社会で活躍する高齢者-超高齢社会で期待されるシニアのパワー

知識や経験を活かして、高齢者の社会参加や起業が増加中

意欲と能力にあふれるシニアパワーで、支えられる側から支える側への意識変革。個人も社会も元気に

高齢者が労働市場や社会活動に参加する超高齢社会

 国連は、「高齢者(シニア)の自立、参加、ケア、自己実現、尊厳」の五原則を提唱し、すべての世代のための社会づくりを目指し、1999年を「国際高齢者年」と定めました。これをきっかけに、日本では内閣府と高齢社会NGO連携協議会の共催で「高齢社会研究セミナー」(途中で「高齢社会フォーラム」に名称変更)が、東京都および地方都市で毎年開催されています。

 わが国では世界に類をみないスピードで高齢化が進み、高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口の割合)が21.5%となった2007年に「超高齢社会」を迎えました。2012年現在の高齢化率は24.1%(『平成25年版高齢社会白書』:内閣府)となり、年々数字を更新しています。2015年には、いわゆる「団塊世代」(1947~1949生まれの人)のすべてが65歳に達することから、高齢者人口はさらに急激に増加すると見込まれます。
 このフォーラムの趣旨は、少子高齢化によって今後さらなる労働力人口の減少が見込まれることを踏まえ、「高齢者を含めた国民すべてが意欲と能力に応じ、労働市場やさまざまな社会活動に参加できる社会を実現すること」を目標に、全国各地で社会活動を実践している人々、およびこれから活動したいと考えている人々に、情報交換や課題検討の場を提供するものです。
 2013年のフォーラムのテーマは、「シニアの社会参加で世代をつなぐ」です。

 開会にあたり、まず、内閣府大臣官房審議官の麻田千穂子氏が主催者としてあいさつし、今後ますます高齢化が進む日本において、高齢者の社会参加がいかに重要であるかを述べました。
 続いて開会のあいさつに立った堀田力氏(高齢社会NGO連携協議会共同代表、さわやか福祉財団理事長)は、「これからの時代はNPO活動の段階は過ぎ、地域活動が重要になります。NPO活動は目的が明確であり、組織構造や運営もわかりやすい。しかし、地域にはさまざまな人々がいて、多様な課題やニーズがあるので、一つひとつに対応して地域を動かすのは大変な力が必要です。特に地域活動のリーダーには、住民の声を幅広く聞く力、多様な意見を調整する力や説得する力、組織をまとめて運営する力が、NPO活動のリーダー以上に求められます」と述べました。
 また「超高齢社会に生じる新しい課題には、新しい発想や対応、活動が必要です。高齢者も活動する時代と言えます。合言葉は『元気を出そう!』です。活動する際には、本人が楽しいと思えることが一番です。社会のニーズに合った活動なら、周りの皆さんにも喜んでもらえます。喜んでもらえると、ますます活動する本人に元気が出ます。この好循環を続けるようにしましょう」と結びました。

「女性の変」より動きが鈍い「高齢者の変」

 基調講演に立った樋口恵子氏(高齢社会NGO連携協議会共同代表、高齢社会をよくする女性の会理事長)は、「シニアの社会参加で世代をつなぐ」と題して話しました。
 樋口氏はまず「女性の活躍促進による経済活性化」行動計画(働く「なでしこ」大作戦)が関係閣僚会議で決定された2012年6月22日を「女性の変」と称し、女性の活用から活躍へ、そして多様性の推進という時代に入ったとして、高く評価しました。
 一方、「高齢社会対策大綱」(内閣府)が2012年9月に11年ぶりに改訂されたことを踏まえ、人生90年時代(大網では人生90年時代と表現。樋口氏自身は人生100年時代と考えている)では「高齢者」のとらえ方や、高齢者自身の意識を変える必要があり、「高齢者は、支えられる側から支える側」へ意識改革しようと訴えました。
 そして高齢者の意欲と能力の活用、世代間の連帯、地域力の強化が大切だが、この「高齢者の変」は「女性の変」より動きが鈍いことを嘆き、「高齢者も健康やほかの条件を考えながら働き、社会に参加し、いつまでも生涯現役消費者であることを基本に、生涯現役市民、生涯現役有権者、生涯現役一住民として地域社会を中心に社会に参画し、労働力としてもその能力を発揮し、もっと声を上げよう」と訴えました。

ボランティア活動から起業まで、社会参加の方法はさまざま

 午後からは、「求められるシニアの社会参加活動」をメインテーマとし、さらに次の3つのテーマに分かれて、分科会が並行して開催されました。
 第1分科会のテーマは「明るく温かい地域社会づくりを目指して」。渡邊武氏(浦安市民生委員・児童委員、浦安市社会福祉協議会評議員)をコーディネーターに、パネリストとして朝倉由美子氏(福井市シルバー人材センター・介護保険事業所長)、西山真氏(エコー2000代表、さいたま彩講会副代表)、原野哲也氏(東京都江戸川区福祉部長)が登壇しました。

