風疹の予防接種が重要な理由とは-妊娠中の風疹は赤ちゃんに危険

先天性風疹症候群はワクチンによってゼロにすることができる

妊娠する可能性のある女性はもちろん、20~40歳代の男性、妊婦の夫や同居の家族もMRワクチンを打とう

風疹が大流行中です!

 去年から今年にかけて、全国で風疹患者が急増しています。2013年6月19日現在、今年に入ってからの全国の風疹患者報告数は約1万800人と、すでにこの時期で昨年1年間の合計数の4倍以上にも上り、流行の勢いは止まりません。患者は大人がほとんどで、特に20~40代の男性患者が多くなっています。
 これまで流行の中心は東京や大阪でしたが、地方にも広がり始めました。例年風疹の流行はこれからの季節が本番なので、さらに大流行するのではないかと心配しています。

 妊娠中の女性が風疹に感染すると赤ちゃんに障がいを残すことがありますが、ワクチンで免疫をつけておけば、ほぼ100%予防ができます。
 風疹のために障がいを持って生まれる赤ちゃんをゼロにするために、成人男性は風疹含有ワクチン(MRワクチン)を接種しましょう! もちろん、妊娠する可能性がある女性は当然です。いつ妊娠するかは誰にもわかりませんから・・・。
 アメリカやカナダなどでは、しっかりしたワクチン制度によって、風疹の患者自体がほとんどいません。よって、風疹によって障がいを持った赤ちゃんはゼロになっています。

音のない世界にいる赤ちゃん

 先日、妊娠中に母親が風疹に感染したために先天性風疹症候群になって生まれてきた6カ月の赤ちゃんに会ってきました。よく笑うし、元気いっぱいのかわいい子でしたが、音がほとんど聞こえていないそうです。
 母親は、上の子を産んだときに産科医から、「風疹のワクチンをしたほうがいいよ」と一応は言われていたそうです。しかし、そこまで重要なことだとは思わずにいて、ワクチンを接種しないまま妊娠して風疹にかかってしまいました。そのときに大きな病院で検査をしてもらった結果「ほぼ大丈夫」と診断されたのですが、生まれてみたら音が聞こえていないことがわかりました。

 周囲に風疹の人は誰もいなくて、どこからうつったのかわからず、通勤途中の電車の中なのかなと考えているそうです。「風疹のワクチンを打っていれば・・・」と、自分をどうしても責めてしまうとおっしゃっていました。
 上の子のお産に携わった産科医や助産師、看護師のアドバイスが足りなかったかもしれないなと想像します。私も産科医の一人として、予防の重要性についてきちんと説明することの大切さを改めて感じています。

先天性風疹症候群とは

 先天性風疹症候群とは、「風疹に対する免疫のない女性」が妊娠初期に風疹にかかったときに、お腹の赤ちゃんに障がいを残す病気です。妊娠に気づくか気づかないかの妊娠初期では80%以上の確率で障がいが残ります。主な障がいは、生まれつき耳が聞こえない、生まれつき目が見えない、心臓の奇形の3つです。
 風疹の大流行に巻き込まれて、去年から少なくとも12人の先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれました。ワクチンで予防できたはずだと考えると本当に残念です。

 私の勤務している病院でも、風疹の流行を実感しています。これまでに妊婦の夫が2人、妊婦の父親(50歳代後半)が1人、風疹になりました。全員が成人の男性です。赤ちゃんに障がいが残る可能性がある人もいましたが、検査結果などから赤ちゃんへの感染はないと判断して、産むことになりました。それでも、生まれてみないと実際のところはわかりません。

風疹はどんな病気?

 風疹はくしゃみやせきで飛んだ唾や手についたウイルスによって感染します。感染する力はインフルエンザの5倍とされています。2~3週間の潜伏期間の後、発熱とともに発疹(ブツブツ)が出現し、耳の後ろや首のリンパ節が腫れることが特徴です。発疹は通常3日程度で消失するので「三日ばしか」とも呼ばれています。

 かぜと間違われたりするほど軽く済むことも多いとされていましたが、大人の場合は数百人に1人程度の確率で重い合併症を起こすことがあることが、今回の流行でわかりました。一方で、感染しても症状のでない人が約15%存在するとされています。
 困ったことに、風疹のウイルスには体にブツブツが出る5日ほど前から感染させる力があります。つまり、発疹が出てから会社や学校を休んでも、既に周りの人にうつしてしまっていて、手遅れということです。感染拡大を止めるにはワクチンしかないのです。

ワクチンが必要なのはどんな人? 費用はどれくらいかかるの?

