若年認知症の方と家族への支援とは-同じ病気の人同士が集える場所

若年認知症の方の、地域に必要な社会資源をつくる

必要なのは地域で集える居場所と働く環境。若年認知症の方への情報提供、地域の人への啓発活動を行うこと

若年認知症の方も「働きたい」「社会貢献したい」と思っている

 皆さんは若年認知症という言葉を聞いたことがありますか? 私が初めてこの言葉に出会ったのは、約9年前のことです。若年認知症とは、18歳から64歳までの間に発症した認知症のことです。認知症は、「状態」を示す用語であり、原因にはさまざまな疾患が含まれています。

 私が初めて出会った若年認知症の方は、若年性アルツハイマー病を発症された50代の男性でした。平均年齢約80歳の、女性の入居者が多い施設(認知症グループホーム)に、その男性が入居して来られました。50代の男性が高齢女性たちと一緒に生活しなければならない環境では、本人は「なんと場違いな場所に来たことか」と感じていてもおかしくはありません。

 若年認知症の方と施設で会話をしていると、「自分はまだ現役だ」「仕事に行かなければならない」「社会に貢献したい」などの発言が出てきますが、高齢者の方々の会話の中では、このような言葉を聞くことはあまりありません。
 その背景には若年認知症の方の、自分が一家の大黒柱であり、家のローンや子どもの養育費など、家計が大変な時期に自分が遊んでいるわけにはいかない、また、自分のすべての能力が失われていく前に、できることをしておきたいという気持ちがあります。

草の根活動として、若年認知症の方の居場所、働く環境を作る

 私は、このようなニーズや社会課題を考えていくとき、現状の制度の中では解決できないのではないかと考えました。そこで、日本で初めて奈良に設立された「若年認知症の家族会 朱雀の会」の代表にお会いし、地域で暮らす若年認知症の方々の実態を聞いて、地域に必要な社会資源の形をイメージすることができました。

 まず、地域には若年認知症の方の利用できるサービスが少なく、病院と自宅との往復以外行き場がなかったので、若年認知症の方が集える居場所をつくること。その居場所で、本人や家族の思いにある「働く」「社会貢献できる」環境を作っていくこと。その中で、若年認知症の方の必要な情報提供や啓発活動を行っていくこと。その3つのコンセプトで、新たな社会資源を作ろうと考えました。
 そして、できたのが「若年認知症サポートセンター絆や」です。介護保険法や障がい者自立支援法に基づくサービスではなく、草の根の活動として、2009年4月に奈良でオープンしました。

 最初に、「若年認知症サポートセンター絆や」に来られた若年認知症の方々と、居場所のあり方を一緒に考え、自分たちのできる範囲内で働く形を考えました。次に、会社の理念を作り、ユニホームを作り、働く時間を決めていきました。そして、若年認知症の方々と共に、地域に出かけ、仕事をもらうための営業をしていきました。

 やがて地域の方々から、自宅の庭掃除や洗車など、単発で短い時間ながらも仕事の依頼をいただきました。その後、エアコン掃除や、ビルのオーナーからは貸部屋のメンテナンスなどの依頼もいただくようになり、働く環境が整ってきました。以前教壇に立つ仕事をされていた方が、2年前に「絆や」のメンバーに参加されたのをきっかけに、当事者の立場や思いを大学や福祉施設で講演し、講演料をいただけるようにもなりました。

商店街のイベントで、ライブハウスで、認知症啓発活動を

 啓発活動としては、本人たちから、認知症を知らない人たちに認知症のことを理解してほしいというニーズがあり、商店街のお祭りと協同で認知症啓発活動を行うようになりました。
 昨年は、マイケル・ジャクソンのダンストリビュートを、認知症の人たちが商店街の人たちと一緒になって踊りました。ダンスを通じて、認知症の方の状態を地域の方々が理解し、ダンサーも地域の人たちも必要な支え方を一緒に考えてくれました。
 商店街の理事長からは、「講座も大事だけど、商店街などのイベントの中で、地域の人たちに理解してもらうことのほうが、無理をせず、肩の力を入れずに、認知症の理解ができる。今後も一緒に商店街を、地域を盛り上げていこう」と声をかけていただきました。

 また、毎月1回スポニチプラザというユーストリームスタジオで、ロックバンドや劇団、キッズモデルと一緒に、約70名のお客さんの前で若年認知症啓発イベントを行っています。
 若者にも理解してもらうために、若年認知症の方の思いや家族の思い、支援者の思いを、バンドのメンバーに曲にしてもらい、その曲を観客と一緒に歌うことで若年認知症の活動を支えようとする若者も増えてきました。若年認知症の人がライブハウスに行くと、バンドのファンの人たちが支援してくれますし、劇団の公演に行っても劇団側が配慮してくれ、最後まで楽しく観劇できるようになりました。
 啓発活動をして私が学んだことは、「地域の人々との自然体での交流」、「がんばらないボランティア」、「楽しめる社会活動」をキーワードに、活動していくことの大切さでした。

 このような活動を通して、奈良県の行政の方々とも交流ができ、県内の若年認知症の実態調査を行っていただきました。その結果をもとに、県が主体となって、県内の企業の人事担当者に若年認知症についての理解を求めていく啓発事業を行うようになりました。

スポーツを取り入れた認知症啓発イベント、家族の働く場の提供も行いたい

 最後になりますが、私たちの今後のプロジェクトとして、スポーツを取り入れた認知症啓発イベント(認知症フレンドシップクラブ・RUN伴)や、地域の農業法人の方々と協同で、本人・家族にとって必要な働く場を提供していくことを考えています。
 家族にとっても、介護をしながらの就労は難しく、経済的な苦しさが重くのしかかっています。本人を支える家族の環境を改善することも、本人の生活を安定させるためには大切なことです。

 たとえば、広大な土地や森林を持つ高齢者の中には、土地の管理や森林保全が難しくなって困っている方もいます。そのような場所の活かし方を、企業、行政、商店街・NPOをはじめとする地域の団体などのメンバーで共に話し合って、地域の未来についてアイディアを出し合い、試行錯誤しながら、若年認知症の社会課題を解決していきたいと考えています。

 失敗を繰り返しながらですが、最終的には若年認知症の方だけでなく、現代の社会で働く環境と家庭環境のバランスが取りにくくなり、働くことができなくなっている方々に対して、働くことのできる環境を提供できるよう活動していこうと考えています。

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
若野 達也さん


若年認知症サポートセンター絆や 代表
1973年生まれ。96年日本福祉大学卒業後、医療ソーシャルワーカーとして働く。2004年奈良市に認知症グループホーム「古都の家 学園前」を設立、代表を務める。2009年「若年認知症サポートセンター絆や」開設。大阪教育大学非常勤講師。精神保健福祉士、介護支援専門員。全国若年認知症家族会・支援者連絡協議会幹事、日本認知症グループホーム協会奈良県支部事務局長などを務める。

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