大人の歯が抜けたときの対処法-放置は禁物・さまざまな治療法

部分入れ歯、ブリッジ、インプラントから自分に合った方法を

抜けたままにしておくと歯列が歪む。処置法にはそれぞれに長所と短所、よく考えて選択しよう

抜けたままにしておくと、さまざまな悪影響が

 スポーツや事故で歯が一部抜けてしまったとか虫歯が悪化して抜歯した、というようなとき、その後の処置をあなたならどうしますか? もちろん、歯医者さんできちんと治療してもらうのが当たり前のことですね。

 ケガなどで抜けてしまった健康な歯の場合、条件さえ合えば元の場所に植え直すという治療が可能なこともありますが、代わりの歯を人工的に設けて再び噛(か)めるようにするというのが一般的でしょう。
 ところが中には、抜けたところが外見上目立たない場所だったりすると、ひとまずの処置をしてもらった後は歯医者さんへ通うことを怠り、そのまま放置している人がいるようです。

 歯が抜けたままにしておくと、食べたり話をしたりするときに多少の不便が生じますが、それはやがて慣れてしまいます。そうなると、とりたてて生活上の不便を感じないため、ますます歯医者さんから遠ざかることになりかねません。

 しかし、不便を感じないとはいっても、実は大きな問題が進行しているのです。第一に、歯は1本抜けただけでも食べものをうまく噛むことができなくなり、栄養摂取に支障が出ます。そして第二には、残った歯にも悪影響が出ることです。

 どういうことかというと、抜けた歯の隣の歯が傾きます。また、抜けた歯と噛み合っていた歯が浮いて出てきます。こうなると噛み合わせ全体のバランスが崩れ、残った歯に過大な負荷がかかって、それらの寿命を縮めます。歯列が乱れて歯並びが悪くなると、歯垢(しこう)がつきやすくなり、虫歯や歯周病の原因になります。

治療法を決めるのは患者自身

 歯がたとえ1本であろうと欠けるのは、想像以上にさまざまな影響が出ることがおわかりいただけたでしょうか。ですから、抜けたあと、歯肉が盛り上がってきて傷口が落ち着いたら早めに歯医者さんに受診し、噛み合わせの機能を回復しなければなりません。それには、部分入れ歯、ブリッジ、インプラントの3つの方法があります。それぞれの仕組みや特徴を紹介しましょう。

●部分入れ歯
 ・周りの歯にバネを引っかけて入れ歯(義歯)を固定し、抜けたあとの歯ぐきの上に乗せて支える
 ・残った歯を削る必要はなく、治療は比較的簡単で短期間で済み、保険適用がある
 ・硬いものを噛みにくいことが多く、食べもののカスが入れ歯と歯ぐきの間に残りやすい
 ・動きやすいので違和感が生じることがある。数年たつと、抜けたところのあごの骨がやせてくる

●ブリッジ
 ・抜けた歯の両隣の歯を削り、中央に人工歯を連結したクラウンをかぶせて文字通り橋のようにつなぐ
 ・治療は比較的短期間ですみ、保険適用がある
 ・固定されるので違和感は少ないが、ブリッジと歯ぐきの間に食べもののカスが詰まりやすい
 ・支えとなる両隣の歯に負担がかかる
 ・両隣がクラウンで処置ずみならよいが、差し歯だとできないことがある

●インプラント
 ・人工の歯根をあごの骨に直接埋め込み、その上に新しい歯を作る
 ・埋め込むのに外科手術が必要だが1日ですむ。そのあと、人工歯根が骨に定着するまで数カ月~半年ほど待って、人工の歯をつける
 ・保険適用はなく、高額な費用がかかる
 ・周りの歯への影響はなく、自分の歯と同じように噛むことができる
 ・糖尿病(細菌感染しやすい)や歯周病(進行するとあごの骨を溶かす)が進行するとできないことがある

 以上の治療法のどれを選ぶか、最終的に決めるのは歯医者さんではなく、私たち患者自身です。長所・短所をよく考え、不明な点はかかりつけの歯医者さんに尋ねるなどして決めましょう。

長持ちさせるにはきちんとした手入れと定期点検を

 どの方法を選ぶにしても、長持ちさせるためにはきちんとした手入れと定期的な点検が必要です。部分入れ歯を支える歯ぐきは、長い間にはやせてくるので、初めは装着がピッタリ合っていてもやがてガタつきが出てきます。そうなると噛むたびにバネを引っかけて固定している歯を揺さぶり、傷めてしまいます。このため保険適用で作った入れ歯は、6カ月目と1年目にガタつきの調整をすることになっています。

 ブリッジも、土台の歯を定期的に歯医者さんに検査してもらい、ブリッジと歯ぐきの間など汚れやすいところをきれいにしてもらうことが重要です。

 インプラントはブリッジよりさらにていねいなメンテナンスが必要とされます。人工歯根と義歯の装着部分に歯垢や歯石がたまりやすいので、歯ブラシできちんとブラッシングしなければなりません。その意味から、糖尿病や歯周病ではなくても、歯にヤニがつく喫煙者にはすすめられない治療法とされています。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
森山 貴史先生


東京歯科大学水道橋病院講師
1981年東京歯科大学卒業。歯学博士、日本歯周病学会認定歯周病専門医。歯周病専門医として日々多くの歯周病患者の治療に携わるとともに、テレビ・雑誌などのメディアを通じて歯周病予防や歯みがき指導などの啓蒙活動も行っている。

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