数が56.3%減少し、歯肉炎指数も29.9%減少がみられるという報告もあります。日頃のセルフケアにうまく組み入れてください。

かかりつけの歯科医を持ち、定期的なプロフェッショナルケアを受けよう

 あなたはかかりつけの歯科医を持っていますか?いつでも相談にのってくれるような歯科医師や歯科衛生士が身近にいたら安心ですよね。
 歯(口腔)の予防処置に併せて、歯口清掃、喫煙や食生活等に関する保健指導を受けることによって、さらに予防効果は上がるといわれています。自分に合った的確なアドバイスをしてくれるかかりつけの歯科医を持ちましょう。

 歯の病気は自覚症状を伴わずに進行することが多く、特に歯周病はある程度進行しないと自覚できるような症状が出てきません。発見したときには外科手術などの治療が必要となったり、歯を残せなくなってしまうこともあります。むし歯や歯周病も早期発見が大切です。定期的に歯科検診を受けてチェックしてもらうとよいでしょう。

 また、むし歯や歯周病の予防には定期的なプロフェッショナルケア(歯石除去やPMTCなど)が不可欠です。ブラッシングやフロッシングなどのセルフケアだけでは100%プラークを除去することは難しく、そのときの免疫力や生活習慣によってもお口の中の健康は変化します。
 研究データでも、定期的にプロフェッショナルケアを受けることにより歯の喪失を防げることがわかっています。5年間の観察で、定期的に歯石除去などを受けたグループの1人平均喪失歯数が0.37本であったのに対して、受けなかったグループの喪失歯数は1.39本であったと報告されています。5年間で3.8倍も違うのです。

 前述したように、お口の健康は全身の健康にもつながります。ぜひ定期的にお口の中をきれいにしてください。
 定期的な検診やプロフェッショナルケアの頻度や間隔については、年齢、性別のほか歯の状況や生活習慣、細菌リスクなどにより一人ひとり異なりますので、自分に合ったケアや方法を歯科医師や歯科衛生士に確認してください。

 日々のセルフケアと定期的なプロフェッショナルケアで、一生自分の歯でおいしいものをバランスよく食べられるように願っています。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
鈴木 路子先生


デンタルクリニックアレーズ銀座 歯科衛生士
日本大学松戸歯学部附属歯科専門学校卒業後、都内のホテル内歯科クリニックにて予防歯科医療に携わる。2007年に日本抗加齢医学会指導士を取得し、口の健康が全身の健康につながるという信念のもと、デンタルクリニックアレーズ銀座にて予防歯科サービスに加え、栄養・運動指導等の歯科保健指導、サプリメントのアドバイスを実践。日本抗加齢医学会(指導士)、ドライマウス研究会(指導士)、日本抗加齢歯科医学会、日本臨床歯周病学会、日本口腔衛生学会などに所属。研究論文に「口腔状態良好な高齢者のQOLは良好である:千葉市(日本)における8020運動達成者の口腔健康診断とアンケート調査結果」がある。

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