 成人の男性はほとんどの人が接種したほうがいいです。下記をよく読んで、「ワクチンを接種しなくてよい人」以外はワクチンを接種しましょう。また、風疹単独ワクチンではなく、「MRワクチン」を接種しましょう。
 「MRワクチン」は「麻疹(M)」と「風疹(R)」の両方を予防できます。麻疹(はしか)は、それ自体がとても怖い病気です。麻疹は妊婦に感染すると30%くらいが流死産になります。麻疹の感染力はとても強いので、風疹と同時に予防することをすすめます。

●MRワクチンを接種しなくてよい人
(1)過去に「2回」のワクチン接種の「記録がはっきり残っている」人
(2)過去に風疹にかかったことが、「絶対に確実」である人
【注意!】「小さい頃に風疹にかかった」という親の話の50%は他の発疹の出る病気と勘違いしているという調査があります。はっきりしない場合は、安全を考えてワクチンを打ちましょう。
(3)採血検査で風疹の抗体があることが確認されている人
(出産したことのある人は、妊娠初期の検査で、風疹HI抗体価が「32倍」、「64倍」、「128倍」・・・の人)

●MRワクチンを接種すべき人
(1)いつか妊娠するつもりの女性
(2)20~40歳代の男性(風しんの予防接種を受けた人が少ない年代で、今回の流行の中心になっている)
(3)妊婦の夫や同居の家族
(4)前回妊娠時の検査で、風疹HI が「8未満」、「8倍」、「16倍」の女性

 たとえ子どもの頃に風疹にかかったことがあると言われても、親が勘違いしていることも多いので安心してはいけません。私の担当した妊婦のご主人も親からは「風疹にかかったことがある」と言われていたそうです。また、予防接種を受けていたとしても、10年もたつと免疫が弱くなっている人もいます。将来妊娠を考えている人やその周囲の人はワクチンを接種しましょう。

 免疫の有無をはっきりと知りたい人、ワクチンを接種したほうがいいか迷っている人は、風疹の免疫の有無を採血で調べることができます。内科、産婦人科など、どの診療科でも検査は可能です。費用は4000円くらいです。しかし、現在のように大流行している状況では、検査結果を待つ間に感染する可能性もあるので、最初からワクチンを接種するほうがおすすめです。

 MRワクチンの費用は9000円くらいです。現在は多くの自治体が費用の一部を助成してくれています。市町村のホームページで確認してください。
【参考】助成を行っている自治体一覧(東京都感染症情報センター)

妊娠を考える前に、風疹ワクチンを

 日本の予防接種制度における風疹ワクチンの接種対象は、以前は女子中学生のみでしたが、現在は男女とも対象になり、接種時期も1歳のときと小学校に上がる前の2回に変更されました。この制度変更の狭間で、風疹のワクチンを接種せずに、免疫がないまま大人になっている人がたくさんいます。
 妊娠はなかなか計画的にはいかないものです。そのつもりはなかったのに妊娠することもよくありますから、妊娠する可能性のある女性はワクチンを接種しましょう。そして、悲しい思いをする人をゼロにするためには、流行の中心になっている成人男性こそがワクチンを接種することが必要です。

 実は産まれてくる赤ちゃん100人のうち2人くらいには何らかの障がいがあります。原因もわからずに障がいを持って産まれてくる子どもたちには、できる限りの治療を行ってあげたいと思う一方で、予防できる障がいは予防してあげたいと思います。

【参考】
 NHK(http://www.nhk.or.jp/
 NHK web news特設「ストップ風疹」のページ(http://www3.nhk.or.jp/news/stopfushin/)(ほとんどの情報にここからアクセスできます)

(編集・制作 (株)法研)

【執筆】
太田 寛先生


慈桜会 瀬戸病院産婦人科
北里大学医学部公衆衛生学 助教
1989年京都大学工学部電気工学科卒業後、日本航空株式会社羽田整備工場に勤務。2000年東京医科歯科大学卒業。茅ヶ崎徳洲会総合病院産婦人科、日本赤十字社医療センター産婦人科勤務を経て、2009年北里大学医学部公衆衛生学助教に。2012年瀬戸病院産婦人科勤務、現在に至る。平成21年度厚労科研費補助金「新型インフルエンザ対策(A/H1N1)妊娠中や授乳中の人へ」パンフレット作成委員。日本医師会認定産業医、日本産科婦人科学会専門医。

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