関節リウマチは30代の女性にも発症する? 進化した治療法とは

もはや治らない病気ではない関節リウマチ。さらにその先は?

良い状態が維持できたら、次は減薬・休薬で安全性を高め経済的負担を軽減したい。それには早期治療が大事

関節リウマチは女性に多く、30~50代の若さで発症する

 関節リウマチは、免疫の異常によって全身の関節に慢性的な炎症が起こる病気です。炎症によって腫れや痛みが生じ、放置すれば骨や軟骨が徐々に破壊されて変形することもあり、そうなると日常生活や仕事に支障を来します。
 関節以外にも、呼吸器の病気や動脈硬化性の病気などを起こして生命にかかわることもあります。

 日本では70~100万人の患者さんがいると推計され、その約80%が女性です。どの年代にも起こりますが30~50歳代の働き盛りに多く発症します。

 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターの山中寿所長は、「関節リウマチは最も身近な難病であり、女性の敵とも言われる病気です。しかしこの十余年でその治療は大変進歩し、病気に対する認識が変わってきました」といいます。

過去15年で関節リウマチの治療は劇的に進歩した

 かつて関節リウマチの治療は、痛みや腫れを和らげるなどの対症療法しかなく、病気の進行を遅らせることはできませんでした。しかし、約15年前に効果の高い抗リウマチ薬が、さらに10年前には生物学的製剤(バイオ製剤)が使用できるようになり、治療は劇的に変化しました。

 これらの薬は免疫に働きかけて炎症を抑え、関節の破壊を防ぐ効果があり、特に生物学的製剤は強い作用を持ちます。これらの薬を早期に適切に用いることで、関節破壊を遅らせ、機能障害の進行を防ぐことが可能になっています。

 山中所長は「関節リウマチの治療の軸足は、症状改善から、病気の勢いを止めて進行を防ぐ治療へと移ってきました。病気の勢いを抑えると骨はある程度再生し、特に早い時期なら骨破壊もかなり改善する可能性があります。リウマチは悪くなったら治らないと言われてきましたが、改善例もあることは患者さんにとって明るい話題です」と話します。

現時点での治療の目標は、痛みなどがない「寛解」

 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターでは、同センターに通う約6,000人の関節リウマチ患者を対象に、2000年から臨床研究を行っています。その研究データによると、抗リウマチ薬と生物学的製剤の服用率が増えるにしたがって、病気の勢いの強い人は減り、勢いの弱い人が増えていることがわかりました。
 特に、「寛解(かんかい)」と呼ばれる最もよい状態に至る患者は、2000年には8%しかいなかったのが、現在は50%以上に増えています。

 この寛解とは、症状がほぼ完全に抑えられて病気の進行が止まっている状態のこと。関節の腫れや痛みがなく、薬を飲みながらも普通に日常生活を送ることができる状態です。寛解を長く維持できれば、関節破壊や機能障害はほとんど進まないことがわかっています。
 しかし寛解は完治ではありません。関節リウマチはまだ完治はできる病気ではなく、現時点では寛解が治療目標となります。

寛解に達したその先は、薬の減量、休薬も

 薬物療法によって寛解を維持できる患者さんが増えていることは喜ばしいことですが、患者さんはこの先何十年も、ずっと薬を飲み続けなければいけないのでしょうか。

 関節リウマチ患者を対象とする日韓共同研究では、抗リウマチ薬と生物学的製剤を使用して寛解を維持できた患者に対して生物学的製剤を中止したところ、約半数が寛解を維持できたことがわかりました。
 海外では、抗リウマチ薬と生物学的製剤で寛解の1歩手前まできた患者に対して生物学的製剤を半分にしたところ、全量を続けた場合と効果があまり変わらなかったという研究もあります。

 生物学的製剤は強い免疫抑制作用を持つため、肺炎などの重い感染症のリスクが高まるという副作用があります。また薬の価格が高く、患者さんの経済的負担は3割の自己負担で月に3~5万円と大変大きくなってしまいます。そのため、生物学的製剤を止められる、あるいは半分にできるということは、患者さんにとって大きなメリットです。

 山中所長は、「関節リウマチの治療は、生物学的製剤が有効な患者さんには早い時期から用いて関節が破壊されないようにする、そして早期に寛解を達成させ、6カ月維持できたら1回止めてみる、再燃したらまた生物学的製剤を使うというように、柔軟に考えることが必要ではないでしょうか」と話しました。

初期症状を見逃さず、専門医に受診を

 関節リウマチの治療は早期に始めることが大変重要です。そのためには、初期症状を知って見逃さないこと。次のような症状があったら早めに専門医を受診しましょう。

●朝、手指などの関節がこわばって動かしにくい感じが30分以上続く
●関節の腫れや痛みが左右対称に起こる
●微熱、疲労感、食欲不振、体重減少などの全身症状がある

(編集・制作 (株)法研)

【取材協力】
山中 寿先生


東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 所長
1980年三重大学医学部卒業、同大医学部第三内科入局。83年東京女子医科大学附属リウマチ痛風センター助手。85~88年米国スクリプス研究所研究員。帰国後、東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター講師、助教授、教授などを経て、2008年現職。日本内科学会(評議員、認定内科医)、日本リウマチ学会(理事、評議員、指導医)、日本痛風・核酸代謝学会(理事)などを務める。主な研究分野は関節リウマチのアウトカム研究、痛風の病態と高尿酸血症の成因。2000年日本痛風・核酸代謝学会賞、12年日本リウマチ学会賞など受賞。

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