子どものアレルギーは予防できるのか-早めにできるケアって何?

症状が姿を変えて次々に。早めのトータルケアが大事

体質と生活様式や環境の変化などがからみ合い発症。薬に加え、アレルゲン除去、食事療法などで発症抑制も

子どものアレルギー患者が目立つ。食事、住まい……生活様式の変化も一因

 アレルギー性の病気に悩む子どもの姿が目立ちます。実際、文部科学省の統計をみても、たとえばぜん息患者の割合は、幼稚園児から高校生までの各年代で10年前の2倍前後に増えています(「平成20年度学校保健統計調査」より)。とはいえ、ひと口にアレルギー性の病気といっても、その原因や症状はさまざま。体質的な要因ばかりではなく、現代の生活様式や環境の変化などがからみ合って発症を招いていることがあるようです。

 生活様式の変化といえば、まずあげられるのは食生活の欧米化です。たんぱく源として肉類を多く食べるようになり、動物性脂肪の摂取量も増えました。肉類はその消化や代謝の過程でアレルギー性の病気に悪影響のある物質を作り出すうえに、食べすぎるとアレルギーの元凶といわれる免疫グロブリンEという物質も多くでき、子どもにアレルギー性の病気をもたらしやすくするのです。

 住まいの環境もずいぶん変わりました。かつてはほとんどが木造の家で、戸や窓の建てつけが歪むと、すき間風が当たり前のように吹き込んできたものです。家の中にいて戸外の暑さ寒さをはっきりと感じとることができ、皮膚や粘膜は自然に鍛えられていたといえます。
 そこへいくと、今の家はアルミサッシなどで固めた戸や窓できっちり密閉され、エアコンによる温度管理で気温差がもたらす皮膚への刺激は少なくなったため、皮膚と粘膜の抵抗力は衰えざるをえません。そのうえ、気密性の高まった空間の中に漂うちり、ほこり、ダニ、カビなどのアレルギーをもたらす物質(アレルゲン)にさらされ続け、アレルギーを起こしやすい体質の人では病気が発症しやすくなります。

 家の中だけではありません。外に出れば、自動車や工場などから排出される化学物質で大気は汚れています。春や秋にはこれに花粉が加わり、呼吸器系のアレルギー病が起こりやすくなっています。

 また、最近注目されている説に「衛生仮説」があります。衛生環境の改善や少子化に伴い、乳幼児期に感染症にかかるリスクが低下したことで、かえって正常な免疫機能の発達を抑えてしまい、アレルギーリスクを高めてしまったのではないかとする考えです。

アトピー性皮膚炎から始まるアレルギーマーチ

 子どものアレルギー疾患は、こうした外的な要因とともに、親からアレルゲンに敏感なアレルギー体質を受け継いでいて発症するケースが多いのです。しかも年齢とともにアレルギーの姿を変えて次々と発症することがあり、このような現れ方を「アレルギーマーチ(アレルギー疾患の行進)」と呼んでいます。
 アレルギーマーチはほとんどの場合、アトピー性皮膚炎に始まり、気管支ぜん息、アレルギー性鼻炎というように変化していきます。

 アトピー性皮膚炎は、ほとんどが生後4~6カ月で発症します。頭、顔、胸などに現れやすく、やがて手足の関節部の内側のほうに現れるようになり、5~6歳くらいになると減ってきます。気管支ぜん息は生後9カ月くらいから発症しやすく、約70%の患者は12~15歳で治まります。アレルギー性鼻炎は幼児期の後半くらいからの発症が多く、アレルゲンはほとんどがダニですが、最近は花粉がアレルゲンになる例もみられます。

 このように成長に伴ってアレルギーの形は変わっても、基礎にはアレルギー体質という素因がありますから、治療は症状の改善と体質の改善を同時に行っていくことになります。

早い時期からトータルケアを

 アレルギー体質の人は、日本では全人口の3分の1ほどいるとみられています。けれども、その人たちがみんなアレルギー性の病気を発症するわけではありません。アレルゲンになるものを除去したり体の抵抗力を高めるといった努力によって、発症を抑えることができます。

 薬による治療のほかに、食事療法、環境整備、体の鍛錬などを組み合わせたトータルなケアで取り組むことがアレルギー性の病気治療の大きな原則です。アレルギーマーチを防ぐためにも、トータルケアをできるだけ早い時期から実践していくことが必要です。

 子どものアレルギーへのトータルなケアには、医師による治療に加え、家族の助力、周囲の人の協力が欠かせないことはいうまでもないでしょう。子どもと最も長い時間一緒にいる母親はもちろんのこと、父親もアレルギーへの理解を深め夫婦一緒になってアレルギーに取り組む姿勢を見せることは、子どもの心にも良い影響を与えます。
 兄弟姉妹がいる場合はアレルギーの子との関係で平等感を保てるように、どちらにも冷静な愛情をもって接するように注意しましょう。祖父母が同居しているなら、主治医の治療方針と指導に沿って、一緒に協力するよう理解を促す努力も大切です。

 (『新版 アレルギー全書~子どもから大人までの治療と生活』正木拓朗著、法研より)

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
正木 拓朗先生


マサキ小児科アレルギー科院長
東京慈恵会医科大学卒業後、同大学小児科でアレルギーの診療研究に携わる。平成10年東京都練馬区東大泉にマサキ小児科アレルギー科を開業。日本アレルギー学会専門医、日本小児科学会専門医、日本小児保健協会幹事など。著書に『新版 アレルギー全書~子どもから大人までの治療と生活』(法研)。

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