女性の更年期は体の転換期-食事・運動・リフレッシュが重要

骨粗しょう症になりやすく、生活習慣病のリスクも上昇

心身の健康を守ってくれる女性ホルモンの働きが期待できなくなる更年期は、生活習慣を見直す時期

更年期、女性ホルモンが急激に減少して心身にさまざまな症状が現れる

 3月1日から8日は「女性の健康週間」です。そこで、女性にとって体の「転換期」とも言える更年期の健康について考えてみましょう。更年期の健康と言っても、当然それ以前の健康状態や生活習慣などが大きく影響しますから、更年期について知っておくことは、若い人にとっても大切なことです。

 更年期とは、月経がなくなる閉経をはさんだ約10年間をいい、日本人ではだいたい40代後半から50代前半がこれに当たります。女性は30代後半から徐々に卵巣機能が衰え始め、40歳頃から女性ホルモンの分泌が徐々に減ってきます。そして、平均的には50歳ごろに閉経を迎え女性ホルモン分泌は急激に減少します。
 女性ホルモンは月経や妊娠・出産を中心としたリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)にかかわるとともに、脳や血管、心臓、骨、関節、皮膚など全身の健康を守る働きをしていることがわかっています。更年期はその女性ホルモンが急激に減少することで、心身に大きな変化が起こります。

 その一つが、更年期症状と呼ばれる全身症状。女性ホルモンの中でも主にエストロゲンの減少に伴って、のぼせ・発汗、冷え、めまい、息切れ、動悸(どうき)、倦怠感(けんたいかん)、イライラ、憂うつ、頭痛、肩こり、不眠など、さまざまな症状が起こりやすくなります。症状が生活に支障をきたすほどだと更年期障害と呼ばれます。一方、ほとんど症状が気にならない程度の人もいます。
 更年期は家庭や職場でも大きな節目を迎える時期であり、更年期症状はホルモンバランスの急激な変化や加齢による身体変化に加え、心理的・社会的要因なども影響を及ぼしていると考えられます。そのため症状の現れ方もさまざまで個人差が大きいのです。

 更年期と聞くと、まずこの更年期症状、更年期障害を思い浮かべる人が多いでしょうか。しかし、この時期から出てくる健康上の問題はそれだけではありません。

骨粗しょう症、生活習慣病、がんのリスクも高まる

 女性が閉経後骨粗しょう症になりやすくなることはよく知られていますが、高血圧、脂質異常、糖尿病などの生活習慣病もまた、このころからリスクが高まってきます。40歳くらいまでの女性は男性に比べて、血圧、脂質、血糖値など生活習慣病に関連する検査値の異常は明らかに少ないのですが、更年期を境に増加傾向がみられます。
 女性ホルモンには、血管を柔軟に保つ、「悪玉コレステロール」と呼ばれるLDLコレステロールを減らし酸化を防ぐなどの働きがあります。そのため、女性は男性に比べて生活習慣病になりにくいのですが、閉経後は生活習慣病が増加します。

 ここで注意しなければならないのは、甲状腺機能亢進症・低下症などほかの病気の症状にも更年期症状と間違えやすいものがあることです。たとえば甲状腺機能亢進症の症状(発汗、動悸、イライラ、倦怠感など)や、甲状腺機能低下症の症状(気力低下、体重増加、皮膚の乾燥、冷え、コレステロール値の上昇)などは更年期症状とよく似ています。ほかにも、女性がかかりやすく更年期症状と似た症状をもつ病気に、貧血、シェ―グレン症候群、関節リウマチなどがあります。

 調子が悪いのは更年期だからと見過ごしてしまうと、病気が進行してしまう恐れがありますから、不調が続く場合は我慢せずに医療機関(内科、婦人科、女性専門外来など)を受診して、きちんと検査することが大切です。乳がんや子宮体がん、大腸がんをはじめとする悪性腫瘍のリスクも高まりますから、がん検診も受けましょう。

