高齢期の住宅リフォーム失敗しないための7つのポイント

リフォームを考えるうえでの大切なポイントを紹介

住み慣れたわが家で最後まで自分らしく暮らすためには、心身の変化に応じた住環境整備が必要です

高齢期には体に合わせて住環境を整えるという視点が必要

 住まいは暮らしの拠点です。高齢になったからこそ住み慣れた地域に、愛着のある自宅に、長く安心して住み続けたいと願う人は多いでしょう。ところが、加齢により身体機能が低下したり介護が必要となると、住み慣れた住まいにも不便や危険が生じることをご存知でしょうか。
 高齢者の死亡原因では、家庭内事故が交通事故よりも多くなっています。「退院といわれても自宅では生活できない」「お風呂やトイレで転倒しかけた」などの声をよく耳にしますが、危険な箇所をそのままにしておいては、自宅で転倒・転落したり、入浴中に溺れるなどの事故につながる可能性があります。

 長年暮らしていると、住宅に大きな手を加えるという発想は起こりにくいものですが、高齢期には体に合わせて住環境を整えるという視点が必要になります。今回は高齢期の暮らしの拠点である住まいの住環境を整えるリフォームのポイントについてご紹介しましょう。

高齢期の住環境を整えるリフォームのポイント

ポイント1:リフォームの目的は安全でその人らしい暮らしの実現です
 介護を受ける人と介護をする家族が安全で快適に暮らせることが最も大切なことです。リフォームの目的は、ADL(日常生活動作)を一人で行うことではなく、人の手を借りたり福祉用具を活用しながら、なるべく自立した生活を可能にするための住環境整備を行うことです。
 また、介護の視点だけでなく、「自宅で家族や友人と語らう」「いつも清潔にしてお洒落を楽しむ」「好きな音楽や映画をゆったり鑑賞する」「行きたい場所へ外出する」など、リフォームはその人らしい快適な暮らしを実現することにつながります。

ポイント2:それまでの生活環境の把握がキーワード。住まいと体を見直してみましょう
 高齢者の場合、本人自身から要求が出てこないケースが多くみられます。しかし、最近入浴回数が減ったなどの変化に対して日常の生活動作を細かく観察してみると、寝室から浴室までの移動や浴槽への出入りの困難、浴室・脱衣室の寒さなど、さまざまな問題点が見えてきます。どの場所でどの動作を行うこときに問題があるのかを明らかにしていくことにより、必要な対応がわかってきます。
 リフォームを考えるときは、わが家の状況をよく知り、そこで暮らす自分たちをよく知ることです。

ポイント3:介護保険制度の「住宅改修費の支給」を利用しましょう
 住宅リフォームは費用面でもかなりの負担になるだけに、失敗なく適切に行いたいものです。状況を整理し、建築や介護の専門家と相談しながら進めましょう。
 介護保険では在宅の要介護者、要支援者が生活するために必要な住宅改修の費用が支給されます。支給上限額は20万円で本人負担は1割。残りの9割(最高で18万円)が償還払いで支給される仕組みです。利用は原則1回ですが、引越しや要介護度が3以上上昇した場合には、再度支給が受けられます。支給対象となる住宅改修の種類は次の6種類。利用には工事前の市区町村窓口への申請が必要です。

ポイント4:まずは専門家に相談しましょう
 要介護者を抱える家庭でより適切な住環境整備を行うためには、建築・介護・医療などの総合的な専門知識が必要とされます。はじめの一歩はケアマネジャーや地域包括支援センターにご相談ください。そのほかの相談者としては、理学療法士、作業療法士、バリアフリーに詳しい建築士、福祉住環境コーディネーターなどが挙げられます。基本的にはリフォーム会社は指定されていませんが、登録制度を設けリストを作成している市区町村もあります。事業者を選ぶ際は慎重に、実績があるか、専門家がいるかなどを尋ねるとよいでしょう。

ポイント5:介護保険以外の公的な援助も上手に活用を
 介護保険以外にも、お住まいの自治体で高齢者の住宅リフォームのための助成金などが受けられる場合があります(例:介護保険による住宅改修費の支給と併せて、市区町村の高齢者住宅設備改修助成事業による浴槽の取り替え、便器の洋式化を活用など)。助成の内容や金額は市区町村によって異なりますので、お住まいの市区町村の窓口や社会福祉協議会などに事前に確認しておくとよいでしょう。

【参考Web情報】
「住宅リフォームガイドブック(国土交通省住宅局)
一般社団法人リフォーム推進協議会
「地方公共団体におけるリフォーム支援状況」(国土交通省)

ポイント6:住まいの整備は総合的な視点で行いましょう
 住環境を整える手段はリフォームだけではありません。住環境整備は住宅リフォーム(ハード)、福祉用具(モノ)、介護サービス(ヒト)の3つの視点から総合的に行います。たとえば自宅での入浴が困難になったとき、介護保険制度の住宅改修費支給を利用して浴室内の手すり取り付け(縦・横・L字形など)や浴室扉の引き戸への交換、浴室の床のかさ上げ(段差解消)などが可能ですが、たとえば段差解消には福祉用具にあたる「すのこ」を使用すると費用が安くすみます。また、シャワーチェアやバスボードなどの福祉用具を活用したり、訪問介護や訪問入浴などの介護サービスを利用するという方法もあります。さらに、デイサービスに通って入浴サービスを利用するという選択肢もあります。
 リフォームといってもそのスタイルは十人十色。体の状態や日常生活の動線、福祉用具、介護サービス、住宅の構造、介護者の暮らしなど総合的に勘案したプランニングが必要となります。

 最後に、私の実家で行ったリフォームについて簡単にご紹介します。父に介護が必要となったことをきっかけに、郷里で暮らす両親の住まいをリフォームしました。寝室は2階から1階に移動して電動介護ベッドを導入しました。居間と食堂の間の扉を除去してワンルームとし、トイレ、浴室、居間、寝室の動線をコンパクトにまとめました。入浴や整容が大好きな父のために、浴室、洗面所、トイレは居心地の良さを中心にリフォームしました。浴槽の交換、扉を引き戸へ、手すりの取り付け、洗面台、便器の交換、床材の変更などです。
 このリフォームにあたっては、家族で展示場に足を運んで実際を体感し、ケアマネジャー、リフォーム事業者、家族全員が集合して何度か話し合いを持ちました。情報収集、選択の連続で大変でしたが、リフォームは大成功。父は杖を使う生活となり、生活の範囲は小さくなりましたが、一人で入浴、排泄、食事、移動が行え、穏やかに過ごしています。家族も、古くなっても愛着のある我が家に手を加えながら住み続けられる幸せを感じています。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
川上 由里子先生


ケアコンサルタント
ケアマネジャー、看護師、産業カウンセラー、福祉住環境コーディネーター2級。1984年より13年、大学病院、高齢者住宅(聖路加レジデンス)などで看護師として勤め、三井不動産(株)ケアデザインプラザの立ち上げに参画。現在はUR都市機構や各企業の高齢者、介護関連のアドバイザーとしても活躍し、シニアライフに関するコンサルティングの他、講演、執筆も多数。高齢者支援のみならず、支える人を支えるメッセージを各方面に発信している。希望は心と心を結ぶケアを広げていくこと。著書に『介護生活これで安心』(小学館)。2008年より自身も父親の遠距離介護を体験中。

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