働く人の介護を前向きに 両立のためにすべきこと7つのステップ

働きながら介護する時代、介護に備えてとるべき行動を紹介

仕事は暮らしと介護を支える基盤。介護を前向きに考え、ワークライフバランスを目指しましょう

介護しながら働く人が増えている

 超高齢社会の日本で、働きながら介護する人は約290万人。そのうち働き盛りの60歳未満が約200万人を占めています(総務省平成24年「就業構造基本調査結果」)。多くの方が働きながら介護をする時代になりました。

 仕事は家族の暮らしを支え、介護も支えます。しかし突然生じることが多い介護と仕事の両立は、決して容易ではありません。
 「突然の介護に何から手をつけたらよいのかわからない」「仕事と介護で肉体的・精神的な負担が大きく、いつまで続けられるか不安」、「最近親の物忘れがひどく、認知症ではないか不安」、「将来親の介護が必要になったとき仕事と両立できるか不安」といった声も多く聞こえてきます。

介護に備える 働く人がとるべき行動SETP1〜STEP7

 仕事と介護の両立のために、働く人がとるべき行動を紹介します。ここでは親の介護を例に、順を追って見ていきましょう。

STEP1:親とのコミュニケーション、生活状況を把握する
 介護に入る前からの親との関わりが、実際の介護に影響します。親の毎日の生活状況や健康に関することを把握しましょう。介護や住まい、延命治療などへの親の希望も聞いて話し合い、記録・保管しておきましょう。

STEP2:職場の「介護支援制度」を確認・活用する
 「育児・介護休業法」により、企業・法人には介護休業・休暇や勤務時間の短縮、転勤への配慮など、介護する従業員への支援が定められています。勤務先で利用できる支援制度などを日頃から確認しておき、上手に活用しましょう。

STEP3:病気や介護の状況を正確に把握する
 親の病気の特性、治療方針、現在の体の状況、リハビリのゴールなどを医療・福祉の専門家によく確認し、適切な介護生活のプランをたてることが必要です。そのため、主治医との面談にはなるべく休暇をとって立ち会い、わからないことは遠慮せずに確認しましょう。大切なのは、起こっていることを受けとめながら全体をコーディネートすることです。

STEP4:家族会議を行い役割分担をする
 介護は一人に負担をかけずチームで役割分担することが大切です。活用できる制度やサービス、地域資源、お金、家族の役割などを確認しながら、チーム体制を整えます。子世代は各々の職場での介護支援制度も確認しておくと、実際に動ける時間や活用できる情報、費用などが見えてきます。

STEP5: 介護保険制度やその他のサービスについて理解する
 地域包括支援センターで地域の介護保険制度、高齢者サービス情報を入手し、どんな介護ができるのか相談してみましょう。たとえ介護状態になっても住み続けられるよう、市区町村ならではの地域包括ケアシステムが展開され始めています。(『地域包括支援センターって何?』『高齢者の暮らしを支える「地域包括ケア」』参照)。

STEP6:在宅介護の準備 働きながらできることを把握する
 要介護1以上の場合は、ケアマネジャーを選び、在宅介護サービスを活用したケアプランを作成してもらいます。ケアプランが完成したら、自分や家族が働きながらできることを書き込んでみましょう。
 たとえば、排泄や食事、入浴の介助など身体的な介護は専門家にまかせ、心理的・金銭的サポート、情報提供、介護者のサポートなどを行うのも大切な役割です。

 働きながらできる介護の例を以下に示します。
・定期的に電話で見守り(会話を交わすだけでも支えに)
・2週間に一度、週末に帰省し一緒に食事(兄弟と交替で食事・外出を支援したり、介護を交替することで介護者を支援する)
・週に2回(火・木)、朝勤務前に立ち寄り一緒に食事(見守り)

STEP7:利用可能な介護施設や高齢者住宅を調べる

 在宅での介護が難しい場合は、介護施設や有料老人ホーム、高齢者住宅などの利用を考えます。親、自分、家族の住む地域の施設や住宅の状況、入居条件、費用、サービス内容等を調べましょう。高齢者施設・住宅選びを専門的に支援する事業所もあります。

介護を前向きに考え、ワークライフバランスを

 仕事を辞め、家族だけで介護を抱えてしまっては、精神的ストレスから虐待や「介護うつ」に発展することもあります。また、介護には経済的な基盤も必須です。仕事を辞めると生活苦に陥り共倒れの危険もありますが、一度退職すれば再就職は難しいのが現実です。

 超高齢社会を生きる私たちに大切なのは、自分自身の健康を大切にしながら仕事と介護の両立の意識を持つことです。

【参考Webサイト】
●内閣府「仕事」と「介護」の両立ポータルサイト(http://wwwa.cao.go.jp/wlb/ryouritsu/
●厚生労働省「仕事と介護の両立 介護離職を防ぐためには」(www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/index.html
●WAM-NET(http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
川上 由里子先生


ケアコンサルタント
ケアマネジャー、看護師、産業カウンセラー、福祉住環境コーディネーター2級。1984年より13年、大学病院、高齢者住宅などで看護師として勤め、三井不動産(株)ケアデザインプラザの立ち上げに参画。現在はUR都市機構ウェルフェア研究室室長や各企業の高齢者、介護関連のアドバイザーとしても活躍し、シニアライフに関するコンサルティングの他、講演、執筆多数。高齢者支援のみならず、支える人を支えるメッセージを各方面に発信。希望は心と心を結ぶケアを広げていくこと。著書に『介護生活これで安心』(小学館)。2008年より6年間、自身も父親の遠距離介護を体験する。在宅での最期を看取り、多くの学び、想いを得る。

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