エコノミークラス症候群、4つの予防法|こんなタイプの人は特に注意!

脚の静脈にできた血栓がはがれ、肺に運ばれ動脈を詰まらせる

乗り物に長時間乗り脚を動かさない、水分不足などが原因に。中高年や生活習慣病の人は特に注意が必要

脚にできた血栓が肺で詰まり、命の危険もあるロングフライト血栓症

 旅行や帰省などで長時間乗り物に乗るとき気をつけたいのが「ロングフライト血栓症」(深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症)。同じ姿勢で長時間座っていることで、脚の静脈に血栓(血のかたまり)ができ、それが血流に乗って肺まで運ばれ、肺動脈を詰まらせる病気です。

 かつては、飛行機のエコノミークラスで起こりやすいとされたことから「エコノミークラス症候群」と呼ばれていました。しかし、実際には座席の種類に関係なくビジネスクラスでも起こるため、最近では「ロングフライト血栓症」という名称が一般的になっています。さらに、飛行機の搭乗時に限らず、自動車や長距離バスで長時間の渋滞に巻き込まれたときなどにも見られます。お盆や年末年始など国内の移動ではむしろ、自動車やバスのほうが長時間になりやすいため、注意を怠らないようにしてください。

 では、この病気はどのようなメカニズムで起こるのでしょうか。
 血液は心臓のポンプ作用で動脈に送り出され、体の隅々まで送られ、静脈を通って心臓に戻ります。そして、脚の血液を心臓に送り返すポンプの役割をしているのが脚の筋肉運動です。歩行や脚の運動でふくらはぎの筋肉が伸びたり縮んだりすることで血流を促し、血液が心臓に戻るのを助けています。しかし、じっとしていると脚の血液はほとんど動かず、血液は流れていないと固まりやすいのです。

 そのため、狭い座席などに同じ姿勢のままずっと座りつづけていると、ふくらはぎの深部静脈(ヒラメ筋にある静脈)の血液が流れにくくなり、血液が固まって血栓ができやすくなります。ロングフライト血栓症の経過は以下のとおりです。

(1)ふくらはぎの深部静脈に血栓ができ、徐々に大きくなる(深部静脈血栓症)
(2)血栓が大きくなって静脈内を長く伸び、太ももや骨盤内の深部静脈まで塞いでしまう
(3)大きくなった血栓が、立ち上がった際などにはがれ落ちて、静脈内をさかのぼり、心臓を経て肺の動脈を詰まらせる(肺血栓塞栓症)

 血栓ができても、小さいうちは無症状かごく軽症で気がつかないこともあります。血栓が大きくなると、ふくらはぎや太ももが腫れ、強い痛みが出ます。そして血栓が肺の動脈を詰まらせると、息切れや呼吸困難、失神などを起こし、最悪の場合死亡することもあります。

ロングフライト血栓症を起こしやすい人、起こりやすい環境

 一般に、ロングフライト血栓症は、乗り物に乗る時間が6時間以上になるとき起こりやすいといわれ、時間が長くなるほど発症率が高まることがわかっています。ほかにも、空気の乾燥や水分不足、体を締めつける服装などの条件が重なると、発症しやすくなります。
 また、中高年者、生活習慣病の人、喫煙者など、血液がかたまりやすくなっている人は血栓もできやすく、ロングフライト症候群の発症リスクが高くなります。

<ロングフライト血栓症のハイリスク者>
 ・中高年者
 ・肥満の人
 ・喫煙者
 ・がんや糖尿病などの病気がある人
 ・妊娠している人、出産直後の人
 ・ピルを飲んでいる人
 ・手術を受けたばかりの人、大きなケガや骨折などをしたあと
 ・下肢に静脈瘤(りゅう)がある人
 ・過去に血栓症を起こしたことがある人
 ・1週間以内にスポーツなどで脚を強く蹴られた人

<ロングフライト血栓症が起こりやすい状況・環境>
 ・乗り物に6時間以上乗る
 ・長時間脚を動かさない
 ・空気が乾燥している
 ・水分不足、お酒を飲んでいる
 ・体を締めつける服装をしている
 ・血流が悪くなる姿勢をしている(脚を組む、前かがみなど)

水分補給や脚の運動でロングフライト血栓症を防ぐ

 たとえ健康な人でも、水分が不足すると血液が粘っこくなって、血栓ができやすくなります。とくに飛行機の中は乾燥しているためリスクが高まります。
 血栓予防には、水分補給のほかに、ゆったりした服装をする、できるだけ脚を動かすことなどが大切です。弾性ストッキングやソックスの着用も予防に有効です。

【時間を決めて水分を補給する】
・水分が不足すると血栓ができやすいので、こまめに水分補給を。のどが渇くのを待たず、2時間おきにコップ1杯の水を飲むなど、時間を決めて水分補給を行うとよい。
・コーヒーやお茶などカフェインの入った飲み物、アルコールには利尿作用があり、脱水を促すので飲みすぎ注意。

【ゆったりした服装、血流を妨げない姿勢で】
・血流を妨げないよう、体を締めつけない服装で。ガードルはつけず、ベルト、ブラジャーなどはゆるめに。移動時だけゆったりした服に着替えるのもよい。
・脚を組んだり、不自然な姿勢で寝てしまうと、血流を妨げるので避ける。

【体を動かして血流を促す】
・血流を促すため、2時間に1回を目安に、立って歩くとよい。自動車ならパーキングエリアなどで休憩、飛行機や電車なら少し離れたトイレに立つなどして。
・立てないときは、座ったまま足踏み、つま先・かかとの上げ下げ、足の指でじゃんけん(グー・パー)などの運動で足を動かすとよい(1時間ごとに5分ほど行う)。

【気分転換や深呼吸でリラックス】
・緊張すると体がこわばって血流も悪くなるので、リラックスをこころがける。歩いたり、上記の体操をするのも気分転換になってよい。ゆっくりと腹式の深呼吸をするのも効果的。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
篠塚 規先生


千駄ヶ谷インターナショナルクリニック院長
日本旅行医学会専務理事
1975年千葉大学医学部卒業後、米国ピッツバーグ大学医学部勤務。米国ジョンズ・ホプキンス大学医学部留学、心肺蘇生法を世界中に広めたピーター・サーファーに師事。三愛病院副院長・外科部長を経て、2013年千駄ヶ谷インターナショナルクリニック開設。2001年日本旅行医学会設立、専務理事。アジアパシフィックトラベルヘルス理事。外科認定医、消化器外科認定医、麻酔科標榜医。日本旅行医学会認定医、英国救急医学教育認定医、国際旅行医学会認定医。

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