脱毛を完治させたいならストレス対策も-心の疲れを取るコツとは

ストレス対策、外見上の問題解消でQOL向上へ

ストレスで脱毛が進み、それが気になってさらに悪化……。皮膚の病気の予防や改善にはリフレッシュが大切

皮膚は“心のキャンバス”

 感動的なシーンに「鳥肌が立つ」、恥ずかしさのあまり「赤面する」、緊張が高まり「手に汗を握る」……。周囲の環境がもたらす心の動き(情動)によって、皮膚はさまざまに変化します。これを東京女子医科大学の檜垣祐子教授は「皮膚は“心のキャンバス”」と表現しています。

   このような患者さんの心理的な側面(精神的なストレス)や、その背景となっている社会的な側面に配慮しながら、皮膚の病気の診断や治療を行うのがサイコダーマトロジー(精神皮膚科学)です。
 皮膚は、日常生活でも触ったり見たりすることができる臓器です。ストレスだけで皮膚の病気になることはありませんが、ストレスで必要以上に皮膚を触ったり(掻いたり)すると、皮膚の病気の引き金になったり悪化や再発の原因になり、患部を見ることでストレスが高まってさらに悪化する――といった側面も配慮しようというものです。

 サイコダーマトロジーはもともと、アトピー性皮膚炎の治療に広くとり入れられてきましたが、ストレスはこのほかの多くの皮膚の病気とも関係が深いことが明らかです。円形脱毛症やびまん性脱毛症・薄毛といった、女性に身近な「脱毛症」もそのなかの一つです。

自己免疫異常で「円形脱毛症」、「びまん性脱毛症」のベースには加齢も

 円形脱毛症は、髪が丸く抜け落ちるのが特徴で、通常は1~2カ所だけのことが多いのですが、多発するケースもあります。それぞれがつながってしまうと、頭髪全体が薄くなってしまいます。遺伝的な素因のほか、自己免疫異常と呼ばれる、本来侵入してきた外敵を攻撃する免疫システムが、髪に栄養を供給する(皮膚のなかにある)毛包を攻撃してしまうことが原因となり、発症の引き金や再発・悪化にストレスがかかわっていると考えられています。このため円形脱毛症は、外用薬で脱毛症そのものの治療を行いながら、心身のリフレッシュ対策を加えることで悪化や再発を防止することになります。

 一方、女性に多いびまん性脱毛症の多くは女性型脱毛症とも呼ばれ、髪が全体的に薄くなってしまうのが特徴です。遺伝的な要因や加齢をベースに、ストレスが抜け毛や薄毛の悪化因子となることがあります。加齢の影響があるため、多くの女性がこの悩みを抱えており、成人女性の半数が抜け毛や薄毛を気にしているとみられています。
 しかし、医療用の発毛薬は男性にしか使えないため、びまん性脱毛症に確実な治療法は今のところまだありません。このため、円形脱毛症の場合と同様心身のリフレッシュ対策や、食事・睡眠・運動・禁煙といった生活習慣の改善、市販の発毛薬の利用などで改善や悪化防止を図っていくことになります。確実な治療法がないため、世間にはさまざまな「治療法」情報が飛び交っており、医師に相談し正しい情報を得ることが大切です。

 どちらの脱毛症も予防や改善には、ストレスの発散やストレスを避ける工夫が欠かせません。いったん発症してしまうと外見上の問題や再発の不安が高まり、生活の質・満足度(QOL)の低下を招きやすくなります。社会生活に支障が出るとそれがさらにストレスになって脱毛症を悪化させてしまう、といった悪循環に陥るケースも珍しくありません。このため、ウィッグ(かつら)の装着(医療用もある)やバンダナ・キャップの利用、髪型の工夫などによる“おしゃれ”で外見上のストレスを軽減し、外出や人と会う機会を増やしてQOLを高める対策も治療の一環といえます。

皮膚の不調を、「立ち止まって」というサインに

 脱毛症の引き金になるストレスは、職場なら上司や同僚との人間関係、責任の重さ、失業への危機感など、家庭なら親の病気・介護、嫁姑関係、夫婦関係、子育ての負担感、そして夫の退職も当てはまることがあります。もちろん自分自身の体調不良や持病もリスクになります。
 これらはいずれも誰にでも起こり得ることです。それがうまく解決できなかったり、かわすことができないときに、脱毛症をはじめとする、ストレスが引き金となるさまざまな心身の異常を発症してくるのです。

 このようなときには、ちょっと考え方を変えてみることが大切です。檜垣教授はストレスを感じる女性に次のような“チェンジ”をすすめ、「髪を含む皮膚(体)の不調は心の不調の現われ。立ち止まってライフスタイルを見直して、というサインとして受け止め、体に合わせ心も休めてみましょう」と呼びかけています。

【ストレス対処、ここをチェンジ!】
●完璧を目指すがうまくいかないとすぐにあきらめる
●あいまいさが我慢できない
●石橋を叩いて“壊してしまう”(考えてばかりで行動ができない)
●まわりに配慮するあまり、自分を見失ってしまう
●あるべき自分の姿が先にあり、それに自分を合わせようとする
●極端な好き嫌い

以上のような考え方を見直し

●すべてをやろうとしない(60点主義)。ただし、途中で投げ出さない
●優先順位をつけて、できるところから始める
●結果にこだわりすぎない、くよくよしない
●まわりに合わせるのでなく、自分がどうしたいのかを考える
●今の自分を認め、そこからスタートしてみる
●自分で自分を評価する(ほめる)

【それでもストレスの蓄積を感じたら……】
●友人や家族の支えが大切
●医師やカウンセラーなど専門家に相談
●つらい体験も、「何か得ることがある」と前向きにとらえる
●試練のときと思ってじっくり取り組む
●たいしたことではないと楽観的にとらえる
●気晴らしやストレス解消を取り入れる

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
檜垣 祐子先生


東京女子医科大学附属女性生涯健康センター教授
1982年東京女子医科大学卒業後、同大学皮膚科に研修医として入室。84から86年スイス ジュネーブ大学皮膚科および免疫病理学教室に留学。その後、東京女子医科大学皮膚科講師、助教授を経て、2005年同大学附属女性生涯健康センター副所長、助教授(皮膚科兼務)。07年同センター教授(皮膚科兼務)。医学博士、皮膚科専門医。専門分野はアトピー性皮膚炎、皮膚心身医学。主な所属学会・研究会は、日本皮膚科学会、日本皮膚アレルギー学会、日本研究皮膚科学会、皮膚科心身医学研究会、日本医師会、日仏医学会など。

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