 第2分科会のテーマは「期待されるフレッシュ・シニア」。岡本憲之氏(日本シンクタンクアカデミー理事長)をコーディネーターに、パネリストとして上原喜光氏(全国介護者支援協議会理事長)、坂林哲雄氏(日本高齢者生活協同組合連合会専務理事)、水野嘉女氏(元長寿社会文化協会理事、みなと・しごと55所長)が登壇しました。

 第3分科会のテーマは「起業・就業、ボランタリー活動~シニア活動実践家と語り合う~」。吉田成良氏(高齢社会NGO連携協議会専務理事)をコーディネーターに、パネリストとして國生美南子氏(たすけあいの会「ふきのとう」副代表)、和久井良一氏(高齢社会NGO連携協議会理事)、仁木賢氏(高齢者活躍支援協議会理事・事務局長)が登壇しました。

 各分科会では、先行事例としてパネリストそれぞれの活動を発表し、シニアの社会参加における課題の検討や、情報交換が行われました。

社会や地域のニーズに合った就業や企業、ボランティアの実践

 3つの分科会のうち、第3分科会を覗いてみました。最初に発表した國生美南子氏は、千葉県四街道市で25年前に30~40歳代の女性たちで立ち上げた、たすけあいの会「ふきのとう」の活動を紹介。
 介護保険事業や障害福祉サービス事業で収入を得る一方、地域づくりに寄与するボランティア活動も行っています。地域の人々が交流できる場づくりとして、小学校の空き教室を利用して「コミュニティ・カフェ」を開いたり、福祉施設を訪問して「出張喫茶店」を開いたりしています。そういったボランティア活動を支えているのは、ほとんどシニア世代(高齢者)だと言います。

 次に発表した和久井良一氏は、「高齢社会NGO連携協議会」理事の立場から、「シニアの居場所と出番」と題して、全国各地のNPO法人やボランティア団体の活動を紹介しました。
 和久井氏は、高齢者の生きがいには、コミュニケーションづくりの居場所と、必要とされる出番が必用だと言います。それを実現する方法としてボランティアなどの社会貢献活動は適しているのですが、これらの活動は、自分たちではよい行いだと思っていても、世間ではすんなりとは受け入れてもらえない現実があるとも言います。賛同し協力してもらうには信用を得ることが最も大切で、時間はかかるが、コツコツと活動を続けて実績を積み重ねていけば、賛同者が現れて協力してくれるようになると話しました。

 最後に発表した仁木賢氏は、「高齢者活躍支援協議会」理事の立場から、同協議会の法人会員であり、高齢者活用のビジネスモデルとなっている「株式会社高齢社」および協議会が提唱・推進している定年退職後の起業モデル「ナノ・コーポ」について紹介しました。
 「株式会社高齢社」は、60歳以上75歳未満の気力・体力・知力のある人を対象に、面接の上、登録社員として採用し、企業や団体などから依頼された業務のあるときだけ登録社員を派遣するという人材派遣会社です。1日に数時間で週に2~3日勤務する、1つの仕事を2人で担当するなど、高齢者に無理のない働き方ができるような勤務形態をとっています。
 2012年からは、個人宅での家事代行サービス「かじワン」の業務も始めました。年金額の低い女性に月4~5万円の収入があれば、安心した暮らしができるのではないかという考えから始めたと言います。サービスの利用料金は、最も安い時間帯で1時間当たり1,980円に設定。東京の相場では、最も安価だと話しました。

 一方、「ナノ・コーポ」とは、微細を意味する「ナノ」と、会社を意味する「コーポレーション」の合成語。高齢者の起業にふさわしく、大きなリスクを伴わず、過去の経験や知識を活かしながら、自分のやりたいこと・できることを、自分の身の丈に合わせて起業する「ミニ企業」を意味します。
 定年退職後の高齢者には、雇用機会が少ないのが現実です。だったら「雇われない働き方」を目指すことも、自己実現や社会参加の一つの方法です。協議会では「ナノ・コーポ」の起業を目指す高齢者を支援し人材を養成するため、「高活ビズ起業塾」というセミナーを定期的に開催しています。これまでに、高齢者のための出張美容サービス、便利屋、愛犬の散歩代行など、多種多様なビジネスを起業し活躍している人たちを紹介してきたと言います。

 途中で覗いた第1分科会や第2分科会の会場でも、第3分科会同様に熱心に聴講する姿や、質疑応答の盛り上がりに、シニアの活気あふれるエネルギーを感じました。

(編集・制作 (株)法研/取材:山下ちづる)

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