足の爪を健康で美しく保つ-感染の予防と良い爪を育てる決め手

入浴時のセルフケア、専門的な足爪ケアの効果を紹介

清潔を保つセルフケアで最も重要なのは皮膚や爪を傷つけないこと。自分の手に負えないときは専門的なケアを

感染予防のための足爪のセルフケアは、足指と爪を清潔に保つこと

 前回の「フットケア4 足爪の変形や変色」では、足爪の機能(役割)とそれに基づく足爪の切り方について説明しました。今回はそのほかの足爪ケアについて説明します。日本には四季があり、季節の移り変わりを感じることができる反面、梅雨や夏場のじめじめした季節には細菌の繁殖を防ぎ、冬場の乾燥した季節には爪周辺の傷を防ぐなど、それぞれに応じた注意が必要です。

 また季節を問わず、足爪のケアで気をつけたいのは次の3点です。
(1)爪の切り方
(2)感染の予防
(3)健康でよい爪を育てること

 このうち(1)については前回、適切な長さと形について説明しました。(2)は、爪白癬(爪の水虫)の予防が挙げられます。(3)は、爪への適切な刺激とケアによる健康な爪の維持にポイントがあります。

 (2)の「感染の予防」のためのケアを1例紹介します。白癬菌は爪と皮膚の間に入り込み、少しずつ爪の内部に侵入し、増殖していきます。白癬菌は爪の成分であるケラチンを栄養にして増殖するため、白癬菌の戦略として、爪を厚くして環境を整えています。そうさせないためには、爪と皮膚の間をいつも清潔に保つことが重要です(図1 矢印)。
 清潔を保つ方法はさまざまですが、セルフケアの1例として、入浴時に足指や爪に泡立てた石けんをつけてよく洗います。特に足爪の両サイドの部分は汚れがたまりやすいため、しっかりチェックしましょう。
 また、巻爪の人は、爪が巻き込んでいる部分にたくさん汚れがたまっています。これを取って清潔を保つことは、巻爪のケアにも役立ちます。

 このケアで最も重要なのは、皮膚や爪を傷つけないことです。足先は体の末端のためもともと血流が悪くなりやすく、ちょっとした傷がもとで細菌に感染して化膿したり、それが悪化して皮下組織が腐ってしまう壊疽(えそ)を引き起こすことも十分に考えられます。そのため、足指や爪を洗うときは柔らかい歯ブラシや豚毛のブラシなどを使って優しくていねいに行い、傷をつけないように十分注意しましょう。
 なかでも糖尿病やその予備群の人は、特に傷を作らないよう注意が必要です。糖尿病になるとさらに血流が悪くなり、傷の回復も遅くなるからです。糖尿病の合併症の1つである神経障害が進むと、傷や痛みに気づかず、重大な感染や壊疽を引き起こし、足部の切断に至ることもあります。

健康でよい爪を育てるためのセルフケアは爪母が決め手

 次に(3)の「健康でよい爪を育てる」ためのケアについて述べます。足爪は根本から足指の先端に向かって生えていきます。爪が生えるメカニズムとして、図2のAの位置で爪が作られ、順次前に押し出されて、新しい爪に置き換わろうとします。Aの爪を作る部分を爪母(そうぼ)と言います。爪母は3層構造になっており、爪の表面の硬い成分、爪の中間成分、爪を爪床(そうしょう:爪の下の皮膚)にくっつける成分を作りだしています。そのため、足爪も3層構造になっています。

 爪は爪母細胞から作り出されるため、爪母細胞の機能を高めることが、爪のよい状態を維持することにつながります。それには、酸素と栄養に加え、適切な刺激で血行をよくすることが必要です。Aの部分をお風呂で優しくマッサージしたり、足指をよく動かすとともにストレッチをすると血流が維持され、よい刺激も加わります。
 Bは足爪と皮膚の境目で、側爪郭(そくしょうかく)と言います。いわば爪がまっすぐ伸びるための道路ですから、ここにタコがあったり、ささくれて傷があると問題の原因になります。そこで、ここも優しくケアしましょう。側爪郭などの爪と皮膚の境目には、白癬菌などの侵入を防ぐ大事な機能があります。傷は感染の要因にもなりますから、十分に注意をしたいところです。

 前回の爪の切り方で、深爪のよくない理由を解説しましたが、逆に伸びすぎた爪もよくありません。伸びすぎた爪は、爪の先端にさまざまな方向から力が加わり、それを受けとめるのは爪母や側爪郭になります。そのため、細胞や道路自体に長期間、あるいはスポーツなどによる強度のダメージが加わると、気がつかないうちに痛みや変形の要因となってしまいます。
 ここまで述べたようなケアを日常的に行っていると、「何かおかしい」というレベルのタイミングで気がつくことができます。問題が小さいうちに気がつかないから大きな問題に発展するわけで、適切な気づきを日常生活の中で得ることが重要です。

セルフケアでは効果が得にくいときは、専門的なケアに任せるのもよい方法

 図1のように爪が厚くなる肥厚(ひこう)と巻爪がある状態では、上記のようなセルフケアでは効果が得られにくく、爪の厚みや巻爪が大きく改善することはありません。そこで、専門的なケアによる効果について調べました。メディカルフットケアJF協会の協力を得て、図1の女性(後期高齢者)に1年間、形や厚みを整えるケアを行ったところ、図3のように、爪の厚みと巻爪部分が解消しました。

 図4は、ひどい巻爪が見られるケースです。ケア前(図4上)に爪と皮膚の間の掃除をしたところ、大量の汚れが出てきました。その後、継続的に9カ月のメディカルフットケアを実施し、厚みと形を整えました。巻爪はおおむね解消されているのがわかります(図4下)。

 このように肥厚がひどく爪切りができない、巻爪で手がつけられないといった場合には、メディカルフットケアJF協会など、専門家の協力を仰ぐのも一つの方法です。また最近は、皮膚科でもフットケア外来を設ける施設が増えてきています。病院ではまだ糖尿病を対象としたケアが多いかと思いますが、なかには図3、4のケースような積極的なケアを行えるところもあり、日本全国に広がりつつあります。
 どの医療施設やフットケアの支援者が、どのような成果を挙げているかは、十分にチェックしてください。このような科学的な視点を持った市民が増えると、医療施設が医療の質の改善に努め、よりよい活動が広がり、足部に問題のある人を救うことにもつながりますので、よい眼を養ってください。

 今回は足爪のケア方法と専門的なメディカルフットケアによる足爪の変化について述べました。これらのケアは、高齢者の活動や転倒予防にも実は密接につながっています。
 次回は子どもの外反母趾ついて述べたいと思います。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
山下 和彦先生


東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科教授 
2005年東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科講師、07年准教授を経て、13年から現職。専門分野は医用生体工学、高齢者福祉工学。特に身体機能計測を用いた高齢者の転倒予防指導やメディカルフットケアおよび子どもの身体発達支援、リハビリテーション支援の技術開発など。日本生体医工学会、日本生活支援工学会、日本医療機器学会などに所属。

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