増加する梅毒患者-予防法と感染した場合の初期症状とは?

性行為で感染する「梅毒」、妊婦の感染は流産の原因にも

梅毒は性感染症、進行すると脳や神経が侵される怖い病気、妊婦の感染は流産や先天性障害の原因にも

ここ数年で梅毒の患者数が急増している

 「梅毒(ばいどく)」が増えています。若い世代にはあまり耳慣れない病気かもしれませんが、主に性行為(男女間の性器によるセックス、口によるオーラルセックス、肛門によるアナルセックスなどを含む)で感染する性感染症の1つです。
 国立感染症研究所によると、2013年の患者数は1,226人で、前年の875人から約1.4倍、2010年の621人からは約2倍と大幅に増加しました。
 患者の約8割は男性で20~30歳代に多く、女性は20歳代に多くみられます。

欧米同様、日本でも男性同士の性行為で広がる傾向

 梅毒は日本をはじめ多くの先進諸国で減っている傾向にあり、過去の病気のようにみられていました。ところが近年は欧米で、男性同士の性的接触によって感染が広がっているという報告があります。

 今回の日本の集計でも、男性の感染経路の9割近くが性的接触で、そのうちのほぼ半数が男性同士によるものであることがわかりました。女性の感染経路も7割近くが性的接触ですが、男女間によるものが9割近くを占めています。

梅毒は無症状の時期があるため感染に気づかない人も

 梅毒は、梅毒トレポネーマと呼ばれる細菌が、おもに性行為によって粘膜や皮膚の小さな傷などから体内に侵入して起こります(キスでも感染することがあります)。
 感染して約3週間で、感染したところに硬いしこりができ、かいようになります。リンパ節が腫れることもありますが、これらの症状は数週間で自然になくなるので感染に気づかない人も少なくありません。
 その後、4週間から3カ月すると全身にバラの花びらのような発疹や丘疹(きゅうしん)などが現れることが多く、この時点で気づくことが多いようです。

 治療には、抗生物質のペニシリンを飲み続けるという方法が確立されており、治療期間は初期ほど短くて済みます。
 現代では重症化することは少ないといわれていますが、放っておくと皮膚や筋肉にゴムのような腫れができたり、脳や神経が侵されたりします。

梅毒に感染した赤ちゃんには死産や流産、早産の危険も

 梅毒に感染した妊婦が適切な治療を受けないと、胎盤を通しておなかの赤ちゃんも感染する危険が高まります。赤ちゃんが感染すると死産になったり、流産や早産の危険があります。また、赤ちゃんが内臓や骨、神経、目、耳などに先天的な障害(先天梅毒)をもって生まれてくる可能性が高くなります。

 感染した妊婦がペニシリンによる治療を受ければ、生まれてくる赤ちゃんも同時に治療できていると考えられています。ただし、妊婦がペニシリンにアレルギーがある場合には別の抗生物質が使われますが、この薬は胎盤を通ることができないので、生まれた赤ちゃんは改めて治療を受けなければなりません。

予防にはコンドーム、不特定多数との関係は危険

 梅毒の感染を予防するには、セックスのときコンドームを正しく使うことが基本です。ただし、それでも100%予防できるものではないといわれますから、感染しているかどうかもわからない不特定多数の相手と関係を持つことは大変危険な行為です。

 また、オーラルセックスも感染の危険があります。そのことはあまり知られていないようで、感染が広がる一因になっていると指摘されています。

感染していたらパートナーも必ず治療を

 梅毒に感染していないかどうかを調べてもらうには、男性は泌尿器科、女性は産婦人科を受診します。また、梅毒にかかっているとエイズウイルス(HIV)にも感染しやすくなります。
 梅毒の急増を受け、最近は無料・匿名で受けられるHIV検査のなかで梅毒検査も受け付ける保健所もあります(厚生労働省研究班提供「HIV検査相談マップ」(www.hivkensa.com)参照)。

 妊娠中の女性は、妊娠初期(4~12週)の妊婦検診に梅毒検査がありますから、必ず受けるようにしましょう。

 万一、感染していることがわかったら、パートナーには必ず伝えなければいけません。感染を知らずにパートナーが治療を受けないままだと、自分とパートナーで感染を繰り返す“ピンポン感染”になってしまいます。

(編集・制作 (株)法研)

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