認知症高齢者の徘徊による行方不明を防ぐ-原因と対処法

徘徊症状が出たら家族だけで抱え込まず、地域の皆で見守りを

安心できる対応・環境づくりが必要だが、家族だけで抱え込まず地域の機関に相談を。地域の見守り事例を紹介

認知症高齢者の徘徊などによる行方不明者が増加しています

 わが国では高齢者人口の増加とともに、認知症高齢者も年々増加しています。厚生労働省研究班の調査によると、65歳以上の高齢者の15%が認知症で、その数462万人と推定され(平成24年時点)、今後も益々増加すると予測されます。

 今年(2014年)4月には、認知症の男性(91歳)が徘徊中電車にはねられ死亡した事故に関し、JR東海が遺族に対して損害賠償を求めた訴訟の判決が大きな話題となりました。名古屋高等裁判所は介護中の妻(当時85歳)に監督義務があったとして約360万円の支払いを命じ、介護現場にも大きな衝撃を与えました。

 さらに6月に公表された警察庁の調査では、認知症が原因とみられる行方不明者は昨年1年間で1万322人にも上ることがわかりました。

 こうした深刻な事態を受け、8月より厚生労働省は全国の身元不明の認知症高齢者等に関する特設サイトの設置運用を始めました(「行方のわからない認知症高齢者等をお探しの方へ」http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000052978.html)。
 また、警察庁も対応を強化し、現在最も行方不明者が多い大阪府では、全警察署に「身元不明迷い人台帳」が設置されました。

なぜ徘徊・行方不明が起こるのでしょうか

 徘徊は、認知症の問題行動である行動・心理症状の代表的なもので、見当識障害(時間、場所、人物の見当がつかなくなる障害)によって、自分のいる場所や時期などが認識できなくなることで生じます。(「認知症高齢者の症状と接し方・心構え」参照)。

 徘徊と一言でいっても、その背景はさまざまです。たとえば過去の記憶の中で気にかかっている場所や戻りたい場所に行こうとする。今いる場所がどこなのかよくわからなくなり、不安で身の置きどころがなくうろうろする。また、どこかに行こうと出かけたが場所がわからなくなって帰れなくなる、など。

 このように徘徊は、決して意味もなくうろうろしているのではなく、それぞれの状況、目的や理由があるのです。

家族はどのように対応すればよいのでしょうか?

 徘徊の症状がある高齢者を抱えた家族は、どのように対応すればよいのでしょうか。鍵をかけて閉じ込めてしまうといった対応は、症状を悪化させてしまい逆効果です。本人の行動を否定せずに、できれば徘徊に付き添うなどして行動を理解しようとすること、本人の身になって、ここにいても安心だと感じられるような声かけや環境づくりが大切です。

 徘徊症状のある方への具体的な対応については、福祉用具やサービス、地域のネットワークの活用なども含め、「認知症高齢者への接し方―症状別の対応例」をご参照ください。

●徘徊対応グッズの活用
 徘徊対策に利用できる道具に、徘徊センサーやGPS機能付き携帯端末などがあります。徘徊センサーは介護保険でレンタルできますし、自治体によってはGPS機能付き携帯端末の貸出しを行っています。地域包括支援センターなどで情報を得て活用しましょう。
 最近は次のような商品も開発されています。

・超小型GPS端末を組み込んだシューズ 今どこにいるか、スマホやパソコンからすぐに確認できる(GPシューズ/(株)チェリー・BPM)
・徘徊を検知し呼び止める徘徊感知器 カメラで外出(徘徊)を感知し、スピーカーから家族の声で呼び止め、同時に家族などへ通知する(認知症老人徘徊感知機器ラムロックアイズ/(株)ラムロック、介護保険レンタル適応)

地域ぐるみで認知症の人を見守る―地域の取り組み事例

 徘徊のような症状が出てきたときには、家族だけで抱え込まず、地域の相談機関や専門家、ご近所に相談し、皆で支えていく対応が必要です。

 福岡県大牟田市は、認知症で徘徊する高齢者を救うための先進的な取り組みで、全国的に注目されています。大牟田市では捜索願いが出ると、警察が地元の駅やタクシー協会、ガス会社、郵便局などに連絡し、さらに商店街など市民にも伝えられ、地域ぐるみで探すネットワークをつくっています。

 また、その実効性を高めるため年に1回模擬訓練を行い、徘徊高齢者への声のかけ方、目線の合わせ方などを訓練しています。また、認知症の理解を広めるための「認知症サポーター養成講座」を開催し、参加を呼びかけています(「大牟田市 徘徊SOSネットワーク模擬訓練」http://www.city.omuta.lg.jp/hpkiji/pub/detail.aspx?c_id=5&id=2167)。

 もしも認知症の家族が、自宅や自宅周辺を探してもいないとなったら、すぐに警察や地域包括支援センター、担当ケアマネジャーに連絡し、またお住まいの地域にSOSネットワークがあれば連絡しましょう。迅速かつ多くの人の目で探すことが大切です。

●私たちもできることを
 先日、郷里で暮らす母は、ツアー旅行中の団体から離れてしまった男性の保護に協力しました。70代の男性はバス旅行中であることを忘れ、最寄りの駅から電車に乗ろうとしていたのですが、そのまま電車に乗っていたら行方不明になったかもしれません。
 認知症の方は表情がぼんやりしていたり、服装が季節外れだったりと何か様子がおかしい場合があります。もし、そんな人を町でみかけたら、やさしく声をかけてみましょう。私たち一人ひとりができることを持ち寄りながら、安心して暮らせる町を共に作りましょう。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
川上 由里子先生


ケアコンサルタント
ケアマネジャー、看護師、産業カウンセラー、福祉住環境コーディネーター2級。1984年より13年、大学病院、高齢者住宅などで看護師として勤め、三井不動産(株)ケアデザインプラザの立ち上げに参画。現在はUR都市機構ウェルフェア研究室室長や各企業の高齢者、介護関連のアドバイザーとしても活躍し、シニアライフに関するコンサルティングの他、講演、執筆多数。高齢者支援のみならず、支える人を支えるメッセージを各方面に発信。希望は心と心を結ぶケアを広げていくこと。著書に『介護生活これで安心』(小学館)。2008年より6年間、自身も父親の遠距離介護を体験する。在宅での最期を看取り、多くの学び、想いを得る。

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