子どもが風邪から中耳炎を発症しやすい理由-急性中耳炎の対処法

慢性化させないためには、完治するまできちんと治療を

体が未発達な乳幼児に起こりやすい、鼻の奥から耳管を通って病原菌が中耳へ、こじらせると治療は長期に

中耳炎の多くは、かぜに続いて起こる

 「ひな祭り」の3月3日は、「耳の日」でもあります。耳の健康障害でポピュラーな「中耳炎」は、乳幼児がかかりやすい病気です。細菌やウイルスが鼓膜(こまく)の内側の中耳に侵入して炎症を起こしますが、かぜに引き続いて起こることがよくあります。夜中の急な高熱や耳の痛みで泣いたり不機嫌になったり、赤ちゃんだとしきりに耳のあたりを触ったりするようなら、急性中耳炎かもしれません。

 急性中耳炎が乳幼児に多いのは、乳幼児が大人に比べてかぜをひきやすいこと。さらに、かぜをひいて鼻水が出ても上手にかめないため鼻水をすすり上げがちなことです。
 鼻の奥にたまった鼻水は耳とつながっている耳管(じかん)というパイプに炎症を起こします。体が未発達な乳幼児の耳管は大人のものより相対的に太く、しかも鼻と耳がほぼ水平に位置しているため、細菌やウイルスが鼻から中耳に侵入しやすいのです。

 急性中耳炎の予防のためにも、鼻水をすすり上げないように気をつけましょう。また、鼻を強くかみすぎても、耳管を通って細菌やウイルスが中耳に侵入してくるので、鼻をかむときは片方ずつ強く息みすぎないようにかむことです。何より、かぜをひかないように注意することが大切です。

耳が痛い、よく聞こえない、熱がある……

 中耳内の炎症がひどくなって化膿し、中耳にたまった膿(うみ)が鼓膜を破って出てくることがあります。これが「耳だれ」です。耳が痛い、塞がった感じがする、よく聞こえない、熱が出る、耳だれが出る――などが急性中耳炎の主な症状です。

 子どもが夜中に熱や痛みを訴えたら、氷枕や冷たいタオルで耳のまわりを冷やしてあげるとよいでしょう。寝かせていて泣きやまない赤ちゃんは、抱っこしてあげると泣きやむことがあります。これは寝かせていると頭部に血液が集まってうっ血状態になり、痛みが強まるからです。
 ひとまず子ども用の鎮痛解熱薬を服用させ、翌朝、小児科か耳鼻咽喉科に受診しましょう。原因が細菌感染であれば抗生物質が投与されますが、最近は抗生物質の効かない菌が増えていて治療を難しくしています。痛みがひどいときなどは、鼓膜を切開して膿を出すこともあります。

滲出性中耳炎になってしまうと治療は長期に

 すっかり治るには治療を始めてから2週間前後かかりますが、症状がおさまったからと途中で通院や服薬を勝手にやめてしまってはいけません。もしも中耳内に弱い菌や滲出液(しんしゅつえき)がまだ残っていてそのままにしておくと、炎症の治り切らない中耳の粘膜から滲出液がしみ出してたまる「滲出性中耳炎」に移行することがあります。医師に完治を確認してもらうまでは、通院や服薬をきちんと続けるようにしましょう。

 滲出性中耳炎の主な症状は聞こえにくい、耳が塞がった感じがする、自分の声がこもって聞こえるなどです。急性中耳炎のような痛みがないので気づきにくく、難聴の原因にもなります。子どもが、話しかけても返事をしなかったり、テレビの音量を大きくしたがるようなら、滲出性中耳炎を起こしている可能性があります。
 とくにかぜをひいたあとなどは、子どもの耳の聞こえに注意するようにしましょう。アレルギー性鼻炎などの鼻の病気やアデノイド(咽頭扁桃=いんとうへんとう)の肥大がある場合は、滲出性中耳炎になりやすいため、いっそうの注意が必要でしょう。

 治療では中耳腔に空気を送り込んで乾かす通気療法を行いますが、滲出液がなかなか消失しない場合には、鼓膜を切開して中耳内にたまった滲出液を抜きます。毎週1~2回は診察を受けることになり、完治するまでに長い時間がかかりますが、途中で通院をやめてしまうと症状の再発から聴力が低下し、言葉の発達が遅れることにもなりかねません。
 乳幼児の中耳炎を決して甘くみないようにしてください。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
川上 一恵先生


