全身の骨のはたらきとは? 各部位の骨の構造と病気について

体を支え・動かし、臓器を守り、血液をつくる機能も

骨格が完成するのは10代。丈夫な構造だが常に代謝を繰り返して生まれ変わっている

成人では206個の骨が全身の骨格を形づくる

 屋台骨、骨組み、骨子、バックボーン・・・。骨のつくフレーズをいくつか拾い出してみると、抽象的な意味としては、人や組織などを支えるもの、ものごとを形づくる基本的な構造、などと解説されています。人間の体にとっての骨の重要な役割の1つが体を支えることから、日常的な表現にも比喩的に用いられてきたのでしょう。
 とはいえ、人体における骨の役割は体を支えることだけではありません。生命活動を支える軟らかで傷つきやすい臓器を保護し、手足の運動をつかさどり、さらには血液をつくり出すなど多彩な働きを担ってもいるのです。

 人間の体は多くの骨が集まって骨格を形づくり、大切な臓器を囲んで保護しています。骨格を構成する骨の数は成人では基本的に206個とされています。新生児のときは約350個ありますが、成長とともにいくつかの骨同士がくっつき合い、男性では18歳頃、女性では15歳頃に骨格が完成します。骨格の主な部位をみていきましょう。

●頭蓋骨
 最上部は頭蓋骨(とうがいこつ)。1つの骨でできた球形のように見えますが、実は多くの骨がすき間なくつながった頑丈な構造で、生命活動の司令塔である脳を守っています。顔の骨格を形づくる顔面骨(がんめんこつ)と合わせ28個もの骨が複雑につなぎ合わさっています。

●脊 柱
 首から尻にかけて、大黒柱のように体を支え、脊髄を保護しているのが脊柱(せきちゅう)。いわゆる背骨=バックボーンです。32~35個の椎骨(ついこつ)でつながっています。1つ1つの椎骨の間には椎間板(ついかんばん)という円形の弾力性のある線維軟骨がはさまり、運動などによる衝撃を吸収するクッションの役目を果たしています。
 脊柱は上から、頭を支える首の頸椎(けいつい)、胸の部分の胸椎(きょうつい)、腰の部分の腰椎(ようつい)、そして尻の部分の仙骨(せんこつ)と尾骨(びこつ)で構成されています。全体を横から見ると真っすぐ立っているわけではなくS字型のゆるいカーブを描いています。これは、人間が直立歩行するようになって、体のバランスを保つために自然に形づくられました。

●胸骨、肋骨
 胸の部分は前側の中央に胸骨(きょうこつ)が1本縦に通っています。そこから左右に12対(24本)の肋骨(ろっこつ)が弧を描いてつながり、カゴのような形になって内部の心臓や肺を守っています。

●骨 盤
 腰と尻の部分には3つの骨が合わさってできた寛骨(かんこつ)があり、脊柱の最下部にある仙骨、尾骨と合わせていわゆる骨盤(こつばん)を形成しています。骨盤は腹部全体を下から支えて生殖器や消化器、泌尿器を保護しています。

●手足の骨
 人間の運動のダイナミックな動きをつかさどるのは、手足の骨格です。上半身にあっては肩の前側の鎖骨(さこつ)と背中側の肩甲骨(けんこうこつ)が腕と胸の骨をつないでいます。肩から肘までは上腕骨(じょうわんこつ)、肘から手首までは親指側の橈骨(とうこつ)と小指側の尺骨(しゃっこつ)が連結。
 下半身では、骨盤から膝までは人間の骨のなかで最大・最長の大腿骨(だいたいこつ)、膝の前に膝蓋骨(しつがいこつ)、膝から足首までは向こうずねに脛骨(けいこつ)、ふくらはぎ側に腓骨(ひこつ)がつながっています。これらの骨格は関節によってつながれ、回す、曲げる、伸ばすといった自由な動きが可能になっています。

3層構造の中心部を満たす骨髄が血液をつくり出す

 骨の表面は骨膜(こつまく)で覆われ、その内側は硬い緻密骨(ちみつこつ)、さらに内側は軟らかい海綿骨(かいめんこつ)と3層構造になっていて、中心は骨髄腔(こつずいくう)という空洞です。

 骨膜は骨を保護するとともに、内部に血管や神経が通っていて骨に栄養を補給しています。緻密骨にもハバース管という管の中を血管や神経が通り、そのハバース管をさらに多くのハバース層板が同心円状に取り巻く円柱構造で1つの単位になっていて、それらが多く集まって硬くて丈夫な緻密骨を形成しています。

