働きやすい職場づくりとは-協力し合うと生産性が上がるのは本当か

協力して生産性を上げる職場づくりはメンタルヘルスにも有効

協力し合う職場環境づくりのために、すぐにやるべき具体的行動を明らかにするアクションチェックリスト

「協力し合い、生産性を上げる組織づくり」が職場のメンタルヘルスを守る

 職場におけるメンタルヘルスは、企業にとっても、労働者にとっても大きな課題です。現在日本では、うつ病などのメンタルヘルス関連疾患で休職している人が100人に1人程度いると言われています。
 こうした背景の要因としては、個人の要因(ストレスへの耐性や、プライベートの課題など)もありますが、職場のストレスが以前より大きくなったことが考えられます。たとえば、業務の効率化により、少人数で多くのことをこなさなければならなかったり、仕事そのものの難易度も高くなっています。

 筆者は、専属または嘱託の産業医として労働者の健康を守るための改善にかかわってきました。また、近年は多くの医療機関の組織改善にかかわるなかで、「協力し合い、生産性を上げる組織づくり」が、職場のメンタルヘルスを守るためにもキーワードになると考えています。
 協力し合い、生産性を上げる組織づくりを行うためには、企業のトップが方針を示すなどの対応が必要となります。すでに言葉としては企業のトップも言っているかもしれませんが、それだけでは不十分です。職員一人ひとりの具体的な行動に落とし込む必要があります。
 しかしながら、企業によって文化はさまざまであり、さらにやるべきことも同じではありません。そのため具体的かつ実践可能、そして今日からでも開始できる行動を明らかにしなければ、方針だけ示しても改善に向かいません。こうした状況において用いることができるのが「アクションチェックリスト」という形式です。

アクションチェックリストで、今日からできる改善点が明らかに

 アクションチェックリストは、従来のチェックリストとは異なり、「○○する」という行動が示されています。それらについて今後アクションとして行いたいか、それを優先するかということを各人が検討します。その後グループワークなどによりコンセンサスを得ながら、今日からできる改善点を明らかにすることができます。

 職場での小さなミーティングにおいて、アクションチェックリストを用いた議論をぜひトライしてください。まずは、一人ひとりが自分の意見として優先して取り上げたいことを検討し、それを集計して傾向をみながら皆で議論します。できれば一つのグループの人数は多くても7人程度とするほうが、より多くの人が発言できる雰囲気となるので良いでしょう。時間にして早ければ30分程度で今日からやるべき行動が明らかとなります。たとえば、毎月50人以上の職場で開催されている衛生委員会で議論してもよいでしょう。

 アクションチェックリストのもう一つの特徴は、議論をしながらコンセンサスビルディングもできることです。半数以上の参加者が必要だとあげた項目については、何らかの対応をするということを事前に方針として示し、実行に移しましょう。

協力し合う組織づくりには継続した努力が必要

 多くの組織において、自然発生的に協力し合う組織ができるわけではありません。また、人の行動がすぐには変わらないように、組織の行動変容にも時間とさらなる粘り強さが必要となります。文化として定着するには、2~3年の継続した努力が必要であるようです。最近では、がんなどの病気で仕事の負担を考慮しなければならない人への支援も課題となっていますが、こうしたことに対しても、協力し合う組織でなければ対応できません。

 こうした取り組みが、本当に生産性を上げ、そして、職場のストレスを減らし、うつ病に悩む労働者を減らすことができるかについては、今後さらに研究が必要です。しかしながら、アクションチェックリストに示されている項目のほとんどが、本来は職場でできていて当たり前のことばかりです。こうしたことができていないようであれば、他のマネジメントもうまくいっていない可能性もあるかもしれません。
 日本は長引く不況、さらなる激しい世界規模での競争、少子高齢化など国際的にも競争力が失われようとしています。そうした時代だからこそ、少なくとも職場において手を取り合って協力することが求められています。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
和田 耕治先生


独立行政法人国立国際医療研究センター国際医療協力局
2000年産業医科大学医学部卒業。臨床研修医、企業での専属産業医を経て、06年 McGill(マギル)大学産業保健修士、ポストドクトラルフェロー。 07年北里大学医学部衛生学公衆衛生学助教、09年講師、12年より准教授。13年8月より現職。専門は公衆衛生、産業保健、健康危機管理、疫学。医学博士、労働衛生コンサルタント(保健衛生)、産業保健修士、日本産業衛生学会指導医、日本体育協会認定スポーツ医。著書に『保健・医療従事者のための自然災害において被災者や自分を守るためのポイント集』、『医療機関における暴力対策ハンドブック』(ともに中外医学社)など多数。

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