かずえキッズクリニック院長
1987年筑波大学卒業。筑波大学附属病院、日立製作所水戸総合病院、茨城県立こども病院を経て現職。医学博士、日本小児科学会専門医、子どものこころ相談医。子どもの病気を診るだけでなく、育ちを見守るような診療を心がけています。

コラムに関連する病名が検索できます。

子どもが風邪から中耳炎を発症しやすい理由-急性中耳炎の対処法 関連コラム

この記事を見ているひとはこんな記事も見ています

子どもが急性中耳炎になりやすい理由とは-症状や治療法について

3月3日は「耳の日」でした。耳の健康への関心を高めるために、半世紀以上も前に制定されたものです。ところで、耳の健康を損なう病気で、いちばんポピュラーなのは「中耳炎」でしょう。中でもその割合が高い急性中耳炎は、乳幼児から小学校低学年くらいの... 続きを読む

これってもしかして水虫?初期治療のコツと完治させるポイント

日本人の5人に1人は水虫にかかったことがある 水虫というと足が不潔な人がかかるもの、と思っている人もいると思いますが、日本で水虫にかかったことのある人は約2500万人といわれています。つまり、4~5人に1人は水虫経験者。家族で誰かが水... 続きを読む

耳の構造と隠れた役割とは? 音をキャッチする仕組み|耳の病気

来月3月3日は「耳の日」。普段はあまり気にも留めていない耳のことを、1年に1度くらいはちょっと意識してみてはいかがでしょう。まずはその構造。耳は目に見える部分からその先の奥のほうまでを、外耳、中耳、内耳と3つの区域に分けられます。
外... 続きを読む

ヘッドホンが難聴を招く3つの原因-ダメージを受けた聴力は治らない

最近の携帯音楽プレーヤーは、本当に高機能になりましたね。何百、何千曲と保存でき、長時間の連続使用も可能です。体を動かしても音がぶれないため、ジョギング中に聴いている人も見かけます。
でも、日常的にヘッドホンやイヤホン(以下、ヘッドホン)... 続きを読む

うつ病は抗うつ剤を飲まずに完治できる? 抗うつ剤の副作用-うつに効く漢方

以前より治療法が増えてきているうつ病ですが、治療の中心となるのは、薬物療法。抗うつ剤を用いた治療が多く行われています。軽い症状の場合は、漢方が有効に働くことも。この代表的な2つの治療薬についてまとめました。 薬で不足した脳内神経伝達物... 続きを読む

3月1日から8日は「女性の健康週間」 健康管理や早期治療のために

3月1日から8日は「女性の健康週間」です。それに先立ち開催された記者説明会で、女性の健康週間委員会委員長である清水幸子氏により趣旨説明が行われ、引き続き堀口貞夫氏(主婦会館クリニック院長・元愛育病院院長)により「現代女性のための基礎体温活... 続きを読む

エコな暮らしは体にもやさしい-CO2削減のためにできる生活の工夫

7月7日から9日まで、日本が議長国となって開催される洞爺湖サミット(主要国首脳会議)の主要テーマの一つは環境です。今や待ったなしの状況になっている「地球温暖化」の加速は、化石資源(石油、石炭、天然ガスなど)とエネルギー利用で成り立っている... 続きを読む

乳幼児がかかりやすいロタウイルス

ロタウイルスってどんなウイルス
ロタウイルスは、約10000分の1mm(100ナノメートル)の大きさのウイルスで、感染者の下痢便の中1gの中に数千億個も含まれているとされています。ラテン語で「車輪」の意味をもつ「ロタ」の名前の通り、顕微... 続きを読む

風邪には抗生物質は効かない? 細菌とウイルスの違いがポイント

抗生物質が効くのは細菌だけ 「風邪をひいたから病院に行って抗生剤をもらって早く治そう」と思って病院に行ったのに、抗生物質は処方されなかった……こんな経験はありませんか? 風邪には基本的に抗生物質は不要です。その理由を知るには、細菌とウ... 続きを読む

首のコリをほぐし目の疲れをとる-仕事の合間に簡単ストレッチ

「仕事の合間に簡単ストレッチ」では、2回にわたって肩こり・首こり解消のストレッチを紹介してきました。今回は、首の後ろのこりや痛みはもちろん、目の疲れや頭痛にも効くストレッチです。
首の後ろが凝って硬くなると、首のこりや痛みだけでなく、... 続きを読む