意外と重要なフットケア-足の健康が心身の健康につながる

足部と足爪のケアで歩行機能が改善、社会参加も可能に

子どもの発達支援から高齢者の健康支援まで、足部のセルフケアと専門的ケア、運動の3つが有効

フットケアなくして歩行機能の向上なし

 子どもから高齢者まで幅広い年代を対象に、足部や足爪に発生している問題に触れてきたこのシリーズも今回が最終回です。
 超高齢社会の日本では、高齢者の転倒を予防し、健康を支援するとともに、いつまでも前向きに元気で活動してもらうことが重要です。一方で、元気で活発な子どもの発育を支援し、将来の日本を担ってくれる人材を育成することが望まれます。

 これまで、足は歩くなど移動能力の基本であり、足指は歩行の際の推進力を発揮する上でタイヤの役割を果たし、足爪は力を地面にしっかり伝えるグリップの役割を果たしていることなどを述べてきました(「フットケア4 足爪の変形や変色」参照)。

 ロコモ予防などに代表される高齢者の介護予防や健康支援は、現在地域活動の中で行うことが推進されています。ロコモ予防やアクティビティ向上の実現には、歩行機能を維持し、楽しく快適に運動や活動に参加し、それを継続することが重要です。実例からそのことを見てみましょう。

 図1は左右の拇趾に巻爪がありますが、右足の爪は爪の下の皮膚からはがれつつあります。左足は爪が皮膚に食い込み、痛みを伴っていることが予想できます。高齢者の場合、このような状態でも痛みを感じていないこともありますが、歩行機能や足の筋力の低下は起こっています。
 図2は爪が厚くなる肥厚(ひこう)があり、爪が曲がっています。図3では巻爪と爪の変形が確認できます。このように足爪も問題ですが、ここで注目してほしいのは、足爪の土台の足指の形も変化していることです。

 足爪の役割の1つは、歩行の際に地面への蹴り出しの力をしっかり支えることです。図1~3の拇趾は、腫れていたり爪がはがれていることで、床からの力を支えられない状況にあります。これらの状態を改善しないと、歩行機能の向上は見込めません。また無理に運動させると痛みや怪我などが発生したり、モチベーションが上がらず自信喪失から引きこもりを誘発するリスクにもなります。

 つまり「フットケアなくして歩行機能向上なし」、そして「歩行機能の向上なくしてアクティビティの向上なし」なのです。

メディカルフットケアにより短時間で足爪や足部の状態が改善

 図1~3の足部にメディカルフットケアを実施して、変化を見ました。図4~6はメディカルフットケア直後の写真で、図1~3の状態から約1時間後の変化がわかります。足爪も大きく変化していますが、拇趾自体も変化しているのがわかります。このように、短時間でも足爪や足部の状態は変化します。

 また、メディカルフットケアの中期的効果を図7、8に示します。これらは、高齢者33名(75.2±6.0歳、65~87歳)に対し、月に1回メディカルフットケアを実施し、下肢筋力を示す足指力(足指力計で計測)と足圧分布の変化を見たものです(足指力の計測については「フットケア1 足病、足部の筋力、骨格系」参照)。
 図7は、足指力の10カ月間の変化、図8は足圧分布の8カ月後の変化の1例です。

 図7より、高齢者の転倒リスクラインである足指力の2.5kgfを基準として、それ未満を転倒リスク群、基準以上を非転倒リスク群として解析したところ、どちらの群も足指力が有意に向上し、特に、転倒リスク群の向上率が高いことがわかりました。

 さらに、図8の足圧分布からは、メディカルフットケア実施前は足趾が地面に接地しづらく、第5趾側に荷重が偏っていた対象者が、バランスよく立てるようになったことがわかります。これ以外にも、私たちの開発している計測装置を用いて、メディカルフットケアによる歩行機能やバランス機能の改善効果がわかっています。

 下肢筋力、歩行機能、バランス機能の低下は転倒リスクを高める要因ですから、メディカルフットケアが転倒予防につながっていることが推察できます。付け加えて、足部や足爪の問題も転倒リスク要因として重要な項目です。

フットケアの効果は心の状態の改善にもつながる

 フットケアの効果は、下肢筋力などの身体機能を高めることはもちろんですが、対象者本人の心の状態の改善にも寄与できると感じます。さまざまな要因で歩けなかった高齢者が、メディカルフットケアにより自信を取り戻し、歩けるようになった事例も確認しています。
 これは身体機能の改善ももちろんですが、本人が歩く意思を取り戻したこと、周囲の環境がそれを“応援した”ことが要因だと考えられます。そのモチベーションを支えるためには、足指力計や膝間力計などの計測機器を用いて、対象者や支援者へデータをフィードバックすることも重要でした。

 高齢化の進行により、わが国では2055年には高齢化率が40%にまで進むと予測されています。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年には、後期高齢者の割合が増加することで要介護高齢者が増加し、後期高齢者医療費に代表される社会保障費が増大すると言われる中で、高齢者に元気に前向きに活動してもらうことは、これらの解決のカギを握っています。

 「転ぶと危ないから座らせておく」のではなく、積極的に足部のケアを実施し、ポールウォーキング(ノルディックウォーキング)などで積極的に歩行機能を高めるべきです(「フットケア7 高齢者の転倒予防」参照)。
 さらに、仲間と楽しく活動できる場をつくって、快適に社会参加を促すことが必要なのではないでしょうか。

 足部のセルフケアと専門家によるメディカルフットケアの実施、さらに身体機能向上のための運動は、子どもなら発達支援やスポーツ障害予防、高齢者なら転倒予防や健康支援に有効な共通の項目だと考えます。
 千里の道も一歩から。長い人生が千里の道だとすると、最初の一歩から最後の一歩まで、足づくりは体づくりと心づくりのどちらにとっても重要な課題です。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
山下 和彦先生


東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科教授
2005年東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科講師、07年准教授を経て、13年から現職。専門分野は医用生体工学、高齢者福祉工学。特に身体機能計測を用いた高齢者の転倒予防指導やメディカルフットケアおよび子どもの身体発達支援、リハビリテーション支援の技術開発など。日本生体医工学会、日本生活支援工学会、日本医療機器学会、ITヘルス学会などに所属。近著に『健康長寿は転ばないこと 転倒予防(共著)』(土屋書店)がある。

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