子どもが急性中耳炎になりやすい理由とは-症状や治療法について

患者の多くは10歳以下

病原菌が侵入しやすい未発達な耳の構造。治療を勝手に中断すると治りにくい滲出性中耳炎にも注意!

本来清潔な中耳に炎症がおきるのは……

 3月3日は「耳の日」でした。耳の健康への関心を高めるために、半世紀以上も前に制定されたものです。ところで、耳の健康を損なう病気で、いちばんポピュラーなのは「中耳炎」でしょう。中でもその割合が高い急性中耳炎は、乳幼児から小学校低学年くらいの子どもによくおこります。今回はとくに、この年ごろのお子さんをお持ちのお母さんがたの“耳目”を集めそうな情報です。

 耳の構造は大きく3つの部分で構成されます。外側に開いたところから鼓膜までが「外耳」、反対に耳の最も奥が「内耳」、そして鼓膜から「内耳」までの空間を「中耳」と呼びます。急性中耳炎は文字通り、この部分に急性の炎症がおこることです。

 中耳は鼓膜によって外耳から隔てられていて、内部は粘膜に覆われ、周りも骨で囲まれているので、本来は清潔な空間です。ここに急性の炎症が発生するのは、いくつかのルートから細菌やウイルスが中耳に侵入するためです。中でも最も多いのは鼻の奥と耳をつなぐ耳管(じかん)というパイプを通じて、入り込んでくる場合です。

 かぜをひいたときなどに、強く鼻をかみすぎると耳管を通して、細菌やウイルスが侵入してくるのです。また、鼻やのどの粘膜の炎症が、耳管から中耳にまで及んでくるケースもあります。ですから予防法として重要なのは、子どもにかぜをひかせないことです。ひいてしまっても、鼻をかむときは片方ずつ強くいきみすぎないように注意してください。

痛みが最も自覚しやすい症状

 急性中耳炎の主な症状は、耳が痛む、ふさがった感じがする、よく聞こえない、熱が出る、耳だれが出る―などで、このうち「痛み」がいちばんわかりやすい自覚症状です。中耳の粘膜に炎症がおきると、中耳粘膜から液体のしみ出し(滲出液=しんしゅつえき)がいつもより多くなります。また侵入してきた細菌やウイルスと体の防御機構を担う白血球が戦い、中耳腔という空洞に膿もたまってきます。たくさんたまった滲出液や膿が知覚の敏感な鼓膜を内側から圧迫し始めるので、さらに痛みが強くなります。

 この痛みは、時々痛くなるというものではなく、ずっと続きます。しかも次第に強くなります。そのうち、たまった膿が鼓膜を破って耳だれとなって流れ出てくると、痛みは少し和らいできます。乳幼児の枕が汚れるほどの耳だれがあるとか、なかなか泣きやまない、機嫌が悪い、耳を手でさわろうとする、熱がある、などというときは、急性中耳炎をおこしているかもしれません。

子どもに発生しやすい3つの理由

 急性中耳炎で病・医院の外来を訪れる患者さんのほとんどは、10歳以下の子どもです。中でも保育園や幼稚園などで集団保育を受けている3歳未満の子どもに多発しているのが、最近の傾向。子どもに発生しやすい理由は主に3つあります。

 その一つは、先ほど細菌やウイルスの侵入ルートのところでふれた耳管が関係しています。体が未発達な子どもの耳管は大人よりも太く、しかも鼻の位置とほぼ同じ高さのところにあります。大人になれば耳のほうが高い位置になり、耳管は鼻に向かって斜めにつながるので細菌などが中耳に侵入しにくいのですが、子どものうちはこれがほぼ水平で太いため侵入が容易なのです。

 子どもが中耳炎になりやすいもう一つの理由は、鼻水が出たときに上手にかめないことです。このため鼻の奥、つまり耳管の入り口付近にたまった鼻水が耳管の炎症をおこしやすくします。

 3つめの理由は、のどのずっと奥にある「アデノイド」(咽頭扁桃=いんとうへんとう)というリンパ組織が関係しています。幼児期のアデノイドは3~7歳ごろまでは通常でも肥大していますが、過大に発育(肥大)したり、慢性炎症が生じると、耳管の入り口がふさがれやすくなります。耳管がふさがると中耳の中に粘液や粘膜内の血管からの滲出液が耳管から排出されずに中耳腔にたまってしまいます。このような状態を「滲出性中耳炎」といいます。

完治が確認できるまできちんと治療を

 急性中耳炎の治療には、抗生物質や消炎鎮痛剤が使われます。痛みや発熱はだいたい数日で治まりますが、完治するまでには通常でも2週間ぐらいはかかります。この間に、症状が治まったからと通院や服薬をやめてしまいがちです。しかし中耳内にまだ弱い病原菌や滲出液などが残っている場合、それをそのままにしておくと「滲出性中耳炎」になってしまいます。こうなると完治するまでに数カ月以上もかかることがありますから、専門医に急性中耳炎が完全に治ったことを最後に確認してもらうことが重要です。

 滲出性中耳炎は急性中耳炎のような痛みはなく、鼓膜にあながあくこともありません。主な症状は聞こえにくい、耳がふさがった感じがする、耳鳴り、自分の声がこもって聞こえる、などです。特に幼小児は、痛みがないと何も症状を訴えないことがあるので大人が気づきにくいことがあります。子どもがテレビやビデオに見入っているときにボリュームが大きいとか、後ろから呼びかけてもなかなか返事をしない、よく耳に手をやるなどの変化で気づくことがあります。

(『中耳炎がわかる本~急性、慢性化膿性、滲出性、真珠腫性中耳炎』鈴木光也著、法研より)

【監修】
鈴木 光也先生


東京大学医学部耳鼻咽喉科准教授
1983年東京医科大学医学部医学科卒業。同年東京大学医学部耳鼻咽喉科研修医、88年同助手、92年国立東静病院耳鼻咽喉科医長、98年東京大学医学部耳鼻咽喉科講師(99年1~7月Michigan大学Kresge聴覚研究所留学)、2000年東京警察病院耳鼻咽喉科部長などを経て、07年7月より現職。

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