インフルエンザ流行の危機? もしも発熱したらどうすればいい?

秋・冬の危機に備えて厚生労働省も新たな対応指針

秋・冬に向けて大きな流行が起こる可能性が。乳幼児、妊婦、高齢者などは重症化の危険

WHOがフェーズを最高レベルの6に引き上げ

 新型インフルエンザは、当初心配された国内での大きな流行や感染者の重症化などが起こらず、一般の危機感は何となく薄らいでいるかもしれません。そんな日本の“ひと安心ムード”をよそに、世界では感染者数の増加は続いていて、WHO(世界保健機関)が流行警報の段階を最高レベルの「フェーズ6」に引き上げたのは6月中旬のことです。冬に向かっていた南半球での増加ぶりが著しく、「世界的なまん延状況にある」という宣言を発して、引き続き警戒を怠らないように求めたのです。

 WHOの「フェーズ6」宣言を受けて、厚生労働省は国内での対応指針を改定しました。それによると、わが国でもこれから秋・冬に向けて全国的に大規模な患者の増加が起こる恐れがあり、とくにハイリスクの人たちで重症の患者が増える可能性があるためその対応が必要、としています。ここでいうハイリスクの人とは、次のような人たちです。

●妊婦、幼児、高齢者
●慢性呼吸器疾患、慢性心疾患、代謝性疾患(糖尿病など)、腎機能障害、免疫機能不全(ステロイド剤の全身投与など)などがあり、医師によって重症化の危険が高いと判断される人

全ての医療機関で発熱患者を外来診療

 改定された指針では、現在を「患者の発生をゼロにするための封じ込めの対応は既に困難な状況」として、「急激で大規模な患者数の増加を抑えながら、秋・冬の社会的な混乱が最小限になるよう体制を整える準備期間」と位置づけています。地域での対応について改定された主な点には次のようなことがあります。

患 者
・医師の指示に従い、原則として外出を自粛し、自宅で療養する。
・前記のハイリスクの人たちに対しては、早期から抗インフルエンザウイルス薬を投与する。そのうち、重症化のおそれのある人には、優先的に検査を行い、必要に応じ入院治療を行う。
濃厚接触者 外出を自粛し、発熱などの症状が出たら保健所へ連絡する。
医療体制
・発熱相談センターは、受診する医療機関がわからない人へ医療機関を紹介したり、自宅療養している患者からの相談などに対応する。
・原則として全ての一般医療機関で外来診療を行う。その際、発熱患者とその他の患者の受診待ちの区域や診療時間を分けるなど、感染防止対策を徹底する。

 ただし、これらのことは「地域の実情に応じて行われる」とされていますから、地域によって対応が異なることが考えられます。お住まいの地域の相談窓口で正確な情報を入手するようにしてください。


<新型インフルエンザ相談窓口>

■厚生労働省 電話相談窓口(平日10時~18時)
 電話 03-3501-9031 FAX 03-3501-9044

■都道府県による相談窓口(2009年7月30日現在)
 http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/090430-02.html




ハイリスク者は肺炎球菌ワクチンの接種を

 今回発生した豚由来の新型インフルエンザA/H1N1は、全身にウイルスが感染するようなタイプではありません。感染力は強いものの、多くの感染者は、軽症のまま回復しています。症状は季節性のインフルエンザと似ている点が多く、抗インフルエンザウイルス薬の治療が有効とされていて、その点も初めのころの緊張感を薄れさせているのかもしれません。

 しかし油断は禁物。インフルエンザウイルスが型を変えながら広がり、より重症化しやすい型に変化する可能性も指摘されています。そうでなくても、前述したようにハイリスクの人が感染すれば、重症化する危険性が高いのです。多数の死亡例が出たメキシコでは、その多くが細菌性肺炎を併発していました。実は毎年のインフルエンザでも、高齢者が亡くなる場合は、細菌性肺炎が直接的な原因になっています。

 細菌性肺炎では肺炎球菌による肺炎発症の頻度が高く、しかも重症化しやすいため、日本では65歳以上の高齢者が肺炎球菌ワクチンの接種対象になっているのですが、知らない人も多く、接種率は高くありません。このため日本感染症学会は5月に緊急アピールを出し、65歳以上の高齢者と、慢性の呼吸器疾患や心疾患、糖尿病などの持病を抱えている人はこのワクチン接種を積極的に考慮するように呼びかけました。接種を希望する場合は、呼吸器科や内科の医師に相談してください。

 ハイリスクの人に限らず、新型インフルエンザは誰もが感染する危険があります。しかし感染しても新型かどうか気づかずにいることは少なくないはずです。感染を広げないためには、一人ひとりが感染に気をつけるとともに、体調の悪さを感じたら、まず電話で問い合わせてからかかりつけ医を受診するか、最寄の「発熱相談センター」に相談しましょう。感染が確認されたら、医師の指示に従い、外出自粛と自宅療養に努めることが求められます。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
小林 治先生


杏林大学医学部総合医療学講師
東京薬科大学大学院非常勤講師、日本呼吸器学会専門医、日本感染症学会専門医、独立法人医薬品医療機器総合機構専門委員。研究分野は細菌バイオフィルム感染症、インフルエンザ、感染制御。

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