何度も確認したくなる、不安がつきまとう…強迫性障害の症状とは

施錠確認、手洗い・・・。くり返さずにいられない強迫性障害

おかしいと気づいているのにやめられない。日常生活に支障をきたすようなら、医師やカウンセラーに相談を

かぎをかけ忘れたのでは、汚れているのでは――不安を打ち消すための行為をくり返す

 家を出たあとで「鍵をかけ忘れたかもしれない」「ガスコンロの火を消し忘れたかもしれない」などと気になって引き返す。こんな経験は誰にでもあるでしょう。
 しかし、一度確認をして再び家を出たあと、今度は「確認したとき無意識にかぎを開けてしまったのではないか」などと不安になり、何度も家に戻って仕事に遅れたり、ついには外出できなくなってしまったら、それは「強迫性障害」という病気かもしれません。

 強迫性障害では、強い不安や恐怖、不快な考えが頭から離れなくなり(強迫観念)、それを打ち消すための行動を何度もくり返します(強迫行為)。その内容はさまざまで、次のようなものがよくみられます。

●戸締り、ガス・電気の消し忘れなどが不安になって何度も確認する
●ドアノブ、電車のつり革などを不潔だと感じて触れない、または触ったあと汚れが気になって何度も手を洗う
●すれ違った相手を傷つけたかもしれない、または自分が傷つけられるかもしれないなどと思い悩む
●身支度、仕事、家事などの手順が気になり、いつもと違うと初めからやり直す など

 こういった行動が習慣化し、次第にエスカレートして長い時間がかかるようになり、仕事や日常生活に支障を来すのが強迫性障害です。その特徴は、このような考えや行為はばかげている、いきすぎだと自分でもわかっていて、やめたいと思っているのにやめられないことです。
 あまり聞きなれない病名ですが、約50人に1人がかかるといわれ、決して珍しい病気ではありません。放置すると症状がエスカレートしやすく、約1/3の患者さんにうつ状態が認められるといわれています。思い当たることがあったら、早めに医師やカウンセラーに相談することをおすすめします。

脳の機能に偏りが生じて、不安感にとらわれる

 強迫性障害は、以前は強迫神経症と呼ばれ、神経質、完璧主義など性格だけの問題と考えられていましたが、現在では、脳の機能が病的に偏った状態であることがわかってきました。

 症状が重くなると、自分で確認するだけでは安心できず、家族(特に母親)などに確認させたり保証してもらうなど、周囲の人を巻き込んでしまうこともありますが、それは本人のわがままのせいではなく、病気のせいなのです。強迫性障害という病気が、本人だけでなく家族をも巻き込んでしまうような性質を持っているのです。
 しかし、家族が強迫行為を手伝ってしまうと、病気の支配力がますます勢いづくことがあるため、できるだけ最小限にとどめなければなりません。家族は本人の苦しさを理解して見守り、病院の受診や相談窓口の利用を支援していくことが大切です。

非薬物療法では、強迫行為をしないで過ごすことを練習していく

 強迫性障害の治療には薬物療法と非薬物療法があり、両者を併用することもあります。
 薬物療法では、脳の機能に関与する脳内神経伝達物質のうちセロトニン系だけに作用する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が主に用いられますが、少量の抗精神病薬が併用されることもよくあります。

 非薬物療法では、認知行動療法の一つである「曝露(ばくろ)反応妨害法」というトレーニングの効果が証明されています。これは、強迫観念を引き起こすような状況を避けずにあえて直面してわざと不安感をかきたて、“不安を下げるための行動”すなわち強迫行為をしないで過ごすという練習です。例えば「ドアノブを触った後、手を洗わないでいる」「外出し、外出後は心配でも確認しに戻らない」といったことを行います。
 この練習法では、最初のうちは強い不安がしばらく持続しますが、1時間もすると不安の勢いは自然に弱まるものであるということを体験できます。そして練習回数を重ねるごとに不安を感じにくくなっていきます。

 ただし、この練習方法は正しく理解して取り組まないと、十分な効果が得られないことがあります。また、強迫性障害以外の精神疾患においても強迫観念や強迫行為が認められることがあります。まずは精神科または心療内科を受診して、診断および治療についてきちんと相談することが大切です。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
宍倉 久里江先生


