過活動膀胱ってどんな病気? 主な3つの症状と治療法

尿が少ししかたまっていないのに強い尿意が起こる

40歳以上の8人に1人が悩んでいる。生命の危険はないが、精神的ダメージが大きく、QOLを低下させる

主な症状は「突然起こる強い尿意」「トイレが近い」「尿がもれる」

 「過活動膀胱」という病気を知っていますか? OAB(Overactive Bladderの略)ともいい、2002年に国際尿禁制学会(排尿機能などに関する国際学会)で定義が大幅に変更されたいわば新しい病名です。主な症状は、我慢できないほど強い尿意が急に起こる「尿意切迫感」、トイレが近い「頻尿(ひんにょう)」、尿意切迫感に伴って尿がもれる「切迫性尿失禁」など。過活動膀胱全体としてはやや男性に多いのですが、切迫性尿失禁は女性に起こりやすい傾向があります。

 尿は腎臓で作られ、膀胱で一時的にためられ、やがて排出されます。健康な人の場合は、尿が一定量たまるとその情報が脳に送られ、膀胱が収縮して尿を出します。しかし過活動膀胱では、さまざまな原因により、尿が少ししかたまっていないのに膀胱が収縮したり、突然強い尿意が起こります。

 日本排尿機能学会の調査では、40歳以上の男女の12.4%、約8人に1人に過活動膀胱が認められたことから、日本の過活動膀胱の患者さんは810万人に上ると推定されています。この病気を持つ人の割合は男女ともに加齢に伴って増加します。
 推定される患者数に対して、実際に治療を受けている人は極めて少なく、「年だから仕方ない」とあきらめたり、「恥ずかしい」と誰にも相談せず我慢している人が多いものと思われます。

 過活動膀胱は命にかかわる病気ではありませんが、症状が進めば日常生活や仕事に支障をきたし、外出や人に会うのがためらわれるなど、生活の質(QOL)を大きく低下させます。特に尿もれがあると精神的なダメージも大きく、本人にとってはとてもつらい病気なのです。

 次のような症状が一つ以上ある人は過活動膀胱の可能性があります。
 ●尿をする回数が多い
 ●急に尿をしたくなって、我慢が難しいことがある
 ●我慢できずに尿をもらすことがある

(過活動膀胱診療ガイドラインより)

 頻尿や尿もれは、膀胱炎や感染症、尿路結石、前立腺がん、子宮がんなどの病気でも起こります。こうした病気を見逃さないためにも、思い当たる人は早めの受診をすすめます。男性の多い泌尿器科には行きづらいという女性は、尿もれの専門外来がある婦人科や、女性泌尿器科外来などを受診するとよいでしょう。

原因は加齢による排尿機能の衰え、前立腺肥大症(男性)、骨盤底のゆるみなど

 過活動膀胱の原因は、パーキンソン病や脳卒中、脊髄の障害などによって、脳と膀胱を結ぶ神経回路に障害が起きている「神経因性」と、それ以外の「非神経因性」に分けられます。
 「非神経因性」には、加齢による排尿機能の衰え、前立腺肥大症による尿路通過障害(男性)、骨盤底(こつばんてい)のゆるみなどがありますが、原因がはっきりしないケースも多く見られます。

 骨盤底とは、骨盤内の膀胱や大腸、女性では子宮、腟(ちつ)などの臓器を下から支えるハンモック状の筋肉群・靭帯などのことで、体のほかの部位同様に加齢や運動不足によって衰えます。特に女性は妊娠・出産などで傷んだりゆるんだりしがちで、その影響が閉経後になって症状として現れてきます。
 つまり、骨盤底のゆるみは、女性に多い「腹圧性尿失禁」(おなかに力が入ったときに尿がもれる)や、支えきれなくなった臓器が下がったり外に飛び出したりする「骨盤臓器脱」など、女性の泌尿器科領域のいろいろな病気の原因になります。
 女性が妊娠・出産後に体をいたわらなくてはいけないのは、骨盤底のダメージを回復させるためという理由もあるのです。骨盤底が回復していない産後1~2カ月の時期にウェストを強く締め付けるような衣類を身に着けることは避けるのがいいでしょう。

 肥満や便秘、慢性的なせきなどで腹圧を強くかけることや、ウェストを締めつける服なども、おなかを圧迫して骨盤底に負担をかけ、骨盤底のゆるみの原因になります。日常生活を見直し、トラブルの原因となる生活習慣を改善することも、頻尿や尿もれの予防・改善には重要です。

膀胱訓練や骨盤底筋体操などとともに、薬物療法を行って症状改善

 過活動膀胱の症状改善には、「行動療法」「理学療法」「薬物療法」などが行われ効果をあげています。

●行動療法
 膀胱訓練:尿意を感じても我慢し、トイレに行く間隔を長くする訓練。我慢する時間を少しずつ長くして膀胱の容量を増やす。
 排尿日誌:排尿のたびに尿量を量り、排尿した時刻、排尿量、水分摂取量などを記録する。3日分もつけると自分の排尿パターンがつかめ、頻尿や尿もれの原因が推測できる。膀胱訓練の記録にもなり、排尿間隔が長くなっていることがわかると自信につながる。診察時に持参すると診断の助けになる。

●理学療法
 骨盤底筋体操:肛門(や腟)を締めたりゆるめたりすることを繰り返し、骨盤底筋を強化する運動療法で、男女ともに効く。体操は立っても、座っても、横になってもできるので、通勤電車の中、仕事中、寝床の中でなど、日常生活に組み込むと続けやすい。腹圧性尿失禁や骨盤臓器脱の方も行うとよい。

 理学療法にはほかに、電気や磁気、低周波などを使って筋肉を刺激する方法がある。

●薬物療法
 抗コリン薬:膀胱の筋肉を収縮させる物質の働きを抑え、強い尿意を和らげる。

 β3受容体作動薬:膀胱の緊張をゆるめ、膀胱容量を大きくして尿をたくさんためられるようにする。

 このほか、原因や症状に応じて、前立腺肥大症の薬や漢方薬が使用される。

 突然の強い尿意に伴って尿もれがある場合は、下着につけて使用する尿もれパッドや、吸収パッドのついた下着などが市販されているので利用します。尿もれパッドは尿の吸収が生理用品に比べて格段に早く、臭いも抑えられるため、生理用品で代用せず専用のものを使うことが大切です。さまざまな吸収量のパッドがあるので、尿もれの量に応じたものを使うとよいでしょう。パッドによる皮膚トラブルのある方は、布製のナプキンが向いている場合もあります。
 せきなどで尿がもれる腹圧性尿失禁では手術が効果を上げています。主治医とよく相談しましょう。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
福本 由美子先生


済生会奈良病院・松原徳洲会病院婦人科医
1986年奈良県立医科大学卒業。同大附属病院、東大阪市立総合病院、湘南鎌倉総合病院、松原徳洲会病院の産婦人科勤務を経て、大阪中央病院泌尿器科・ウロギネセンターで産婦人科医としての経験を生かし、女性泌尿器科診療に携わった。現在は済生会奈良病院・松原徳洲会病院で婦人科医として診療を行う。医学博士。日本産科婦人科学会認定専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本性科学会認定セックス・セラピストなど。共著に『女性泌尿器科外来へ行こう』(法研)、『30歳からのわがまま出産』(二見書房)など。

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