更年期症状を緩和し、生活習慣病を防ぐポイント

 更年期のさまざまな症状は、体の「転換期」を知らせるアラームと受け止めることができるでしょう。これを、更年期以降を健康にすごすための生活習慣の見直しに活かしたいものです。たとえ更年期のはっきりした症状はなくても、この時期は生活習慣を見直す時期と捉え、病気のリスクを減らしましょう。生活習慣の改善は同時に、更年期症状の緩和にも役立ちます。

 以下に、更年期症状を緩和し生活習慣病を防ぐために、日常生活で心がけたい生活習慣改善のポイントを紹介します。更年期以降は年齢的にも代謝が悪くなり、それまでと同じような生活をしているだけでは、脂質異常症、高血圧、糖尿病などの生活習慣病を起こしやすいことに注意してください。

●栄養バランスのとれた適量の食事を1日3回規則正しく
 食べすぎ・飲みすぎに注意し、甘いものはほどほどに。逆に、やせすぎは体力や免疫力を低下させ死亡リスクを高めることがわかっています。標準体重を保つようにしましょう。
 魚(青背の魚)に多いEPAやDHAには動脈硬化を防ぐ働きがあります。脂肪分の多い肉をたくさん食べていた人は、脂肪分の少ない肉や魚を増やしましょう。蛋白源としては肉や魚以外に、大豆製品を取り入れましょう。大豆には、女性ホルモンに似た働きをもつイソフラボンが多く含まれます。意識してとるようにするとよいでしょう。
 野菜や豆類、きのこなどに多い食物繊維はコレステロールの排出を促し、血糖値の急激な上昇を抑えます。骨粗しょう症の予防に役立つカルシウムを多く含む牛乳や乳製品もしっかりとりましょう。ただしLDLコレステロールが高い人は、バターやチーズは避け、なるべく低脂肪牛乳を選ぶのがよいでしょう。またヨーグルトにはジャムや果物などの糖分を入れすぎないよう気をつけましょう。

●体の負担にならない適度の運動を習慣に
 ウオーキングなど、手軽にできて続けられる運動を習慣づけましょう(早足で1回30分程度、週に3回以上行うのが理想的)。適度の運動には、肥満を防ぐ、インスリンの働きをよくして糖尿病を予防する、骨や関節への刺激となって骨粗しょう症を予防するなどの効果があります。ただ、中にはやりすぎて膝を痛めてしまったなどという場合もありますので無理のない範囲で行いましょう。

●ストレスは積極的に解消する
 過度なストレスは心身へのダメージとなり、疲労の原因となるだけでなく、血圧や血糖値を上げるなど、動脈硬化を進めたり、また更年期症状も悪化させる可能性があります。趣味やスポーツなど、それぞれ自分に合ったリラックス法を見つけて積極的にストレス解消を図りましょう。

 更年期だからと、すぐに生活習慣を変えるのは難しいかもしれません。できれば40歳前後から、こうした生活習慣を身につけ始めるのがよいでしょう。骨の健康には、さらに若いときから注意が必要です。骨量は初潮とともに急速に増え、20代から40代にかけてピークを保ちます。この、骨量を増やし維持すべき時期に過度なダイエットをすると、女性ホルモンの分泌が低下して骨の成長や維持を妨げ、閉経後の骨粗しょう症のリスクを高めてしまいます。過度なダイエットは年代を問わず厳禁と心に留めましょう。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
片井 みゆき先生


東京女子医科大学東医療センター 性差医療部 准教授
1993年信州大学大学院医学博士課程修了後、同大医学部附属病院内分泌科。98~2001年ハーバード大学医学部フェローとして、マサチューセッツ総合病院 神経内分泌部門およびジョスリン糖尿病センターに勤務。帰国後信州大学医学部附属病院 加齢総合診療科・内分泌代謝内科、07年より現職。内分泌代謝科(内科)専門医・指導医、糖尿病専門医、甲状腺専門医、臨床遺伝専門医。日本内分泌学会代議員、性差医学医療学会評議員、日本甲状腺学会評議員などを務める。専門は甲状腺、内分泌代謝疾患、更年期障害ほか女性に多い症状全般。著書に『女性診療外来マニュアル(共著)』(じほう)など。

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