北里大学医学部精神科、駒木野病院医長
1994年山梨医科大学(現山梨大学医学部)卒。昭和大学病院および日本医科大学救命救急センターにて研修し、駒木野病院精神科医長、北里大学精神科助手を経て、2009年成瀬メンタルクリニック院長、13年より現職。精神科専門医、精神保健指定医。日本精神神経学会、日本行動療法学会、日本認知療法学会、日本統合医療学会(災害支援ボランティア登録)、日本臨床音楽医療研究会などに所属。共著に『不安症の時代』(不安抑うつ臨床研究会編、日本評論社)、『女性のうつ病がわかる本』(上島国利監修、平島奈津子編著、法研)など。

この記事を見ているひとはこんな記事も見ています

芸能人にも多い潔癖症は強迫性障害なの? きれい好きと強迫性障害の違い

ウェットティッシュや手の除菌ジェルを常に持ち歩いたり、電車やバスのつり革をハンカチで覆ってから掴んだり。これは単なるキレイ好き? または潔癖症? もしかしたら、強迫性障害かもしれません。その違いと治療法などをまとめました。 20歳代で発... 続きを読む

翌朝が違う!お風呂上りの【むくみ消し】足マッサージ5ステップ

もむと痛い場所には老廃物がたまっている 心臓から流れ出た血液の約7割は、重力で下半身にたまります。その血液を心臓を戻すポンプのような働きをするのがふくらはぎです。 血液は心臓に戻る時に、老廃物や余分な水分を回収してくれますが、代謝が落... 続きを読む

「痩せて自信を持ちたい!」その考えこそが、ダイエット挫折の原因かも・・・

こんにちは、コラムニストの愛子です!スリムになって自信を持ちたいと思う女性はたくさんいらっしゃるかと思います。その気持ちはとてもよく分かりますが、もしかするとその考え方こそが、ダイエットを妨げる原因になっているかもしれません。今回は、人... 続きを読む

「うつかも?」そんなとき受診するのは、精神科?心療内科?心理カウンセラー?

新年度が始まって2カ月が過ぎ、まもなく梅雨入りを迎えます。職場や学校、住まいなど新しい環境へ適応しようとがんばった分、「ココロの疲れ」が見えてきやすい時期です。雨が続くなど、お天気が気分に影響することも少なくないようです。 しかし、心... 続きを読む

カウンセリングってどんなことするの? 料金や相談内容など

「カウンセリング」という言葉をこれまで一度も目や耳にしたことがない、という人は少ないでしょう。しかしその実際をはっきりとイメージできる人は、もっと少ないかもしれません。カウンセリングという言葉に触れる機会は一昔前よりは確実に増えているはず... 続きを読む

かぜをひきにくい人の習慣-免疫力を上げて生活習慣で予防する

かぜの予防法は、ウイルスに感染しても発症しないだけの免疫力を保つ発症予防と、ウイルス感染そのものを予防する感染予防の2つに分けられます。
かぜを一度ひくと、その原因となったウイルスに対して免疫ができ、同じウイルスには感染しにくくなりま... 続きを読む

暑くて火を使いたくない!そんな日はレトロキュートな「電鍋」におまかせ

暑さが増していくこれからの季節、火を使った調理などできればしたくない!
そんなこの時期におすすめの調理器具が台湾の「電鍋」。台湾では一家に一台あるという、蒸し料理や煮込み料理もできてしまう炊飯器で、1960年から販売されているロングセラ... 続きを読む

子どもの緊急事態のときに使用する電話窓口

子どもの思わぬトラブル
子どもは急な病気や怪我などのトラブルが多いもの。急な発熱や、嘔吐、下痢、湿疹などの病気の症状や、家庭内の事故による怪我、また、誤飲等による事故もあります。言葉で訴えることができる年齢ならともかく、乳幼児の場合は自... 続きを読む

電気をつけたままで寝ると大変なことに

肥満になるリスクが高くなる

肥満の自覚症状として頻度の高いものは呼吸障害です。睡眠時に、いびきや10秒以上の無呼吸が頻繁に認められ(睡眠時無呼吸(すいみんじむこきゅう)症候群)、日中の注意力障害、居眠りを起こしたりします。さらに重症... 続きを読む

怒りをコントロールする方法‐アンガーマネジメントの3つのポイント

最近、怒ったことはありますか? 腹を立てて物にあたる人、きつい言葉を相手にぶつける人、怒りを我慢してイライラしている人・・・。人間が生活する中で、怒りの感情を持つことは自然なことです。他人から自分の価値を評価されていないと感じたとき、自尊心... 続きを読む