卵巣のはたらきとは? 生理とホルモンの関係|卵巣腫瘍について

卵子をつくり、2つの女性ホルモンで月経をコントロール

エストロゲンとプロゲステロンを分泌し妊娠の環境を整える。腫瘍ができやすいが多くは良性、自然消滅もある

子宮の両側に1つずつ、太い靭帯と薄い膜で固定される小さな臓器

 卵巣は、子宮とともに月経、妊娠、出産にかかわる大変重要な臓器です。(子宮については「子宮―妊娠から出産まで、胎児を育てる部屋」をご参照ください。)子宮の両側に1つずつあり、長さ2~3cm程度、厚さ1cmほど、うずらの卵大ほどの大きさで、子宮体部につながる太い靭帯(じんたい)と、卵巣間膜という薄い膜で固定されています。また、骨盤側は卵巣堤索(骨盤漏斗靱帯:卵巣動静脈)という靱帯によって固定されています。卵巣の上方には、子宮から左右に伸びる卵管(8~15cmほどの細い管)の先が口を開いています。

 女性は生まれたときすでに、卵巣の中に卵子のもとになる細胞(原始卵胞)を持っていて、思春期になると原始卵胞が発育・成熟し、1カ月に1個の卵子が放出され(排卵)、閉経まで続きます。この原始卵胞は、初潮の頃約20万個も卵巣内に存在しますが、年齢とともにその数は減少し、35歳頃には1~2万個までになります。1カ月に排卵する1個の卵子は、実は約半年前に選ばれた約500個の原始卵胞が時間をかけて選別された貴重な1個なのです。35歳以降さらに原始卵胞の数は減少し(卵子の老化)、1000個を下回る頃に閉経となるのです。
 また卵巣は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2つの女性ホルモンを分泌して、丸みを帯びた女性らしい体つきをつくったり、月経を周期的に起こして妊娠の環境を整える働きをしています。

 月経周期のうち卵胞期、排卵期、黄体期の周期変化は卵巣周期とも呼ばれます。卵巣でつくられるエストロゲンとプロゲステロン、脳の下垂体でつくられる卵胞刺激ホルモンと黄体化ホルモンの4つのホルモンの相互作用により、月経周期は次のようにたくみにコントロールされています。

(1)卵胞期
 脳の視床下部が分泌する性腺刺激ホルモン放出ホルモンが下垂体を刺激して卵胞刺激ホルモンを分泌させ、それが卵巣に到着するとその刺激で卵巣内の卵胞が成熟を始めます。
 卵胞の成熟に伴って卵胞からエストロゲンが分泌されます。エストロゲンは子宮内膜を増殖させ、精子を受け取った受精卵が入ってきたとき着床させる準備を整えます。

(2)排卵期
 エストロゲンの分泌が進んで一定量を超えると、その刺激でこんどは下垂体から黄体化ホルモンが大量に分泌されます。卵巣内で成熟していた卵胞が黄体化ホルモンの働きで破裂、卵子が飛び出して卵巣の外へ排出され排卵が起こります。

(3)黄体期
 卵子が飛び出した後の卵胞は黄体に変化し、プロゲステロンを分泌し始めます。プロゲステロンは増殖していた子宮内膜をさらに厚くさせ、受精卵が着床して育っていけるように環境を整えます。

 卵巣から排出された卵子は、卵管の先の卵管采(らんかんさい)から卵管内に拾われます。そこで精子と出会って受精卵となり、子宮内に移動して子宮内膜に着床すれば妊娠です。
 妊娠が成立しない場合は、黄体は2週間ほどで萎縮し、エストロゲンとプロゲステロンの分泌が衰えます。厚くなっていた子宮内膜ははがれ落ち、血液とともに排出され月経が始まります。そして、エストロゲンの分泌が低下すると視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモンが再び分泌され、新しい月経の周期が始まるのです。

