不登校の原因は「起立性調節障害」かも? 気をつけたい4つのこと

「朝起きられない」、「夜寝つけない」のは自律神経の病気?

なまけ癖や仮病などと誤解されやすい起立性調節障害は「体の病気」。まず病気を正しく理解することが大切

思春期前後の子どもに多いが、気づかれにくく誤解されやすい

 お子さんが「朝なかなか起きられず、午前中調子が悪い」、「夜寝つけず毎日夜ふかししている」といったことで困っている親御さんは少なくないでしょう。つい「夜更かしするから朝起きられないんだ!」と怒りたくなりますが、そうとは言い切れない場合もあります。

 「起立性調節障害」(Orthostatic Dysregulation;OD)という病気ををご存じですか? 朝起きたときや急に立ち上がったとき、長時間立ったままでいるときなどに立ちくらみやめまいを起こしやすいほか、次のような症状が見られます。立っていると気分が悪くなったり失神する、入浴時や嫌なことがあると気分が悪くなる、動悸(どうき)・息切れ、朝なかなか起きられず午前中調子が悪い、顔色が悪い、食欲不振、腹痛、倦怠感(けんたいかん)、頭痛、乗り物酔いしやすい、など。
 症状は午前中に強く夕方から夜は回復して元気になります。また、暖かい時期に悪化して寒い時期は回復する傾向があります。

 起立性調節障害は小学校高学年から高校生くらいの思春期前後の子どもに多く、男子より女子に多く見られます。日本学校保健会が2010年に行った調査によると、起立性調節障害の発症率は中学校で急増し(男子16.9%、女子25.6%)、高校生ではさらに高くなる(男子21.7%、女子27.4%)という結果でした。
 しかしこの病気はまだ認知度が低く、単に気づかれにくいだけでなく、周囲から大変誤解されやすい病気でもあります。朝起きられず遅刻してしまい、午後から夜にかけて次第に調子がよくなり、なかなか寝つけず、ついテレビやゲームで夜更かしといった具合で、「なまけ癖」「仮病」などと誤解を招きやすいのです。
 そのため親から強く叱責されて家族関係が悪化したり、遅刻が多いことなどがきっかけとなって、不登校や引きこもりになったりするケースも見られます。不登校児の3~4割はこの病気が原因と言われています。

 起立性調節障害は多くの場合大人になると自然に治りますが、周囲から誤解され叱られて過ごすのはどんなにつらいことでしょう。朝が苦手なお子さんがいたら様子をよく観察して、思い当たることがあれば、起立性調節障害を疑って専門医を受診することをすすめます。

自律神経のバランスの崩れや日内リズムのずれによって症状が起こっている

 起立性調節障害は、急に立ち上がったり、長時間立っていると脳や全身の臓器への血流が悪くなることで起こる「体の病気」であることがわかっています。主に自律神経のバランスが崩れたり、日内リズムがずれることでさまざまな症状が起こっていると考えられています。

 自律神経には体を活動させるように働く交感神経と、逆に体を休ませるように働く副交感神経があり、互いにバランスよく働くことで体の大事な機能をコントロールしています。また、朝は交感神経が活発に働いて体を活動的にし、夜は副交感神経が活発に働き体を休ませるリズムを「日内リズム」と言います。

 誰でも起立したときには重力の影響で血液が下半身に移動し、その結果血圧が低下します。このとき健康な人では交感神経が活性化して下半身の血管が収縮し、心拍数は増加して、血圧は短時間で元に戻ります。
 しかし起立性調節障害では、起立直後は交感神経が活性化せず、血圧が低下したまま脳や全身への血流が悪くなります。このため、めまいや立ちくらみを起こしたり、気分が悪くなったりします。脳に血液が十分回らないため思考力や集中力も低下します。(ただし起立性調節障害には、起立時の血圧低下はなく心拍数が著しく増加するタイプなどいくつかのタイプがあり、メカニズムも少しずつ異なります。)

 また起立性調節障害では自律神経の日内リズムが後ろにずれ込み、午前中は交感神経が活性化せず、午後から遅れて活性化してきます。そのため午前中はボーっとして調子が悪く、午後は夜にかけてしだいに調子が上がり、深夜になっても体が活動モードで眠れないのです。

 思春期に起立性調節障害が多いのは、体が急激に成長して自律神経のバランスが崩れやすいためと考えられます。また、精神的ストレスも自律神経のバランスを崩し、起立性調節障害を悪化させる要因となります。

治療は病気の正しい理解から。薬物療法や心理療法を組み合わせることも

 起立性調節障害は「体の病気」であるため、「気持ちを強くもつ」とか「叱咤(しった)激励する」といったことでは効果は期待できず、専門医の治療が必要です。

 治療はまずカウンセリングを行い、子どもと親に病気を正しく理解してもらうことから始まります。この病気では、子どもは症状に悩まされ不安になっているのに、親は「仮病ではないか」と疑っていることが多いため、病気の正しい理解が何よりも大切なのです。親や教師の理解が得られると子どもの不安が取り除かれ、症状の改善につながります。
 そのうえで、次のような日常生活上の注意や、運動に関する指導などが行われます。

●起き上がるときは頭を下げてゆっくり
―寝た状態や座った状態から起き上がるときは、急に立ち上がらずゆっくりと動く
―特に朝寝床から出るときは、頭を下げて起き上がり、頭を下げたまま腰をかがめて歩き始める

●塩分、水分は十分とる
―塩分は1日10~12グラムと多めにとる(血圧の低下を予防する効果がある)
―水分は1日1.5~2リットルになるよう、こまめにとる

●規則正しい生活リズムをつくる
―夜ふかしをせず、一定の時間に寝床につくようにする
―朝はカーテンを開けて部屋を明るくし、日の光を浴びる
―日中はだるくても横にならない
―携帯電話やテレビ、パソコンは使用時間を決め、やりすぎを防ぐ

●毎日運動をする
―調子の良くなる夕方から夜に、散歩やストレッチなどの軽い運動を行う

 症状が軽い場合はこれだけで改善することもありますが、改善しない場合や症状が強い場合には薬物療法が行われることもあります。メンタル面に問題がある場合は、心のケアや心理療法が有効です。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
仮屋 暢聡先生


まいんずたわー メンタルクリニック 院長
1985年鹿児島大学医学部卒業。東京都立松沢病院医員、東京都立中部総合精神保健福祉センター医療科科長、東京都福祉保健局精神保健福祉課長、松下東京健康管理センターメンタルヘルス科などを経て、現職。企業の顧問医、自治体の嘱託医などを兼務。精神保健指定医。社団法人ゼンコロ監事、社会福祉法人東京コロニー評議員などを務める。著書に『危ない呑み方・正しい呑み方』(マイコミ新書)、『うつ予備群 こんな人が危ない』(阪急コミュニケーションズ)など。

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