 海綿骨は、文字通り内部に海綿のように多くの小さな空間がある柔軟な骨質です。その空間の中や骨髄腔の空洞内は、血液を作る成分の骨髄で満たされています。赤い色の赤色骨髄が造血機能を持ち、赤血球、白血球、血小板をつくり出しています。

骨は破壊と新生を絶えず繰り返している

 骨は長さと太さの両面で成長します。骨の両端は骨端(こったん)、それにはさまれた部分は骨幹(こっかん)といいます。子どものときには骨端と骨幹の境目に成長軟骨があり、その細胞が増殖しながら骨に置き換わることで長さが増大します。やがて軟骨層は薄くなり、成長とともに消えて骨端と骨幹がくっつき、骨の成長は止まります。
 また、骨膜にある骨芽細胞(こつがさいぼう)は骨膜の内側に新しい骨をつくり、骨を太くしていきます。太さは、成長期が過ぎても運動などによってさらに増すことがあります。

 成長した骨はしっかりと固まって、それ以上は変化がないようなイメージもありますが、実はそうではありません。古い骨が破骨細胞(はこつさいぼう)によって吸収される現象が起き、そこに骨芽細胞によって新しい骨ができるという代謝作用を常に繰り返しているのです。子どもの頃は骨の新生が盛んですが、成人になると新生と吸収は同じくらいになり、高齢になれば吸収のほうが強くなります。

骨に起こるさまざまなトラブル

●骨粗しょう症
 骨の成長に重要な役割を果たしているのはカルシウムやリンなどですが、同時に骨はこれらの無機質の貯蔵庫でもあります。特にカルシウムは体内にある総量の99%が骨に貯蔵され、骨や歯をつくるだけでなく、筋肉や神経の働き、血液の凝固などに重要な役割を果たしています。
 老化とともに骨の新生の衰えやカルシウムの吸収の低下などが起こると、骨量がどんどん減少し、骨はスカスカな状態になってしまいます。これが骨粗しょう症です。
 60歳前後からの閉経後の女性は、骨の吸収を阻止し新生を促す作用がある女性ホルモンのエストロゲンの分泌が激減するため骨粗しょう症が急激に多くなります。男性の骨粗しょう症は60歳代後半から徐々に多くなります。
 骨粗しょう症になると、転倒などちょっとしたことで骨折しやすくなります。骨粗しょう症の早期から起こりやすいのが背骨の圧迫骨折で、転んだりしなくても、体の重みで椎体がつぶれるように骨折し、腰背部痛や、背中や腰が曲がり身長が縮むなどの症状があらわれます。脚のつけ根の骨折は、寝たきりの大きな原因になっています。

●椎間板ヘルニア
 椎間板ヘルニアは比較的若い世代に多く見られる病気です。脊柱(背骨)を構成する椎骨と椎骨の間にあってクッションの役目を果たしている椎間板は、中央部にあるゼラチン状の髄核(ずいかく)とそれを取り囲むコラーゲンを含む線維輪(せんいりん)で構成されています。この椎間板が何らかの強い圧力や老化により変性したりすると、線維輪が破れて髄核が飛び出し、そばを通る神経や脊髄を圧迫して腰や手足に激しい痛みやしびれをもたらします。

●骨 折
 全身を形づくっている骨格ですが、その重さは成人の場合で体重の18%ほどしかありません。にもかかわらず、力学的に優れた仕組みになっているので大変に丈夫なのですが、外から大きな力がかかると折れたりひびが入ります。同じ運動の繰り返しで負担がかかり続けると疲労骨折を起こすことがあります。
 骨粗しょう症やがんの骨転移などが原因で、普通なら骨折を起こさないような小さな力でも骨折してしまうことがありますが、これを病的骨折といいます。

(編集・制作 (株)法研)

【監修】
庄司 豊彦先生


多摩センター 庄司整形外科院長
1980年筑波大学卒業後、筑波大学附属病院、東京警察病院、公立昭和病院で24年間整形外科の勤務医として研鑚を積み、2004年より現職。東京警察病院では人工関節手術、肩関節外科、膝関節外科、リウマチ、リハビリテーションなど整形外科全般を担当し、公立昭和病院では13年間整形外科主任医長として北多摩地区の救急医療を担う。四肢の骨折などの外傷はもちろん、脊椎手術、関節手術、スポーツ整形など6千件の手術に携わる。日本整形外科学会専門医。

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