子どもの足のトラブル-外反母趾や巻爪、踵の変形の原因は?

子どもに外反拇趾が増えている。予防のために必要な支援とは

足は体を支える土台。足部の健やかな発達のため、子どもの足に関心をもち、支援してほしい

子どもの足は軟骨でできている。硬い骨に変わるプロセスで必要なのは刺激と栄養

 子どもの足部の問題が急増しています。なかでも、外反拇趾が多くの子どもに見られます。外反拇趾の要因は骨と筋肉にあります。まず、子どもの足部の発達のメカニズムをみていきましょう。

 小さな子どもの足部の骨格は、ほとんど軟骨で構成されています。それが成長とともに硬い骨に変わっていき、20歳になるころまでには大人の硬い骨が完成します。軟骨が硬い骨に変わるプロセス(骨化という)で必要なものに、(1)刺激(運動などによる機械的刺激)と(2)栄養が挙げられます。

 (1)について細胞レベルで考えると、骨芽細胞という骨を作る細胞が、押されるなどの機械的刺激を受けると、細胞の周りにコラーゲンなどの物質を分泌し、骨化が進みます。このことから、歩いたり走ったりすることで、骨格を構成する軟骨に力を加える必要があることがわかります。
 (2)の栄養の切り口からは、細胞が効率よく骨を作るためには、骨の形成を促すたんぱく質やカルシウムなどの栄養素が求められます。骨の形成のためにも、栄養バランスのよい食事をとることが大切です。

 ここで骨の役割について考えてみましょう。骨は体を支える土台であり、人間が重力に逆らって立ったり、歩いたりするために必要なものです。しかし骨の機能はそれだけではありません。骨はリン酸カルシウムという物質で作られています。つまり骨はカルシウムの貯蔵庫なのです。
 一方、カルシウムは人間が生きる上で欠かせない物質であり、血液中のカルシウム濃度が不足するとさまざまな問題が生じます。そのため、血中カルシウム濃度が低下すると、骨を溶かしてでも不足分を補おうとします。食事の影響でカルシウムが不足すると、骨の成長よりも生命の維持が優先されることから、骨の成長が不十分になることが推測できるのです。

外反拇趾は小学校高学年のころから、特に女子に急速に増えている

 図1は子どもの外反拇趾の一例です。厳密にはレントゲンなどから診断する必要がありますが、大まかには、図1に示したように足の甲にある骨(第1中足骨)を延長した線と拇趾の骨(第1末節骨)の角度(外反角)が20度以上であれば外反拇趾と考えられます。図1左は外反角が20度以上であり、図1右はそれに加えて拇趾の付け根が強く出っ張っており、靴などが当たっていることが伺えます。

 さて、子どもの外反拇趾はどのくらいの割合で発生しているのでしょうか? 先行研究では、中学生の男子の約50%、女子の約60%に外反拇趾(疑いを含む)が見られたと報告されています。私たちの調査でも、小学生の高学年になるころ、特に女子に、外反拇趾の傾向が急速に強まることがわかっています。

 外反拇趾が発生する理由は何でしょうか。これまでにも述べてきたように、足部には、縦アーチ(土踏まず)、横アーチ(拇趾球と第5中足骨をつなぐ前足部アーチ)、外アーチ(第5中足骨と踵をつなぐ外側のアーチ)の3つのアーチがあります(『フットケア3 外反拇趾、内反小指』)。このアーチを支えているのは骨と筋肉です。子どもは骨格がまだほとんど軟骨で、筋肉の発達も十分でないため、このアーチの構成を乱すような外力などが継続的に加えられることで外反拇趾が発生します。

外反拇趾を発生させる内的因子は足部の筋力と骨の並び方、外的因子は靴とスポーツ

 子どもの外反拇趾が発生する、あるいは外反拇趾を進行させる内的因子は、足部の筋力と足部を構成する骨の並び方(アライメント)です。図2は子どもの踵(かかと)の写真です。踵のラインが外側を向いていることがわかります。この状態を踵骨(しょうこつ)外反あるいは外反扁平足と呼びます。これが外反拇趾の大きな原因となります。
 外反扁平足になると、足首が内側に倒れることで、縦アーチ(土踏まず)や横アーチを低下させます。さらに靴などに拇趾の付け根が強く当たることで図1のような状態へと進行していきます。
 したがって、発達過程で求められることは、足部を構成する3つのアーチをしっかり支える筋力を鍛え、足部の骨格(アライメント)を支えることです。運動の指導や日常的なケアなどの支援を行うことで、外反拇趾になりにくい足をつくっていくことができます。

 次に、外反拇趾にかかわる外的因子で最も影響が大きいと考えられるものに、靴が挙げられます。なぜ小学校高学年の女子に外反拇趾の傾向が急増するのでしょうか?
 考えられる要因は2つあります。1つは皆さんの予想通り、おしゃれな靴などの履物の影響が挙げられます。小学校高学年くらいになると、踵の高い靴やサンダルを履く女子が多くなります。また、少し大きめの靴を履くと、歩行中に靴の中で足が動き、足部に変則的な力が加わることで変形を促進し、さらに拇趾の付け根に強い荷重を加えることになります。

 もう1つの外的因子はスポーツです。小学校高学年になってくると男女を問わず、さまざまなスポーツに熱中します。靴の有無にかかわらず、スポーツは足部によい影響を及ぼす一方で、対策が必要なこともあります。もちろんスポーツは心身に有益ですので、ぜひとも取り組んでほしいと思います。一方で、足部の発達のためには、適切なケアや靴選びなどにも、保護者には配慮をお願いしたいと思います。

 具体的なケアとして、(A)足指の運動による筋力の向上、(B)足裏のマッサージなどによる筋肉の柔軟性向上や刺激対策、(C)足爪の切り方、(D)適切な靴選びが挙げられます。足爪の切り方の具体的な方法はこれまでにも述べてきました(『フットケア4 足爪の変形や変色』)。

 図3に子どもの足爪の変形の一例を挙げました。図3は深爪傾向であり、拇趾の先端が盛り上がってしまっています。お子さんが靴を履いて遊んだ後に、素足の状態を観察してみてください。足指が赤くなっていたり、足指が丸まっていたり、足爪の色が変色していることはよく見られます。外反拇趾になってから直すのは大変です。お子さんの足をよく観察し、問題が大きくならないうちに上記のようなケアで対処しましょう。

 子どもの足部の成長を応援することは、一生の宝物をプレゼントすること。それは外反拇趾の予防だけでなく、体を支える土台を作ることにもつながります。ぜひ子どもの足に関心をもち、健やかな発達のために気づかってあげてください。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
山下 和彦先生


東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科教授
2005年東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科講師、07年准教授を経て、13年から現職。専門分野は医用生体工学、高齢者福祉工学。特に身体機能計測を用いた高齢者の転倒予防指導やメディカルフットケアおよび子どもの身体発達支援、リハビリテーション支援の技術開発など。日本生体医工学会、日本生活支援工学会、日本医療機器学会などに所属。

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