胃潰瘍の原因がピロリ菌-胃潰瘍を予防・改善する5つの生活習慣

季節も生活環境も「変わり目」がストレスを増やしがち

胃潰瘍の主な原因はピロリ菌感染。痛み止め薬との関係も明らかに。ストレスが加わると発症リスクが増大

ピロリ菌感染で胃粘膜が萎縮、潰瘍へ

 日本人の胃潰瘍(かいよう)の最大の原因は、ピロリ菌感染です。ピロリ菌に感染すると、それだけで胃の粘膜が赤く充血してきます(表層性胃炎)。この状態が長く続くと、胃の粘膜が萎縮し(萎縮性胃炎)、喫煙や過度なストレス、強いアルコール・大量飲酒、塩辛い食べ物、刺激物などによって悪化。胃潰瘍や十二指腸潰瘍、さらには胃がんを引き起こすことがわかっています。
 すなわち、萎縮性胃炎があると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんのリスクが高くなり、そのおおもとになるのがピロリ菌感染、というわけです。

 ピロリ菌の感染には、水道の未整備などの衛生状態が深くかかわっています。現在50歳代以上の人たちが子どもの頃には、まだ衛生状態が整っていなかったため、この世代では70%以上の人が感染しているとみられています。一方、若い世代での感染はほとんどないとされていますが、ピロリ菌に感染した親からの口移しの食事などで、乳児期に感染している可能性もあります。
 50歳代以上の人はもちろん、若い世代の人でも、胃潰瘍や胃がんになった家族がいるなどピロリ菌感染が気になる場合は、感染の有無を調べる検査を受けることをすすめます。「ストレスで胃が痛む」ことが多い人は、年齢に関係なくこの検査を受けてみるとよいでしょう。

 ピロリ菌感染が確認された場合はピロリ菌の除菌治療がすすめられますが、これまでは「胃潰瘍」や「十二指腸潰瘍」、「胃がん」などがなければ、健康保険を使ってピロリ菌の除菌治療を受けることはできませんでした。しかし最近になって、胃潰瘍の前段階である「慢性胃炎」でも保険が適用されるようになりました(2013年2月)。「慢性胃炎」の段階で除菌治療を受けることができれば、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんの予防につながります。

頭痛薬などの痛み止めの薬(NSAIDs)が胃潰瘍を起こしやすくする

 胃潰瘍の原因として最近増えているのが、痛み止めの薬の服用によるものです。これは非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs=エヌセイズ)と呼ばれるもので、関節リウマチの薬や多くの解熱鎮痛薬などがこれに当たります。
 NSAIDs は関節などの痛みを抑える一方で、胃粘膜では防御機構の破綻をきたすことがあり、この種類の薬は胃潰瘍・胃炎を引き起こすとされています。このため、通常は胃の弱い人(胃潰瘍になったことがある人など)では胃粘膜を守る薬を同時に服用します。

 NSAIDsは、関節リウマチの治療薬をはじめ医師の処方薬に多く使われていますが、最近は市販の頭痛薬などにも広く使われています。「頭痛もち」の人は、市販薬を手元に置いて、自己判断で服用するケースが多いと思われますが、間違ったNSAIDsの使い方を続けると、胃潰瘍のリスクを高めます。
 頭痛薬などの痛み止めの薬を受け取るときは、医師や薬剤師の説明をよく聞いて指示を守ってください。特に説明がないときは念のため、「この薬は胃に影響はないですか」「胃潰瘍の心配はありませんか」などと、こちらから尋ねてみましょう。

 胃潰瘍の典型的な症状は、食後の腹部の痛みですが、特に自覚症状がないまま進行しているケースもあります。痛み止めの薬を使っているとこうした痛みも感じにくく、胃の異常に気づきにくいので注意が必要です。
 腹部の痛み以外では、便の変化が胃潰瘍のアラームになります。潰瘍によって胃粘膜などから出血していると、便が赤黒くなります。痛み止めの薬をよく使う人は、胃の痛みに気づきにくい分、便の色の変化に気を配ってください。何より、自覚症状頼みにせず、内視鏡(胃カメラ)などによる胃の検査を定期的に受けることが望まれます。

ストレスや欧米型の食事などが発症の引き金に

 かつて、胃潰瘍はストレス病と考えられていましたが、ストレスだけで発症することはほとんどありません。ただし、発症を進める重大な引き金であることは確実です。
 このほか、脂肪やたんぱく質が多い、いわゆる欧米型の食事も胃潰瘍発症の引き金になります。こうした食事は、消化のために大量の胃酸を必要としますが、日本人はもともと胃酸分泌が少ないことから、欧米型の食事を続けていると、無理に胃酸を出そうとして胃の負担が大きくなり、胃潰瘍のリスクを高めます。

 食事をはじめ下記のような生活習慣を守って、胃潰瘍の予防と改善につなげましょう。

●胃潰瘍を予防・改善する生活習慣
(1)たばこは吸わない
(2)食事は(欧米型を改め)和食を中心に
(3)塩辛い食品、激辛食品など、刺激物は控える
(4)アルコールは適量を守る(適量は日本酒換算で1日1合まで。ビールなら1日に中びん1本まで。1週間に2日以上は休肝日をつくる)
(5)ストレス発散を兼ねて、1日20分程度のウオーキング(有酸素運動)を1週間に3日以上行う

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
河合 隆先生


東京医科大学教授
東京医科大学病院 内視鏡センター センター長
1988年東京医科大学大学院卒業。99年東京医科大学講師、2005年同大学助教授、08年同大学教授に就任。東京医科大学病院内視鏡センター センター長を兼務。専門は、食道がん・胃がんの診断と治療。ヘリコバクターピロリ感染症の診断と治療。日本消化器内視鏡学会評議員、日本消化器病学会評議員、日本ヘリコバクター学会評議員、日本胃癌学会評議員、日本消化器内視鏡学会附置経鼻内視鏡研究会世話人など要職兼務。主な著書に『経鼻内視鏡検査導入の手引き』『上部消化管内視鏡挿入・観察のポイント』『鼻から胃カメラde健康チェック―もう痛くない』などがある。

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