急に耳が聞こえなくなる難病-突発性難聴は早めの治療が大事

片耳が突然聞こえなくなり、耳鳴りやめまいを伴うことも

有名ミュージシャンたちを見舞った厄介な病気、音を脳に伝える感覚細胞で障害、治療開始はできるだけ早く

原因は不明、いわゆる「難病」の一つ

 昨日まで健康には何の不安もなかったのに、朝起きたら片方の耳が詰まった感じであまり聞こえなくなっていた……。こんなふうに、全く突然に耳が聞こえなくなるのが突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)。昨秋、シンガー・ソングライターのスガシカオさんが突発性難聴になっていることを告白したと思ったら、ロックバンド ハウンド・ドッグのボーカル・大友康平さんも発症していたことをブログで打ち明けました。ほかにも多くの有名人が発症してニュースになっているように、誰にでも起こるかもしれない厄介な病気です。

 突発性難聴がなぜ厄介かといえば、老若男女を問わず毎年3万5千人以上も発症しているといわれているのですが、原因がよくわかっていないのです。また、難聴の程度が重い、めまいを伴うといった場合や高齢者では症状が改善しにくく、厚生労働省が指定するいわゆる「難病」の一つになっています。

内耳の障害で起こるとされ、メニエール病と間違われることも

 音が私たちに伝わるルートをみてみましょう。耳の構造は外側から外耳、中耳、内耳と3つの部位で構成されています。外界からの音は外耳に入り、空気の振動として鼓膜に伝わり、中耳の耳小骨(じしょうこつ)を経由して内耳の蝸牛(かぎゅう)と呼ばれるカタツムリのような形をした器官に届きます。音の振動は蝸牛の感覚細胞を刺激して電気信号に変わり、聴神経を通して脳に伝わって音として認識されます。

 以上の音が伝わるルートのどこかで異常があると難聴や耳鳴りなどが発生し、突発性難聴は蝸牛の感覚細胞が障害されて起こると考えられています。しかしその原因として指摘されているのは、内耳の血管での血流障害やウイルス感染によるものではないかという推測の域を出ていません。

 症状の特徴は、文字通り突然に起こる難聴や耳鳴り、耳のふさがり感などです。ほとんどの場合、片方の耳に起こります。また、蝸牛には体のバランスを保つ働きのある三半規管(さんはんきかん)が隣り合っているので、難聴や耳鳴りとともにめまいが起こることがあります。
 このことから、やはり難聴や耳鳴りも伴うメニエール病と間違われることがありますが、突発性難聴は起こるとしても1回だけで再発はしないのに対し、メニエール病だとくり返し起こるという違いがあります。

治療開始が早いほど回復しやすい

 突発性難聴の治療の主体は薬物療法で、ステロイドホルモン薬、循環改善薬、ビタミン剤などが投与されます。ここで大事なことは、できるだけ早く治療を始めること。治療開始が早いほど治りやすく、発症してから48時間以内に適切な治療を始めれば、8割近くが治るといわれています。しかし発症から2週間たつと治りが悪くなり、4週間以上たつと回復は難しくなることを覚悟しなければなりません。
 ほとんどの場合、片方の耳だけに起こるため、通常の会話に不自由が感じられないようだと「何となく聞こえが悪いけど……。」と放置され、そのうちに、めまいや耳鳴りに見舞われて異常に気づくことがあるようです。突然難聴が起こったら、すぐに耳鼻科に受診すべきでしょう。

 突発性難聴は発症前に精神的なストレスや肉体的な疲労を抱えていることが多いという傾向があるので、心身ともに安静を保ちストレスを解消することが大切です。
 治療は通院でも可能ですが、難聴、耳鳴り、めまいが強く障害が高度の場合は、安静も含めて入院治療で集中的に治療を受けることが有効です。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
大河原 大次先生


耳鼻咽喉科 日本橋大河原クリニック院長
昭和34年東京生まれ。成蹊高校卒業。昭和60年帝京大学医学部卒業後、日本医科大学耳鼻咽喉科入局。その後、伊勢崎市民病院耳鼻咽喉科医長、神尾記念病院副院長を経て、平成18年12月耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック開業、現在に至る。医学博士。耳鼻咽喉科専門医、補聴器認定相談医、身体障害者福祉法指定医。

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