腫瘍ができやすいがほとんどが良性

 女性ホルモンを分泌し排卵をくり返す卵巣は、細胞分裂をくり返すことになるため、体の中で最も腫瘍ができやすい臓器でもあります。卵巣腫瘍の多くは 卵巣の中に分泌液がたまって腫れてくるもので卵巣のう腫と呼ばれ、ほとんどが良性とされていますが、まれに悪性のものがないわけではありません。

 卵巣は沈黙の臓器ともいわれ、腫瘍があっても初めの頃はほとんど自覚症状がありません。片方の卵巣に腫瘍ができても、もう一方の卵巣が機能するために月経や妊娠のときでも変化が現れにくいこともあり、症状が現れてくるのは握りこぶしほどの大きさになる頃です。
 自覚できる症状としては、おなかが張って服のウエストがきつくなったように感じられることがあります。大きくなった腫瘍が周囲の臓器を圧迫すると下腹部痛や腰痛、便秘、頻尿などの症状も起こるようになります。

 卵巣腫瘍は大きくなるまで自覚症状に乏しいものの、内診や触診、超音波検査といった通常の婦人科検診で見つけることが可能ですが、やはりそれでもよほど大きくならないと超音波検査でも見つけることができない場合もあります。卵巣はお腹の奥深くに位置する臓器なので、また確実な簡単な検査方法がないので、卵巣がんとして見つかったときにはすでに進行がんであることが少なくありません(沈黙の臓器)。

 良性であると診断された場合は経過観察されることもあり、ただちに手術するとは限りません。卵巣のう腫のなかには、数カ月のうちには自然にしぼんで小さくなったり消えていくものがあるからです。その一方で、捻れたり(茎捻転)、内容物が飛び出したり(破裂)することもあるので、定期的な検診は必要です。また、子宮内膜症による卵巣のう腫の一部が卵巣がんに変わる可能性も少なくないので、定期検診だけではなく、大きさや症状に限らず手術も考える必要が生じます。
 良性の腫瘍が考えられている場合に一般的に手術が検討されるのは、握りこぶし大よりも大きくなってからです。状況によって、腫瘍部分のみの摘出か腫瘍のある側の卵巣全体の摘出になります。もう一方の卵巣は残っているので、妊娠は可能です。

 画像検査や腫瘍マーカーなどで腫瘍が悪性であることが強く疑われれば、手術が行われます。両側の卵巣と卵管、子宮摘出、大網(お腹の真ん中あたりの脂肪の塊)摘出とリンパ節郭清(かくせい)が基本です。
 ところで卵巣がんの確定診断は手術後にはじめて行われることになります。というのは、卵巣は体の奥深いところにあるため、子宮頸がんや乳がん、胃がんなどのように細胞診(腫瘍の細胞を採って調べる検査)などの検査を手術前に行うことができないからです。そこで腫瘍が悪性である可能性が高い場合は、十分なインフォームド・コンセントを経て手術が行われます。

 どちらにしても、卵巣は腫瘍ができやすいのに見つけにくい臓器ですから、定期的に婦人科検診を受け、腫瘍があるかどうかチェックすることが大切です。

(編集・制作 (株)法研)


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【監修】
鈴木 直先生


聖マリアンナ医科大学産婦人科学教授
同大学病院婦人科部長
1990年慶應義塾大学医学部卒業。93年同大学大学院(医学研究科外科系専攻)入学(2001年医学博士取得)。1996~98年米国カリフォルニア州バーナム研究所留学。栃木県済生会宇都宮病院産婦人科副医長、慶應義塾大学医学部産婦人科学助手を経て、2005年聖マリアンナ医科大学産婦人科学講師に就任。09年准教授、11年より現職、12年より同大学病院腫瘍センター副センター長(緩和医療部会長)ならびに講座代表。専門分野は婦人科腫瘍、絨毛性疾患、緩和医療、がん・生殖医療(若年乳がん患者の卵巣機能温存など)。日本産科婦人科学会専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医、日本婦人科腫瘍学会専門医、日本がん治療認定医機構認定医、日本緩和医療学会緩和ケアの基本教育に関する指導者。

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