胃の痛みや不快感は機能性ディスペプシアかも? どんな症状?

かつて慢性胃炎などと呼ばれた機能性ディスペプシアに治療薬

症状や原因は患者さんによって異なる。生活習慣の見直しと薬による治療で症状の改善を

食事に伴う症状と、食事に関係なく起こる症状がある

 胃もたれやみぞおちの痛みなどのつらい症状を繰り返すのに、内視鏡検査や腹部超音波検査を行っても胃の異常が見つからない――こんなときは、「機能性ディスペプシア」という病気を疑ったほうがいいかもしれません。かつては「慢性胃炎」や「神経性胃炎」、「胃下垂」などと診断されることが多かったのですが、実際は胃に炎症などは起こっていないことから、近年、このような病状を「機能性ディスペプシア」と呼ぶようになりました。

 機能性ディスペプシアの症状は、食事によるものと、必ずしも食事とは関係ないものの2つに大別され、複数の症状があらわれることもあります。

●機能性ディスペプシアの症状
【食事によるもの:週に3~4回以上、下記の症状が起こる】
・つらいと感じる食後のもたれ感:食べものがいつまでも胃の中にとどまっているような不快感がある。
・早期飽満感(ほうまんかん):食べ始めてすぐにおなかがいっぱいになり、少ししか食べていないのに、それ以上食べられなくなる。
【食事とは関係ないもの:週に1回以上、下記の症状が起こる】
・みぞおちの痛み:みぞおちに不快な痛みが起こる。
・みぞおちの灼熱感(しゃくねつかん):みぞおちが焼けるような不快感がある。

時間とともに症状が変化することも

 口から摂取した食べものは、食道を通って胃へ運ばれます。すると、胃は大きくふくらんで食べたものを一時的にたくわえ、ぜん動運動によって胃液と混ぜ合わせてドロドロのかゆ状にし、少しずつ十二指腸へと送り出していきます。
 機能性ディスペプシアの患者さんは、食べものが入っても胃が十分にふくらまなかったり、十二指腸への排出がうまくいかなくなって、早期飽満感や胃もたれが起こると考えられています。また、胃酸の過剰な分泌、ピロリ菌感染による胃粘膜の炎症、胃の知覚過敏(刺激に対して痛みを感じやすくなっている)のほか、脂肪分の多い食品やアルコールのとり過ぎ、喫煙、不規則な生活、ストレスなどの心理的要因も、上腹部の不快な症状の原因になるとされています。

 島根大学医学部内科学講座第二の木下芳一教授は、「同じ機能性ディスペプシアの患者さんでもそれぞれ症状は異なり、原因もさまざまです。また、最初はみぞおちの痛みが強くあらわれていたのに、1カ月後には胃もたれに悩まされるなど、時間の経過とともに症状が変化することも珍しくありません」といいます。

生活習慣の見直しのほか、症状に応じた薬物療法を行う

 機能性ディスペプシアと似た症状は、胃がんや胃潰瘍(かいよう)などでもみられることがあるため、まずは問診や、内視鏡検査、腹部超音波検査などで、原因となる病気がないかを調べることが大切です。

 治療では、食生活の見直しやストレス解消、規則正しい生活を送るなどといった生活指導に加え、必要に応じてピロリ菌の除菌や薬物療法が行われます。
 薬物療法では、症状が胃もたれ中心の場合は、まず、胃の運動機能を改善する消化管運動機能改善薬を用いて、効果がみられなければ胃酸分泌抑制薬を使用します。一方、みぞおちの痛みを訴える患者さんに対しては、胃酸分泌抑制薬で症状が改善しなければ、消化管運動機能改善薬を用います。これらで症状がよくならない場合は、抗うつ薬や抗不安薬などが処方されます。

 2013年6月には、消化管運動機能改善薬であるアコチアミド(一般名)が発売されました。この薬は、世界で初めてとなる機能性ディスペプシアを適応症とする治療薬で、健康保険が適用されます。これまでの消化管運動機能改善薬は、機能性ディスペプシアに対する有効性がはっきりしませんでしたが、アコチアミドは、早期飽満感や胃もたれの改善に効果が確認されています。
 木下教授は、「新しい薬の登場で、多様な原因の機能性ディスペプシアに対応が可能になりつつあります」と期待しています。

 機能性ディスペプシアは日本人の10~20%にみられるという報告がありますが、病気に気づかず放置している人も少なくないようです。命にかかわる病気ではないものの、つらい症状が続くと生活の質(QOL)が低下してしまいます。気になる症状があるときは、早めに医師に相談することをおすすめします。

(編集・制作 (株)法研)

【取材協力】
木下 芳一先生


島根大学医学部内科学講座第二 教授
1980年神戸大学医学部卒業。87年米国ミネソタ州メイヨークリニックにリサーチフェローとして留学。三木市民病院消化器科医長、神戸大学医学部老年科講師などを経て、97年より島根医科大学(現 島根大学)医学部内科学講座第二教授。2012年より島根大学医学部附属病院副院長を兼任。日本内科学会指導医、日本消化器病学会指導医、日本消化器内視鏡学会指導医、日本超音波医学会指導医、日本消化管学会胃腸科指導医。

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