発達障害の一つ ADHDとは? 問題児と誤解される症状と対処法

ADHDは「不注意」「多動衝動性」を特徴とする発達障害

落ち着きがなく、授業中歩き回るADHD。「わがまま」「しつけができていない」は誤解で発達障害の一種

ADHDは発達障害の一つ

 もしもお子さんや身近な子どもたちのなかに、授業中教室を歩き回るとか、カッとしてすぐ手が出るといった行動で本人も周囲も困っているようなことがあったら、それはADHDによるものかもしれません。

 ADHDは日本語では注意欠如多動性障害(注意欠如多動症)といい、発達障害の一つです。発達障害とは、脳の機能が関係する生まれつきの特性によって、物事のとらえ方、行動パターンなどに特徴がある状態をいいます。

 発達障害にはADHDのほかに、自閉症やアスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)、学習障害(学習症)などがあり、これらの異なる発達障害の特徴が少しずつ重なって見られることも少なくありません。

 発達障害の程度が軽度の場合など、大人になって社会に出てから気づかれることもあります。

ADHDの特徴は「不注意」と「多動衝動性」

 ADHDは次に挙げる「不注意」と、「多動衝動性」のうちのどちらか一方、または両方を特徴とし、一般的に知能は正常範囲で、学習障害を合併することが多いといわれています。

●不注意
 注意力が足りない、集中力が続かない、忘れっぽい → その結果、授業中ぼーっとする、忘れ物が多い、約束を忘れる など

●多動衝動性
 落ち着きがない、じっとしていられない、考えずに行動してしまう、待つことができない → その結果、授業中教室を歩き回る、おしゃべりがやめられない、順番が待てない、カッとするとすぐに手が出る など

 このうち「多動衝動性」は成長とともに落ち着いてくることが多いのに対し、「不注意」は大人になっても続くことが多いといわれます。

ADHDの子は「問題児」、「しつけができていない」と誤解されやすい

 ADHDの原因はまだはっきりとはわかっていませんが、思考や感情のコントロール、注意力、短期記憶などをつかさどる脳の機能が十分働かないことなどによると考えられています。

 こうした生まれつきの脳の機能が原因で、ADHDの子どもは注意を払ったり自分の行動をうまくコントロールすることができず、友達と仲良く遊んだり話を静かに聞くといった状況に適した行動をとることが難しいのです。

 そのため集団生活や勉強で支障を来しやすく、わがまま、乱暴者などと問題児扱いされたり、しつけができていないと見られたりしがちです。特に多動衝動性が強い子どもでは、ものを壊したり自分を傷つけたりしてしまうこともあり、非行とみなされることもしばしばです。

 しかし、これらの行動は本人が意図したものではなく、育て方やしつけとも関係ありません。むしろ本人は周囲となじめず孤独感に悩まされたり、頻繁に叱られて自信をなくしたり、生きにくいと感じていることも多いのです。

ADHDは学齢期のこどもの3~5%にみられる

 実はADHDはめずらしい病気ではありません。発症率は統計データによって幅がありますが、学齢期の子どもの3~5%に見られ、女の子よりも男の子に多いといわれています。

 ただしADHDが疑われるような問題行動も、性格的なものが原因である場合もあります。素人判断でADHDと決めつけたりせず、保育士や教師、スクールカウンセラー、養護教諭などに相談のうえ、小児神経科や精神科など専門医の受診がすすめられます。
 地域の子育て支援センターや発達障害者センターなどでも相談に応じています。

ADHDの治療には周囲の理解とサポートが欠かせない

 ADHDと診断されたら、行動療法や環境改善などを組み合わせた治療を中心に行います。これらは本人の長所を伸ばし苦手なところを克服できるようにトレーニングや支援をしていくもので、家族だけでなく教育関係者など周囲の人の理解とサポートが欠かせません。

 成長期の子どもへの薬物療法は最小限にとどめられますが、日常生活に支障を来したり、事故の恐れがあるときなどは、症状を軽減させる薬の使用が検討されることもあります。

 ところでADHDの人には、好奇心旺盛、行動的で芸術・スポーツに秀でるなど優れた面を持つ人も多く、たとえば発明王のエジソンもADHDだったのではないかと考えられています。
 こうした優れた面を伸ばしていくためにも、周囲が子どもの状態をきちんと理解し、適切な支援をしていくことが大切です。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
仮屋 暢聡先生


まいんずたわー メンタルクリニック 院長
1985年鹿児島大学医学部卒業。東京都立松沢病院医員、東京都立中部総合精神保健福祉センター医療科科長、東京都福祉保健局精神保健福祉課長、松下東京健康管理センターメンタルヘルス科などを経て、現職。企業の顧問医、自治体の嘱託医などを兼務。精神保健指定医。社団法人ゼンコロ監事、社会福祉法人東京コロニー評議員などを務める。著書に『危ない呑み方・正しい呑み方』(マイコミ新書)、『うつ予備群 こんな人が危ない』(阪急コミュニケーションズ)など。

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