安倍首相もなった機能性胃腸症とは-症状や治療法、生活習慣など

異常は見つからないのにさまざまな胃の不快症状が

症状の軽減には過剰なストレスを避け、生活習慣を改善すること。症状にあわせた薬の服用が有効です

日本人の4人に一人が経験する

 安倍元首相の突然の辞任表明に引き続き、「機能性胃腸症で緊急入院」のニュースが流れたのは先月のこと。このときはじめて「機能性胃腸症」という病名を知った人、多かったのではないでしょうか?
 機能性胃腸症は一言でいうと「検査をしても異常がないのに、胃腸の不快症状がある」病気。なかでも症状が上腹部にあるものを、「機能性ディスペプシア」と呼んでいます。

 胃痛や胃もたれ、腹部膨満(ぼうまん)感、胸やけ、食欲不振……。そんな不快な症状があるのに、内視鏡検査などをしても何も異常が見つからず、原因が確認できないことは少なくありません。そんなとき、以前は「異常なし」とされたり、慢性胃炎や神経性胃炎などと診断されていました。しかし、実際にさまざまな症状があること、炎症がないのに「胃炎」というのは正確ではないことなどから、最近では機能性ディスペプシアと呼ぶようになっています。症状は名前の通り、胃の機能(働き)が低下することによって起こると考えられています。

 このように機能性胃腸症は新しい病気というわけではなく、日本人の4人に一人が経験していると言われるほどありふれた病気です。ストレスが主な原因と言われており、ストレス社会の現代病といってもよいでしょう。
 「ストレスで胃に穴があく」と言われるほど、ストレスが胃腸に影響を与えることはよく知られています。それは、胃腸が自律神経の働きと密接にかかわっていて、ストレスによって自律神経が乱れると、胃の動きや胃酸の分泌が影響を受けるため。胃腸は、精神的ダメージの影響を受けやすいのです。

胃の働きが低下することでさまざまな不快症状が

 機能性ディスペプシアは、胃もたれなどの症状が中心の運動不全型、痛みがより強く出る潰瘍(かいよう)症状型、どちらの症状も出る非特異型の3つのタイプに分けられ、それぞれの症状に合わせた治療が行われます。

運動不全型
 主な症状は胃もたれ、おう吐、腹部膨満感、食欲不振など。胃酸と食べ物を混ぜ合わせて十二指腸に送り出す胃のぜん動運動がにぶくなることで起こるとされる。食べすぎや飲みすぎ、脂っこい食べ物を食べたときなどに起こりやすい。胃の働きを良くする運動機能改善薬(モリプサドなど)が有効。

潰瘍症状型
 主な症状は空腹時や夜間の胃の痛み、胃の不快感など。ストレスが引き金となって、胃酸が過剰に分泌されたり、ぜん動運動が活発になりすぎることで起こる。粘膜が直接胃酸の刺激を受ける空腹時に起こりやすい。
 症状が軽ければ胃酸を中和する制酸薬、痛みが強い場合は胃酸の分泌を抑えるH2ブロッカー胃腸薬などを服用する。ただし、後者は発疹(ほっしん)や脈の乱れなどの副作用がみられることもあるため、市販薬を購入するときは薬剤師に相談を。

 いずれのタイプもストレスのほか、食べすぎや飲みすぎ、早食い、喫煙など、胃に負担をかける生活習慣が症状を強くし、不安感を取る抗不安薬や精神心理療法を併用することで効果があがることもあります。

生活習慣の改善で胃をいたわる

 症状を改善するため、胃にやさしい生活習慣を心がけましょう。

ストレスをためない
 過剰なストレスを避け、ストレスをためない工夫を。休養したり、趣味や運動などで気分転換をはかることが大切。ウオーキングなど軽く汗ばむほどの運動は、自律神経のバランスを取り戻すのにも効果が。

規則正しい生活で3食きちんと食べる
 不規則な生活、食事は胃への負担が大きいだけでなく、自律神経のバランスを乱す。朝、昼、晩と規則正しい食事を。

ゆっくりよくかんで食べる
 早く食べると胃が十分広がりにくいため、リラックスしてゆっくり食べる。よくかむことで唾液がたくさん出て消化を助けてくれる。

腹8分目を心がける
 満腹になるまで食べると胃のぜん動運動が妨げられ、もたれやすくなる。腹8分目のほうが胃の動きがスムーズ。

20~30分ほどの食休みを
 食後すぐに活動すると、血液が体を動かす骨格筋に回ってしまい、胃腸への血流が減って消化活動が低下する。

胃に負担がかかる食べ物・飲み物を控える
 脂っこいものは胃にとどまる時間が長く胃もたれしやすいので食べすぎない。塩辛いもの、甘すぎるもの、香辛料やアルコールなどの刺激物は胃に負担をかけるため控えめに。冷たすぎ熱すぎの食べ物・飲み物も胃を刺激する。人肌か、やや温かいくらいが胃に優しい。コーヒーや緑茶も飲みすぎは注意。

 なお、薬を飲んでもよくならない、胃の症状以外に黒い便が出るなどほかの症状を伴うときは、胃・十二指腸潰瘍や胆石、すい臓の病気、がんなど原因となる病気が潜んでいるかもしれません。自己判断をせず、消化器の専門医に相談しましょう。

【監修】
神保勝一先生


神保消化器内科医院院長
1941年東京生まれ。1968年日本医科大学卒業。1970年国立がんセンターにて研修。1973年より現職。日本内科学会認定医。日本消化器内視鏡学会評議員、東京内科医会常任理事、日本臨床寄生虫学会評議員、日本実地医科消化器内視鏡研究会代表などを務める。専攻は消化管疾患診断・治療、消化器がん検診。『内視鏡的治療における偶発症予防ガイドライン』(ベクトル・コア社)、『消化管癌早期診断のための実践的内視鏡検査指針』(中山書店)など著書多数。

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