超高齢社会の課題解決に期待されているICT活用ってなに?

実践が進む電子カルテの共有や個人の健康データの蓄積

スマートフォンやタブレット型携帯端末の普及で、個人の健康・医療・介護データの一括管理が可能に。

「在宅医療+地域コミュニティーの創意工夫を活かす」をテーマに

 今日のスマートフォンやタブレット型携帯端末の普及により、医療情報や医薬情報の取得はもちろん、個人の健康情報の蓄積、電子カルテの共有などを可能とするモバイルへルスケアに大きな期待が寄せられています。
 そんな中、先般、「ITヘルスケア第7回学術大会」(学会会長:大阪市立大学大学院医学研究科准教授・中村肇氏/実行委員長:医療法人社団至高会理事長・高瀬義昌氏)および「モバイルヘルスシンポジウム2013」(実行委員長:国立保健医療科学院研究情報支援研究センター上席主任研究官・水島洋氏)が、東京医科歯科大学を会場に同時開催されました。(「至高会」「高瀬」の「高」は、「はしごだか」、以下同様)

 高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)21%以上の社会を「超高齢社会」といい、日本は2007年(平成19年)に21.5%となった段階で、すでに超高齢社会を迎えました。2012年10月1日現在で、日本の65歳以上の高齢者人口は3,079万人。高齢化率は24.1%であり、人口・割合ともに過去最高を記録(「平成25年版高齢社会白書」:内閣府)。
 上昇傾向は今後も進み、「団塊世代」(1947~1949年に生まれた人)がすべて65歳以上となる2015年(平成27年)には、高齢者人口は3,395万人を超え、さらに75歳以上(後期高齢者)となる2025年(平成37年)には高齢者人口は3,657万人、高齢化率は30.3%と推計されています。今から10年あまりで、日本の総人口の3人に1人が高齢者という社会に突入します。

 この状況を受けて今回のITヘルスケア学術大会およびモバイルへルスシンポジウムでは、「在宅医療+地域コミュニティーの創意工夫を活かす」がメインテーマとして掲げられました。
 その理由を、ITヘルスケア第7回学術大会実行委員長の高瀬義昌氏は「医療分野においては急性疾患から慢性疾患に疾病構造が変化し、介護を中心とした福祉分野のニーズがますます高まることが予想され、介護予防からターミナルケア(終末期ケア)までを含めた高齢者介護が必要になります。また独居高齢者の増加や団塊世代の“高齢化と多死の時代の到来”にどう対応するのかも重要で、日本は大きな課題を抱えています。
 この“2025年問題”といわれる社会を見据えて、医療ケア・介護ケアのあるべき姿を考えると、“在宅医療と地域コミュニティー”を中心に生活エリアを再構築することが重要になります」と述べました。
 ちなみに、「モバイルヘルスシンポジウム」は、IT ヘルスケア学会の中に設けられた「移動体通信端末の医療応用に関する分科会」を中心に、ヘルスケアモニタリング、WEB利用による医療情報・医薬情報の有効な活用など、先行事例を紹介するシンポジウムとして 2010 年から開催されているものです。

患者も見ることができる電子カルテ、CG動画で患者に説明、パーソナルヘルスレコードの応用

 ICT (Information and Communication Technology:情報通信技術)による地域医療連携、健康クラウドサービスを活用したコミュニティーでの健康サポート、超高齢社会におけるヘルスレコードの意義などを、実践例を交えながら多くの発表があった中、いくつかをご紹介しましょう。

 医療法人鉄蕉会亀田総合病院理事長の亀田隆明氏は、「電子カルテを基盤とした社会システムデザイン」と題して発表し、1995年に開発・導入した電子カルテの今日における活用の展開を紹介しました。
 亀田総合病院グループの亀田メディカルセンターでは、2002年にWEBを活用した「PLANET」というシステムを開発しました。このシステムを利用すれば自宅、周辺の診療所、福祉施設、行政施設、亀田総合病院の個室病棟などのパソコンから、自分のカルテを見ることができます。
 また、国が導入を考えている「マイナンバー制度」(国民一人ひとりに固有の番号を割り当てて、徴税と社会保障給付に活用する共通番号制度)に先がけ、2009年からは、鴨川市と亀田総合病院、亀田健康保険組合との共同で、「鴨川市社会保障カード」のネットワークを構築し、住民がパソコンから、受診情報、健診情報、医療保険の資格、年金情報などを参照・確認できるシステムを運用していることを紹介しました。

 一方、「患者参加医療を実現する革新的ICT活用」と題して発表した宮川一郎氏(習志野台整形外科内科院長)は、病気の内容や治療法などを患者に説明するためのCG動画を制作し活用していると発表。患者の理解度向上と不安解消、患者と医療従事者とのコミュニケーション向上に有益だと述べました。
 また、業務の効率化を図り、待ち時間を短縮化するために、タブレット端末を用いた問診票を、電子カルテと連動させて活用しているとも述べました。

 「つくば健康づくりプログラムICT健康サポート事業~事業成果報告~」と題して発表した守田典広氏(NTTレゾナント株式会社)は、茨城県つくば市(健康増進課)、筑波大学病院、市内3フィットネス施設が連携して取り組んでいる「つくば市ICT健康サポート事業」について発表。ICTを活用した血圧計や歩数計から得られたデータを、パーソナルヘルスレコード(個人の健康情報の記録)として開発した「gooからだログ」を中継して、医療従事者や保健師などが用いているパソコンの管理画面に反映されるというシステムを開発し、住民の健康管理や参加者同士のコミュニケーションづくりに役立てているという事例を紹介しました。

高齢者が安心して暮らし続けられる社会に貢献するICTの発展と活用

 ITへルス学会「移動体通信端末の医療応用に関する分科会」の会長であり、「モバイルヘルスシンポジウム2013」の実行委員長の水島洋氏(国立保健医療科学院研究情報支援研究センター上席主任研究官:写真前出)は、「高度情報通信ネットワーク社会を取り巻く環境は大きく変化し、移動体通信端末(スマートフォンやタブレット型携帯端末)の普及により、医療・介護領域のシームレスな連携が実現可能となっています。また、ネットワーク上に情報システムを構築するクラウドの普及も進み、移動体通信端末との連携によって大規模なシステム構築が可能で、今後、ますます移動体情報通信ネットワークの活用への期待が大きくなります」と述べました。

 超高齢社会においては、高齢者が住み慣れた地域で、安心して暮らし続けることができ、「健康寿命の延伸」を実現できるよう「医療・介護・予防・住まい・生活支援サービス」が切れ目なく提供できる社会の構築が求められます。
 保健と医療、医療と介護、患者と医療従事者、病院と診療所、住民と地域などなど、総合的な連携とその基盤構築は必須であり、こうした課題の解決にICT(情報通信技術)の発展と活用が大きく貢献すると言えるでしょう。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
高瀬 義昌先生


医療法人社団至高会理事長
1984年信州大学医学部卒業。2012年東京医科大学大学院修了、医学博士。信州大学医学部卒業後、麻酔科、小児科研修を経て、以来、包括的医療・日本風の家庭医学・家族療法を模索する中、民間病院小児科部長、民間病院院長などを経験。2004年在宅医療を中心とする「たかせクリニック」を開業。認知症などの画像解析、社会ソリューションを学ぶため、東京医科大学茨城医療センターで外来診療を行っている。ITヘルスケア学会常任理事、日米医学医療交流財団専務理事なども兼務。主な著書に『はじめての認知症介護』『介護のための医学知識ハンドブック』『認知症の治療とケア』などがある。

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